緋色の習作
by Arthur Conan Doyle
第1部. 元陸軍医務局のジョーン・H・ワトソン医学博士の回想録からの復刻版
第2部. 聖者たちの国
1. MR. シャーロック・ホームズ
1878年、私はロンドン大学で医学博士の学位を取得し、陸軍の外科医に必要な課程を履修するため、ネトレイに赴いた。そこで勉強を終えた私は、正式に第5ノーサンバーランド・フュージリアーズに外科医助手として配属された。この連隊は当時インドに駐屯しており、私が入隊する前に第二次アフガン戦争が勃発していた。ボンベイに上陸してみると、私の隊は峠を越えて前進し、すでに敵の国の奥深くにまで入り込んでいることを知った。しかし、私は自分と同じ境遇にある多くの将校とともに、カンダハルに無事到着し、そこで自分の連隊に出会い、すぐに新しい任務に就いた。
この作戦は、多くの人に栄誉と昇進をもたらしたが、私には不幸と災難しかもたらさなかった。私は所属する旅団から外され、バークシャー部隊に所属し、マイワンドでの致命的な戦いに従軍した。そこで私はジェゼールの弾丸に肩を撃たれ、骨を砕かれ鎖骨下動脈をかすめた。私の従者であるマレーが献身的かつ勇敢に私を馬の背から投げ出し、私を無事に英国陣地まで連れてきてくれなければ、私は殺人鬼ガジスの手に落ちていただろう。
痛みで消耗し、長時間の苦難で衰弱した私は、大勢の傷病者と共に、ペシャワールの基幹病院に移された。ここで私は立ち直り、病室を歩き回り、ベランダで少し水浴びができるまでに回復していたが、インドの呪いである腸熱に襲われた。数ヵ月間、私の命は絶望的だった。ようやく我に返り、回復してきたときには、私は非常に衰弱していたので、医療委員会は一日も早く私を英国に送り返すべきだと決定した。その結果、私は軍艦「オロンテス」で派遣され、1ヵ月後にポーツマスの桟橋に上陸した。私の健康状態は回復不可能なほど悪化していたが、温厚な政府から、その後9ヵ月間、健康状態の改善に努めることを許可された。
私はイギリスに親族もなく、空気のように、あるいは1日11シリングと6ペンスの収入が許す限り、自由であった。そういうわけで、私は自然に、帝国のすべての怠け者や遊民が否応なく流れ込む、あの大きな掃き溜めであるロンドンに引き寄せられたのである。そこで私はストランドの私営ホテルにしばらく滞在し、快適で無意味な生活を送り、持っているお金を必要以上に自由に使っていた。私の財政状態が心配になるほどだったので、私はすぐに、大都会を離れてどこか田舎で静養するか、生活様式を完全に変えなければならないことに気づいた。後者の選択肢を選んだ私は、まずホテルを出て、もっと気取らない、もっと安い家に住もうと決心した。
この結論に達したまさにその日、私はクライテリオン・バーに立っていた。誰かが私の肩を叩いたので、振り向くと、バーツで私の下でドレッサーをしていた若いスタンフォードがいた。ロンドンの大自然の中で、親しげな顔を見るのは、孤独な男にとって実に楽しいことだ。スタンフォードは昔は特に私の取り巻きではなかったが、今は私が熱烈に彼を呼び寄せると、彼もまた私との再会を喜んでいるようであった。喜びのあまり、私は彼にホルボーンで一緒に昼食をとろうと誘い、二人でハンサム辻馬車で出発した。
ロンドンの雑踏を抜けると、「ワトソン、あなたは何をなさっていたんですか?」と、スタンフォードはあからさまに驚いていた。「あなたはラスみたいに細くて、木の実みたいに茶色いですね。」
私はスタンフォードに私の冒険を簡単に説明し、目的地に着く頃にはほとんど終わっていた。
私の不幸を聞いたスタンフォードは、「それは貧乏くじを引きましたね!」と同情して言った。「それで今は何をなさっているんですか?」
「宿を探してる。」と私は答えた。「リーズナブルな価格で快適な部屋を手に入れることが可能かどうかという問題を解決しようとしているんだよ。」
「不思議なものですね。」と私の友人は言った。「その表現を使った男は、今日、あなたが二人目です。」
「最初の人は誰なんだい?」と、私は尋ねた。
「病院の化学研究所に勤める男がいるんですが、彼は今朝、自分が見つけた素敵な部屋に、自分の財布には高すぎるが、一緒に半分ずつ出して行ってくれる人がいないことを嘆いていました。」
「なんと!」と私は叫んだ。「もし、彼が本当に部屋と費用を共有する人が欲しいのなら、私はまさに彼のための男だな。私は一人でいるより、パートナーがいた方がいい。」
スタンフォード青年は、ワイングラス越しに私を不思議そうな顔で見ていた。「あなたはまだシャーロック・ホームズを知らない」と彼は言った。「あなたは彼のことを、いつも一緒にいる仲間としては気に入らないかもしれません。」
「なぜ、彼に不利なことでもあるのかい?」
「ああ、別に悪いとは言ってないんですよ。彼は考え方が少し変わっていて、科学のある分野では熱狂的なんです。私の知る限りでは、彼は十分まともな人です。」
「医学生かい?」と私は言った。
「いや、彼が何をしに行くつもりなのか、私には見当もつきません。彼は解剖学に長けていて、化学も一流だと思います。しかし、私の知る限りでは、彼は体系的な医学の授業を受けたことがありません。彼の研究は非常に取り止めがなく風変わりですが、教授が驚くような突拍子もない知識をたくさん蓄えているのです。」
「何のためにやっているのか聞かなかったのか?」と私は尋ねた。
「いや、彼は簡単に話を引き出せるような人間ではないんです。しかし、気が向いたときには十分なコミュニケーションをとることができる人です。」
「彼に会ってみたいな」と私は言った。「もし誰かと下宿するならば、勉強熱心で静かな習慣のある人がいい。私はまだ、騒音や興奮に耐えられるほど強くはない。私はアフガニスタンで、残りの人生を過ごすのに十分なほど、その両方を経験したからね。その友人にはどうやって会えばいいんだい?」
「彼は必ず研究所にいますよ」と私の仲間は答えた。「彼は何週間もその場所を避けているか、朝から晩までそこで働いているかのどちらかです。もしよかったら、昼食の後、一緒に馬車で回りましょうか。」
「そうだね、お願いするよ」と私は答え、話は別の方向に流れていった。
ホルボーンを出て病院に向かう途中、スタンフォードは、私が下宿させようと思っている紳士について、もう少し詳しく教えてくれた。
「彼とうまくいかなくても、私を責めないでくださいね」とスタンフォードは言った。「私は彼のことを、研究室で時々会うことで知った以上のことは何も知らないんです。あなたがこの協定を提案されたのですから、私に責任を負わせないでくださいね。」
「もし仲が悪ければ、別れるのは簡単だよ」と私は答えた。「私にはこう思えるのだが、スタンフォード」私は仲間を厳しく見つめながら、こう付け加えた。「あなたがこの件から手を引こうとする理由があるように思えるのだが、その男の気性はそんなに荒いのかい、ミーハーなことは言わないでくれよ。」
「表現できないものを表現するのは簡単ではありません」とスタンフォードは笑いながら答えた。「ホームズは私の好みからすると、ちょっと科学的すぎて、冷血漢に近いんです。彼が友人に最新の植物性アルカロイドを少量与えるのは、悪意があるわけではなく、単に効果を正確に把握するための探究心からだと想像できます。彼の名誉のために言っておくと、彼自身も同じように覚悟を持って植物性アルカノイドを摂取すると思うのです。彼は、明確で正確な知識に対する情熱を持っているように見えます。」
「それもいいじゃないか。」
「しかし、あの行為は行き過ぎかもしれません。解剖室で遺体を棒で叩いたりするのは、確かに異様な形をしています。」
「遺体を叩くだって!」
「はい、死後打撲でどこまで身体にあざができるかを検証するためです。私はこの目で、彼がそれをやっているのを見ました。」
「それでも医学生でないと言うのか?」
「はい、彼の研究の目的は天の知るところです。しかし、ここにいるのですから、彼についてあなた自身の印象を形成する必要があります。」その時、私たちは細い路地を曲がり、小さな脇道を通り、大病院の一棟に入った。そこは私にとって馴染みの場所であり、何の案内も必要なく、殺風景な石の階段を上り、白塗りの壁と薄茶色の扉が並ぶ長い廊下を進んでいった。その先には、低いアーチ型の通路が分岐して、化学実験室へと続いていた。
そこは、無数の瓶が並べられ、散乱している高台の部屋であった。広く低いテーブルが点在し、レトルトや試験管、青く揺らめく炎の小さなブンゼンランプがぶら下がっていた。この部屋には一人の学生しかおらず、彼は遠くのテーブルにかじりついて研究に没頭していた。われわれの足音に目をやると、彼は喜びの声を上げて立ちあがった。「見つけた、見つけたぞ!」と叫びながら、試験管を手にこちらに走ってきた。「ホエモグロビンによって沈殿し、他のものには沈殿しない試薬を発見したぞ。」その表情には、もし彼が金鉱を発見したとしても、それ以上の喜びがあった。
「こちら、ワトソン先生。こちら、シャーロック・ホームズさん」スタンフォードが私たちを紹介してくれた。
「初めまして」とホームズは親しげに言いながら、自分でも信じられないような強さで私の手を握った。「アフガニスタンに行っていたようですね。」
「いったいどうやって分かったんですか?」と私は驚いて尋ねた。
「お気になさらず」彼はそう言って、一人ほくそ笑んだ。「今はホエモグロビンのことが問題なんだ。私の発見の意義はおわかりいただけたでしょうか?」
「化学的には間違いなく興味深いものです。」と私は答えた。「が、実際的には......」
「ここ数年で最も実用的な医学・法律学上の発見ですよ。血痕を確実に検査することができるのです。さあ、こちらへ!」とホームズは私のコートの袖を掴んで、彼が作業していたテーブルの上に私を引き寄せた。「新鮮な血液で調べよう」と彼は言いながら、長い千枚通しを指に刺し、ケミカル・ピペットで血液を一滴ずつ取りだした。「この少量の血液を1リットルの水に入れてみましょう。すると、純水のように見えるでしょう。血液の比率は100万分の1以上にはならない。しかし、間違いなく特徴的な反応を得ることができるだろう。」彼はそう言いながら、白い結晶を数個、容器に投げ入れ、さらに透明な液体を数滴加えた。すると、たちまち中身はくすんだマホガニー色になり、ガラス瓶の底には茶色い粉が沈殿した。
「ハッ!ハッ!」とホームズは叫んだ。手を叩いて、まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のように喜んだ。「これをどう思います?」
「これは非常にデリケートなテストのようだ」と私は言った。
「美しい!美しい!昔のギアックムテストはとても不器用で不確かなものでした。血球の顕微鏡検査もそうだ。後者は、血痕が数時間前のものであれば、価値がない。さて、これは血液が古くても新しくても同じように作用するようだ。もしこの検査が発明されていたら、今地上を歩いている何百人もの人間が、とっくの昔に罪の罰を受けたことだろう。」
「確かに!」と私はつぶやいた。
「刑事事件はこの一点にかかっているのです。ある男が犯罪を犯したと疑われるのは、おそらく犯罪が起こってから数ヵ月後のことです。彼のリネンや衣服を調べると、茶色いシミが発見される。血のしみか、泥のしみか、錆のしみか、果実のしみか、それとも何だろう?これは多くの専門家を困惑させた問題です。なぜかというと、信頼できるテストがなかったからです。シャーロック・ホームズのテストがあれば、もはや困難はないでしょう。」
ホームズの目は、かなり光っていた。そして、まるで想像で描いた拍手喝采の群衆に向かっているかのように、胸に手を当ててお辞儀をした。
「おめでとうございます」と、私は彼の熱意にかなり驚きながら言った。
「昨年、フランクフルトでフォン・ビショフの事件がありました。このテストがあったら、フォンは間違いなく絞首刑になっていたでしょう。ブラッドフォードのメイソン、悪名高いミュラー、モンペリエのルフェーヴル、ニューオーリンズのサムソンもそうです。このテストが決定的となったであろう事例を、私は何件も挙げることができます。」
「あなたはまるで犯罪のカレンダーみたいですね」スタンフォードは笑いながら言った。「その線で新聞を作ったらどうだ。『過去の警察ニュース』とでも名付けてね。」
「とても面白い読み物になるかもしれないね」とシャーロック・ホームズは、指にできた刺し傷に小さな絆創膏を貼りながら言った。「気をつけないとね」と彼は微笑みながら私に向かい、「私は毒に手を出すことが多いからね」と続けた。彼は手を広げて話しながら、私はその手が同じような絆創膏の破片で斑点状になり、強い酸で変色していることに気づいた。
「用があって来たんだ」とスタンフォードは言った。高い三本足のスツールに腰を下ろし、足で別のスツールを私のほうに押しやった。「私の友人が下宿を探したいと言っているのですが、あなたは誰も一緒に家賃を折半してくれないと不平を言っていましたね。私はあなた方を引き合わせた方がいいと思ったのです。」
シャーロック・ホームズは、私と同室になることを喜んでいるようだった。「ベーカー街にあるスイートルームが目当てなんだ」と彼は言った。「そこなら僕達にぴったりだろう。強いタバコの匂いは気にならないかな?」
「私はいつも『シップス』を吸っているんです」と私は答えた。
「それで結構ですね。私は通常、化学物質を持っていますし、時々実験もします。それはあなたを困らせますか?」
「決して。」
「では、私の他の欠点は何だろうか。私はときどき落ち込んで、何日も口を開かないことがあるんです。そんなとき、私が不機嫌だと思わないでください。放っておいてください、すぐに治りますから。告白することは何かありませんか?二人が一緒に暮らす前に、お互いの最悪の状態を知っておくのは、ちょうど良いことです。」
この反対尋問に私は笑ってしまった。「私は体内に小さなブルドッグを飼っているような癇癪持ちです」と私は言った。「とか、神経を逆なでされるので、騒音に反対します。そして、私はとんでもない時間に起きてしまい、極度の怠け者なのです。元気な時は別の悪癖もありますが、今のところこれが主なものです。」
「ヴァイオリンを弾くことも騒音の範疇に入りますか?」と不安そうに彼は聞いてきた。
「演奏者によります」と私は答えた。「よく弾けるヴァイオリンは神々のご馳走だが、下手なヴァイオリンは......」
「ああ、それはいい」と、彼は陽気な笑いを浮かべながら言った。「あの部屋が、あなたにとって満足のいくものであるなら、この件は解決したと考えてもよいでしょう。」
「いつになったら見られるのだろう?」
「明日の正午に私をここに呼んでください。そして、一緒に行ってすべてを解決しましょう。」と彼は答えた。
「よし、正午ちょうどだ」と私は彼の手を握った。
私たちは、化学薬品の作業をするホームズと別れ、私たちは一緒にホテルに向かって歩いた。
「ところで」と、私は突然立ち止まり、スタンフォードに向き直り尋ねた。「どうして彼は私がアフガニスタンから来たと知っているのだろう?」
私の仲間は謎めいた笑みを浮かべた。「それはホームズのちょっとした癖なんだ。」と彼は言った。「多くの人が、彼がどうやって物事を発見しているのか知りたがっているんです。」
「ああ!謎が謎を呼ぶ。」私は手をこすりながら叫んだ。「これは非常にピリッとする。私たちを引き合わせてくれた君に、とても感謝してるよ。『人間の適切な研究は人間である』というからね。」
「それなら、あなたはホームズを研究しなければならないですね」とスタンフォードは私に別れを告げながら言った。「しかし、あなたは彼が複雑な問題であることに気づくでしょう。賭けてもいいですが、あなたが彼について学ぶより、彼があなたについて学ぶ方が多いでしょう。さようなら。」
「さようなら」と私は答え、新しい知り合いに興味を持ちながら、ホテルへと歩を進めた。
2. 推理の科学
私たちは翌日、スタンフォードの計らいで会い、会議で話したベーカー街221B番の部屋を視察した。その部屋は、快適なベッドルームが2つと、大きな居間が1つあり、陽気な家具が置かれ、2つの大きな窓から明るい光が差し込んでいた。このアパートはあらゆる面で好ましく、私たちの間で分割した場合、その条件は非常に妥当であったため、その場で契約が成立し、私たちはすぐに所有権を取得した。その日の夜、私はホテルから荷物を運び出し、翌朝、シャーロック・ホームズが箱やポルトマンをいくつも持ってついてきた。一日か二日、私たちは荷を解き、私たちの財産を最も有利になるように並べるのに忙しく働いた。それが終わると、私たちは次第に落ち着きを取り戻し、新しい環境に馴染み始めた。
確かにホームズは、一緒に暮らすのに困るような人ではなかった。彼は物静かで、規則正しい生活習慣を持っていた。夜10時以降に起きていることはめったになく、私が朝起きる前に必ず朝食をとって出かけていた。ある時は化学実験室で、ある時は解剖室で、またある時はロンドンの最下層部まで行くような長い散歩で一日を過ごした。このとき、彼のエネルギーに勝るものはなかった。しかし、時折、その反動が彼を襲うことがあった。そして、何日も居間のソファに横たわり、朝から晩までほとんど言葉を発せず、筋肉も動かさないのである。このようなとき、私は彼の目が夢見心地で虚ろな表情をしていることに気がつき、もし彼の生活全体が節制と清潔さによってそのような考えを禁じていなければ、何か麻薬を使用しているのではないかと疑ったかもしれない。
数週間が経つにつれて、私は彼に対する興味と、彼の人生における目的に対する好奇心が次第に深まり、大きくなっていった。彼の人柄と外見は、何気なく見ている人の心を打つようなものだった。身長は180センチをやや超える程度で、かなり痩せているため、もっと背が高いように見えた。彼の目は、先に述べたような退屈な時間を除いては、鋭く射抜くようだった。その細い鷹のような鼻は、表情全体に警戒心と決断力を与えていた。顎もまた、決断力のある人物の特徴である隆起と角張りを備えていた。彼の手はいつもインクで滲み、薬品で汚れていた。しかし、彼は並外れた繊細なタッチを持っており、私は彼が壊れやすい化学的な道具を操作するのを見て、しばしばそれを観察する機会があった。
この男がどれほど私の好奇心を刺激したことか、そして彼が自分に関係するあらゆることに対して見せる寡黙さを、私は何度も打破しようと試みたことを告白すると、読者は私をどうしようもない暇人だと言うかもしれない。しかし、判断を下す前に、私の人生がいかに無目的で、私の関心を引くものがいかに少なかったかを思い出してほしい。私の健康状態は、特別に気持の良い天候でない限り、外に出ることを禁じており、私を呼び寄せて日々の生活の単調さを解消してくれる友人もいなかったのである。このような状況下で、私は同居人にまつわる小さな謎を熱心に歓迎し、それを解き明かそうと多くの時間を費やした。
彼は医学を勉強しているわけではないのだった。その点については、彼自身が質問に答えて、スタンフォードの意見と一致していた。また、科学の学位や学問の世界に入るための資格になるような読書をした様子もなかった。しかし、彼のある種の研究に対する熱意は驚くべきもので、その知識は偏狭な範囲内では非常に豊富かつ微細で、その観察眼にはかなり驚かされた。何か明確な目的がない限り、これほどまでに努力し、正確な情報を得ることはないだろう。漫然とした読書家は、その学識の正確さではめったに注目されない。人は、よほどのことがない限り、小さなことで心を煩わせることはない。
彼の無知は、その知識と同様に驚くべきものであった。現代の文学、哲学、政治について、彼はほとんど何も知らないように見えた。私がトマス・カーライルを引き合いに出すと、彼は誰なのか、何をしたのかと素朴な質問をした。しかし、私が驚いたのは、彼がコペルニクス理論や太陽系の構成について無知であることを知ったときであった。この19世紀の文明人が、地球が太陽の周りを回っていることを知らないというのは、私にとってあまりにも異常な事実であり、ほとんど実感がわかなかった。
「驚いてるように見える」と、私の驚きの表情に微笑みながら彼は言った。「もうそれを知ってしまったからには、忘れるように最善を尽くそう。」
「忘れるだって!」
「そうさ」と彼は説明した。「人間の脳はもともと小さな空の屋根裏部屋のようなもので、そこに自分の好きな家具を置くしかないと考えているんだ。愚かな人間はあらゆる種類の材木を取り込んでしまうので、自分にとって役に立つかもしれない知識が混同されるか、せいぜい他の多くのものとごちゃ混ぜになって、それを手に入れるのに苦労することになる。さて、腕のいい職人は、自分の脳裏に何を取り込むか、実に慎重になるものだ。彼は仕事をするのに役立つような道具しか持っていないが、そのような道具はたくさんあり、しかもすべて完璧な状態で揃っている。その小さな部屋には伸縮性のある壁があり、どこまでも広がっていけると考えるのは大間違いだ。知識が増えるたびに、以前知っていたことを忘れてしまうときが来るのだ。したがって、役に立たない事実が、役に立つ事実を駆逐してしまわないようにすることが最も重要なんだよ。」
「しかし、太陽系は!」と私は抗議した。
「私に何の関係があるんだい?」と彼は焦ったように口を挟んだ。「私たちは太陽のまわりを回っていると言うね。もし我々が月のまわりを回ったとしても、私や私の仕事には1ペニーワースの違いもないだろう。」
私は、その仕事が何であるか聞こうとしたが、彼の態度から、その質問は歓迎されないものであることがわかった。しかし、私はこの短い会話をよく考えて、そこから自分の推論を導き出そうとした。彼は、自分の目的に関係しない知識は身につけないと言った。したがって、彼が持っている知識はすべて、自分にとって役に立つものばかりだった。私は自分の頭の中で、彼が特別によく知っていることを示した様々な点をすべて列挙した。鉛筆をとって書き留めたりもした。そして、それを書き上げたとき、私は思わず微笑んでしまった。それは次のようなものであった。
シャーロック・ホームズ--彼の知識の範囲!
- 文学の知識 -- 無し。
- 哲学の知識 -- 無し。
- 天文学の知識 -- 無し。
- 政治学の知識 -- 弱々しい。
- 植物学の知識 -- 変化しやすい。ベラドンナ、アヘン、毒物一般に詳しい。実用的な園芸は全く知らない。
- 地質学の知識 -- 実用的だが、限定的。土壌の違いを一目で見分けることができる。散歩の後、ズボンについた水しぶきを私に見せてくれ、その色とまとまりから、ロンドンのどの辺りで受けたものかを教えてくれた。
- 化学の知識 -- 深い。
- 解剖学の知識 -- 正確だが、体系的でない。
- 人騒がせな文献 -- 広大。この世紀に起こったあらゆる恐怖の詳細を知っているように見える。
- ヴァイオリンの演奏がうまい。
- 一本杖、ボクサー、剣士の名手である。
- イギリスの法律に精通している。
ここまで書き上げたところで、私は絶望してリストを火の中に投げ入れた。「この人が何を目指しているのかを知るには、これらの業績をすべて調和させ、それらをすべて必要とする職業を発見するしかない」と私は自分に言い聞かせた。「いっそのこと、このままあきらめたほうがいいかもしれない。」
ヴァイオリンの才能については、前述したとおりだ。これは非常に注目に値するものだったが、彼の他の業績と同様に風変りなものだった。彼が小品や難しい曲を弾けることは、私のリクエストに応じてメンデルスゾーンの歌曲やその他のお気に入りの曲を弾いてくれたので、よく分かっていた。しかし、一人にされると、彼はめったに音楽を奏でたり、一般的に認められた旋律を出そうとしたりしなかった。ある晩、肘掛け椅子にもたれながら彼は目を閉じて、膝の上に投げ出されたバイオリンを無造作に擦るのである。時にその和音は憂いを帯びていた。時には幻想的で陽気なものもあった。それは、明らかに彼の考えを反映していた。しかし、その音楽がその考えを助けるものなのか、それとも単なる気まぐれや空想の結果なのかは、私には判断がつかなかった。もし、彼がそういったソロの終わりに、私の好きな曲を連続して演奏して、私の忍耐力を少しばかり補うのでなかったら、私はこの苛立たしいソロに反抗していたかもしれない。
最初の1週間ほどは、誰からも電話がかかってこなかったので、私は、この同居人も私自身と同じように友達がいないのだろうと思い始めていた。しかし、やがて、彼には多くの知り合いがいて、それも社会の最も異なる階層の人たちであることがわかった。ある浅黒いネズミ顔で黒い目の男がいて、その男は私にレストレードと紹介され、一週間に3、4回訪ねてきた。ある朝、おしゃれな服装の若い女の子が招かれて、30分以上滞在した。同じ日の午後には、ユダヤ人の行商人のような白髪頭の薄気味悪い訪問者が来たが、私にはかなり興奮しているように見え、その後にずぶ濡れの老婆がぴったりとついてきた。またあるときは、白髪の老紳士が私の同居人と面談し、またあるときは、ベルベットの制服を着た鉄道のポーターが来た。このように何の変哲もない人物が現れると、シャーロック・ホームズは居間を貸してくれと頼み、私はベッドルームに引きこもるのが常であった。彼はいつも私に不便をかけたことを詫びた。「この部屋を仕事場として使わせてもらうよ」と彼は言った。「この人達は私の客人さ。」私はまたもや彼に単刀直入に質問する機会を得たが、またもや私の繊細さが他の男性に打ち明けることを阻んだ。その時、私は彼がそのことを口にしないのは何か強い理由があるのだろうと思ったが、彼はすぐにその考えを払拭し、自発的にその話題に立ち返った。
3月4日のことだったと記憶しているが、いつもより少し早く起きた私は、シャーロック・ホームズがまだ朝食を終えていないことに気がついた。下宿の女主人は私の遅刻癖に慣れてしまっていて、私の席もコーヒーの準備もされていなかった。私は人間の理不尽な小心さでベルを鳴らし、準備ができたと素っ気なく言った。それからテーブルの上にあった雑誌を手に取り、それで時間をつぶそうとしたが、その間、同居人は黙ってトーストを頬張っていた。ある記事の見出しに鉛筆の跡があったので、私は自然に目を通すようになった。
この記事は、「人生の書」というやや野心的なタイトルで、観察力のある人間が、自分の前に現れるすべてのものを正確かつ体系的に調べることによって、どれだけのことが学べるかを示そうとしたものであった。この記事は、抜け目のなさと不条理さが見事に混在しているように私には感じられた。理論は緻密で強烈だが、推論は突飛で誇張されているように私には見えた。この作家は、一瞬の表情、筋肉の動き、目の輝きから、人の心の内を読み取ろうとする。観察力と分析力のある人間には、ごまかしは通用しないという。作家の結論は、ユークリッドの多くの命題のように絶対的なものであるという。作家の結論は、ユークリッドの命題のように間違いのないものであったから、素人には驚きであり、その結論に至るまでの過程を知るまでは、作家を黒魔術師とみなすのも無理はないだろうということだった。
「一滴の水から」と作家は言った。「論理学者は、大西洋とナイアガラのどちらかを見たり聞いたりしたことがなくても、その可能性を推論することができるのだ。すべての生命は大きな鎖であるから、その一本の輪を見せられるたびに、その性質がわかるのである。他のすべての芸術と同様に、推論と分析の科学は、長く忍耐強い研究によってのみ習得できるものであり、また、どんな人間でもこの分野で最高の完成度に達することができるほど人生は長くはないのである。この問題の最大の難点である道徳的・精神的側面に目を向ける前に、探究者はより初歩的な問題をマスターすることから始めましょう。人間同士に出会ったら、一目見てその人の経歴と、その人が属している職業を見分けることを学ばせてあげましょう。このような訓練は、一見貧弱に見えるかもしれないが、観察力を鋭敏にし、どこを見て何を探せばよいかを教えてくれます。人の爪、コートの袖、ブーツ、ズボンの膝、人差し指と親指の角質、表情、シャツの袖口--これらの一つひとつに、その人の職業がはっきりと表れているのです。これらすべてを総合して、有能な探究者を啓発できないことは、ほとんど考えられません。」
「何とも言えないバカげた話だ!」私は雑誌をテーブルに叩きつけて叫んだ。「こんなくだらないものは読んだことがない。」
「どうしたんだい?」とシャーロック・ホームズは尋ねた。
「この記事だよ」私は朝食の席で、卵のスプーンでこの記事を指さした。「印をつけたからには君も読んだんだね。スマートに書かれていることは否定しない。しかし、苛立たしい。これは明らかに、自分の研究室の密室でこれらのきちんとした小さな逆説を展開する、アームチェアーでくつろぐ人間の理論さ。実用的ではないよ。地下鉄の三等車で、彼が拍手喝采を浴びる姿を見たいものだ。そして、彼の仲間全員の職業を全部聞いてみたいものだ。私は彼に1000対1で勝負を挑むよ。」
「君はお金を失うことになる」シャーロック・ホームズは冷静にこう言った。「記事に関しては私が書いた。」
「君が!」
「そう、私は観察も推理も得意なのだ。私がそこで述べた理論は、君にはとても奇想天外に見えるかもしれないが、実は極めて実用的なものなのだ。--私がパンとチーズをまかなうほど、この理論は実用的なのだ。」
「しかし、どうやって?」私は思わず尋ねた。
「まあ、私には私の商売があるから。世界で私一人だと思う。私はコンサルティング探偵だ。これが何か分かるかい?ここロンドンには政府の探偵も私立の探偵もたくさんいる。この人たちは、落ち度があると、私のところに来るんだ。そして、私はこの人たちを正しい方向に導いていくのだ。この人たちは私の前にすべての証拠を並べ、私は犯罪史の知識の助けを借りて、彼らを正すことができる。悪事には強い系統的類似性があり、もし君が千個の詳細を指先で理解できるなら、千と一番目を解き明かせないのはおかしいことだ。レストレードは有名な警部だ。最近、贋作事件で自分自身が五里霧中になり、それがきっかけでここに来た。」
「では、その他の人たちは?」
「ほとんどが民間の調査会社から派遣された人たちだ。何かに困っていて、それをちょっとはっきりさせてほしいという人たちばかりだ。私はその人たちの話を聞き、その人たちは私のコメントを聞き、そして私は報酬を手にするのだ。」
「つまり、君は自分の部屋から出ずに、他の人が細部まで見ていても何もわからないような結び目を解くことができると言うのかい?」と私は言った。
「そうだ。そういう直感のようなものがあるんだ。時々、もう少し複雑なケースが出てくる。その時は、自分の目で見て確認しなければならない。私にも特殊な知識がたくさんあるから、それを応用することで、見事に問題を解決することができるのだ。君が軽蔑したあの論文に書かれている推理の法則は、私にとって実務上非常に貴重なものだ。観察は私の第二の天性だ。初対面で、アフガニスタンから来たというと、君は驚いていたようだ。」
「誰かに言われたんだろ?」
「そんなことはない。君がアフガニスタンから来たことは知っていた。長年の習慣から、思考の流れが頭の中を素早く駆け巡り、途中経過を意識することなく結論に至ったのだ。しかし、このような段階はあった。『この人は医学者だが、軍人のような雰囲気のある紳士だ。それなら軍医に間違いない。彼は熱帯から来たばかりで、顔が黒く、それは彼の肌の自然な色合いではなく、手首が白いからである。苦難と病苦に耐えてきたことが、その憔悴した顔からよくわかる。左腕を負傷しており、その持ち方は硬く不自然である。イギリスの軍医が熱帯地方のどこで多くの苦難を経験し、腕を負傷したのだろうか?明らかにアフガニスタンだ。』そんなことを考えているうちに、1秒も経っていなかった。その時、私は『君はアフガニスタンから来たのですね』と言うと、君は驚いた。」
「君の説明では簡単なことだな」と私は微笑みながら言った。「君はエドガー・アレン・ポーのデュパンを思い起こさせる。こんな人物が物語の外に存在するとは思わなかった。」
シャーロック・ホームズは立ち上がり、パイプに火をつけた。「私をデュパンと比べて褒めているつもりだろうが、そうではない。」と彼は述べた。「デュパンは非常に劣った人物だと思う。15分も沈黙した後で、友人の思考に割り込んできて、適切な発言をするという彼のあの手口は、実に見せかけで表面的なものだ。彼には分析の才能があったことは間違いないが、ポーが想像していたような非凡な人物では決してない。」
「ガボリオーの作品を読んだことはあるか?」と私は聞いてみた。「ルコックは君の考える探偵像に合致しているかい?」
シャーロック・ホームズは無遠慮に鼻を鳴らした。「ルコックは惨めな不器用者だった」と怒った声で言った。 「彼の長所は一つしかない、それは行動力だ。あの本を読んで、私はすっかり病気になってしまった。問題は、見知らぬ囚人をどう見分けるかだった。私は24時間以内にそれを行うことができたのに、ルコックは6ヶ月ほどかかった。避けるべきことを教えてくれる探偵の教科書にするといい。」
私は、尊敬する二人の人物をこのように軽率に扱われたことに、むしろ憤りを覚えた。私は窓際まで歩いて行き、賑やかな通りを眺めていた。「この男はとても賢いかもしれない」と私は自分に言い聞かせた。「しかし、彼は確かに非常にうぬぼれが強い。」
「この時代、犯罪もなければ、犯罪者もいない。」と、彼は訝しげに言った。「私たちの職業に頭脳があっても何の役に立つのだろうか。私は自分の名前を有名にするために必要なものを持っていることをよく知っている。犯罪の摘発に、私と同じだけの勉強と天賦の才能を発揮した人間は、この世にいないし、かつて存在したこともないだろう。その結果どうなったか?犯罪を発見することはない。せいぜい、スコットランドヤードの役人でさえ見破ることのできるほど透明な動機を持った、不細工な悪党を発見する程度だ。」
私は、彼のぶっきらぼうな会話スタイルに、やはり腹が立った。話題を変えるのが一番だと思った。
「あの人は何を探しているんだろう?」私は、通りの反対側をゆっくり歩きながら、心配そうに番地を見ている、頑丈で地味な服装の人物を指して彼に尋ねた。手に大きな青い封筒を持っていて、明らかにメッセージの持ち主だった。
「海兵隊の退役軍曹のことだよね」とシャーロック・ホームズは言った。
「自慢して弾けろ!」と私は思った。「ホームズは、私がホームズの推測を検証できないことを知っている。」
そう思ったのも束の間、私たちが見ていた男は、私たちのドアに書かれた番号に目をとめ、車道を急いで渡った。大きなノックと、下から聞こえる太い声、そして階段を上る重い足音が聞こえた。
「シャーロック・ホームズさんへ」彼はそう言って部屋に入り、私の友人に手紙を手渡した。
ここで、ホームズの驕りを取り払うチャンスだった。ホームズはこのチャンスをほとんど考えずに、あの乱れ打ちをしたのだ。 「君、聞いてもいいかな」と、私は最も淡々とした声で言った。「君の職業は何かな?」
「コミッショネアであります」と彼は不機嫌そうに言った。「制服は修理のためだしております。」
「以前は?」私は仲間に少し悪意のある視線を送りながら、そう尋ねた。
「王立海兵軽装歩兵隊の軍曹であります。返信はありませんか?了解であります。」
彼は踵を合わせ、手を挙げて敬礼し、去っていった。
3. ローリストン・ガーデンの謎
正直なところ、私は、ホームズの理論の実用性を新たに証明するこの言葉に、かなり驚かされた。彼の分析力に対する尊敬の念は、不思議なほど強まった。しかし、私の心の中には、この出来事はすべて、私を驚かすためにあらかじめ仕組まれたエピソードではないかという疑念が残っていた。しかし、彼が一体何の目的でそんなことをするのか、私には理解できなかった。しかし、私が彼を見たとき、彼はメモを読み終えていて、その目は精神的な抽象度を示す、空虚で乏しい表情になっていた。
「いったいどうやって推理したんだ?」私はそう尋ねた。
「何を推理するんだ?」と彼は小馬鹿にしたように言った。
「なぜ、彼が海兵隊の元軍曹だったかさ。」
「つまらないことに付き合っている暇はないんだ」と彼は無愛想に答え、それから微笑んで言った。「失礼をお詫びするよ。君は私の思考の糸を断ち切ったのだ。でも、それはそれでいいのかもしれない。では、君はあの男が海兵隊の軍曹であることを見抜けなかったのかい?」
「うん、全く。」
「なぜそうなのかを説明するよりも、それを知っていることの方が簡単だ。2と2が4を作ることを証明せよと言われたら、少し難しいかもしれないが、それでも君はその事実をはっきりと確信しているのだ。通りの向こう側からでも、彼の手の甲に大きな青い錨の刺青があるのが見えた。そこから海の香りがした。また一方、彼は軍用馬車を持っていて、規定の横ひげを生やしていた。海兵隊員だ。それなりの自尊心と命令口調のある男だった。君も彼が頭を下げたり、杖を振ったりしているのを見たはずだ。見た目もしっかりした、立派な中年男性で、彼が軍曹だったことを信じさせるような事実ばかりだった。」
「素晴らしい!」と私は突然叫んだ。
「ありふれたことだ」とホームズは言ったが、その表情から、私が明らかに驚き、感心していることを喜んでいるように思えた。「先ほど犯罪者はいないと申し上げた。どうやら私が間違っているようだ、これを見てくれ!」彼は仲介人が持ってきたメモを私に手渡した。
「これはひどい!」と私は目を走らせながら叫んだ。
「ちょっと普通とは違うような気がする」と彼は穏やかに言った。「声に出して読んでいただけませんか?」
以下は、私が彼に読んだ手紙である。
親愛なるシャーロック・ホームズ様
拝啓
ブリクストン通り沿いのローリストン・ガーデン3番地で、夜間に悪い事件があったそうです。夜中の2時頃、パトロール中の男がそこに明かりがあるのを見て、誰もいない家だったので、何か問題があるのではと思いました。彼はドアが開いているのを見つけ、家具のない玄関で、よく服を着た紳士の死体を発見し、ポケットには「アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランド市 イーノック・J・ドレバー」と書かれたカードが入っていました。強盗はいなかったし、この男がどうやって死んだかについての証拠もありません。部屋には血の跡があるが、体には傷がありません。どうやってこの空き家に入ったのか、実に不可解な事件です。12時前に家に来てくれれば、私はそこにいます。私はあなたから連絡があるまで、すべてを現状維持のままにしておきます。もしあなたが来られないのであれば、もっと詳しいことをお話ししますし、あなたのご意見をお聞かせいただければ幸いです。
敬具
トビアス・グレグソン
「グレグソンはスコットランドヤードの警官の中で一番賢い。」と私の友人は言った。「彼とレストレードは悪い連中の中では選り抜きだ。二人とも素早くて精力的だが、型にはまったやり方をしていて、あきれるほどだ。二人は互いにナイフを突きつけ合っている。プロの美女コンビのような嫉妬深さでだ。2人とも嗅ぎつけられたら、この事件は面白いことになりそうだ。」
私は、彼の波打つような冷静さに驚かされた。 「一刻の猶予もない」、と私は叫んだ。「辻馬車を呼ぼうか?」
「行こうかどうか迷ってる。私は今まで靴の革の中に立っていた中で、最も不治の病にかかった怠け者の悪魔だ。つまり、私にフィットしている時には、十分に元気でいられる時がある。」
「なぜ行かないんだ、これはまさに君が待ち望んでいたようなチャンスだ。」
「親愛なる友よ、私にはどうでもよいことだ。仮に私が全部解明したとしてグレグソンとレストレードとその一味が手柄を全部横取りするのは確実だ。それは私が非公式な人物であることから来るものだ。」
「しかし、彼はあなたに助けて欲しいと懇願している。」
「そうさ。彼は私が自分より優れていることと知っていて、それを私に認めている。しかし、第三者にそれを認める前に、彼は自分の舌を切り取るだろう。しかし、行って見てみるのもいいかもしれない。私は自分の計略で解決することにしよう。他に何もなければ、彼らを笑うことができるかもしれない。さあ!」
彼はオーバーコートを急いで着て、無気力な状態からエネルギッシュな状態に変わったことを示すように、忙しそうに動き回った。
「君も帽子を取れ」と彼は言った。
「来いというのか?」
「そう、他にすることがなければね。」1分後、私たちは辻馬車に乗り込み、ブリクストン通りに向かって猛スピードで走った。
その朝は霧が立ちこめ、薄暗いベールが家々の屋根にかかり、まるでその下にある泥色の街並みが映り込んでいるように見えた。私の友人は、クレモナのバイオリンや、ストラディバリウスとアマティの違いについて、とても元気よく話してくれた。私はといえば、退屈な天気と憂鬱な仕事のせいで、気が滅入ったので、黙っていた。
「君は、この問題についてあまり考えていないようだね」私は、ホームズの音楽談義を遮って言った。
「まだデータはない」と彼は答えた。「証拠が揃わないうちに理論武装するのは大間違いだ。判断が偏ってしまう。」
「もうすぐデータが手に入るよ」私は指で指しながら、そう言った。「ここがブリクストン通りで、あれが問題の家だ、間違ってなければ。」
「そう、あの家だ。ストップ、馭者、ここで降ろしてくれ!」まだ100ヤードほど先だったが、しかし、彼がどうしても降りたいというので、私たちは残りの旅路を徒歩で終えた。
ローリストン・ガーデンズの3番は、悪趣味で小汚い外観をしていた。通りから少し奥まったところにある4軒のうちの1軒で、2軒は入居中、2軒は空き家だった。後者の窓からは、3段になった哀愁漂う空き窓が見え、その窓のあちこちに「貸家」のカードが瀑布のように広がっている以外は、何もなく殺風景である。病的な植物が散乱している小さな庭が、これらの家を通りから隔てており、黄色がかった、明らかに粘土と砂利の混合物でできている細い小道が横切っていた。一晩中降り続いた雨のせいで、全体がドロドロになっている。庭は3フィートのレンガの壁で囲まれていて、その上には木の手すりがついていた。この壁には、頑丈な巡査が寄りかかっていて、それを小さな野次馬たちが囲んでいた。彼らは首をかしげて目を凝らし、中の様子を垣間見ようと無駄な期待をしていた。
私は、シャーロック・ホームズならすぐにでも家に入り、謎の研究に没頭するだろうと想像していた。しかし、彼の思惑とは全く違っていた。この状況下で、私には気取ってるとしか思えないほど平然とした態度で、彼は歩道を行ったり来たりして、地面や空、向かいの家や手すりの列をぼんやりと眺めた。詮索を終えると、彼はゆっくりと小道を、いや、小道の脇にある草の縁を下りて、目を地面に釘付けにしたまま進んでいった。二度ほど立ち止まり、一度は微笑み、満足げに声を上げるのを見た。湿った粘土質の土の上にはたくさんの足跡があったが、警察がその上を行ったり来たりしていたので、私の同行者がそこから何かを得ようとすることはできなかった。しかし、私は彼の知覚の速さの異常な証拠を見ていたので、彼は私に隠れている多くのものを見ることができると信じて疑わなかった。
家の入り口で、ノートを手にした背の高い、白い顔の、亜麻色の髪の男が出迎えてくれた。彼はあわてて前に出て、私の友の手を力いっぱい握った。「よくぞ来てくださいました」と彼は言った。「すべて手付かずのままにしてもらいました。」
「あれを除いてね!」と友人は答え、通路を指差した。「もし水牛の群れが通り過ぎても、これ以上の混乱はないだろう。しかし、これを許可する前に、グレグソン、君は自分なりの結論を出していたことは間違いないだろう。」
「私は家の中でやることがたくさんありましてね」警部は回避するように言った。「同僚のレストレード氏が来ています。この件は彼に任せていたのですが......」と言い訳した。
ホームズは私をちらりと見て、無遠慮に眉をひそめながら言った。「君とレストレードのような二人が現場にいれば、第三者が発見することはあまりないだろう」と彼は言った。
グレグソンは満足そうに両手をこすりつけた。「できることはすべてやったと思います」と彼は答えた。「しかし、これは奇妙な事件であり、ホームズさん好みの事件だと思いまして。」
「君はタクシーで来たんじゃないのか?」とシャーロック・ホームズが聞いた。
「いいえ、そうではありません。」
「レストレードも?」
「はい、彼もです。」
「それなら部屋を見てみよう。」そう言って彼は家の中に入っていき、グレグソンもそれに続いたが、その顔には驚きが表れていた。
板がむき出しで埃っぽい短い通路が、台所と事務所につながっていた。そこから左右に2つのドアが開いている。そのうちの1つは明らかに何週間も前から閉じられていた。もう1つはダイニングルームのもので、謎の事件が起こった部屋である。ホームズは中に入り、私は死がもたらす沈痛な思いを胸に、彼の後を追った。
大きな四角い部屋で、家具が一切ないため、より大きく見えた。壁には下品なはたき紙が貼られていたが、ところどころカビで滲んでおり、あちこちが剥がれて垂れ下がり、下の黄色い漆喰が露出している。ドアの反対側には、白大理石を模したマントルピースの上に、派手な暖炉が置かれており、その片隅には、赤い蝋燭の切り株が刺さっていた。一枚だけある窓はとても汚れていて、光は霞んでいて不確かで、埃が部屋全体を覆っているため、すべてが鈍い灰色を帯びていた。
これらの詳細は、すべて後から観察したものである。今、私の関心は、板の上に横たわり、変色した天井を見上げる虚ろな目をした、一人の重苦しい動かない人物に向けられていた。それは43歳か44歳くらいの男で、中肉中背、肩幅が広く、カールした黒髪に短い無精髭を生やしていた。重厚なブロードクロスのフロックコートとウエストコートを着て、明るい色のズボンをはき、襟とカフスは完璧であった。よく手入れされた帽子も床の上に置かれている。両手は握りしめられ、両腕を広げ、下肢はまるで死闘の末のように組み合わされていた。その硬直した顔には、人間の顔では見たこともないような恐怖と、私には憎悪の表情が浮かんで見えた。この悪意に満ちた恐ろしい歪みと、低い額、鈍い鼻、前突した顎とが相まって、死者は奇妙なほど類人猿のように見え、それが身動きの取れない不自然な姿勢によって、さらに強調されたのであった。私はさまざまな形で死を見たが、ロンドン郊外の大動脈に面したあの暗い薄汚れたアパートほど、死が恐ろしい姿で私に現れたことはなかった。
レストレードは相変わらず痩身でフェレットのような体つきで、玄関の脇に立っていて、私と連れを出迎えた。
「この事件は世間を騒がせるでしょうね」と彼は発言した。「私は臆病者ではありませんが、これは私が見たどんな事件よりも理解に苦しみます。」
「手がかりはないのか?」とグレグソンは言った。
「全くない」とレストレードが答えた。
シャーロック・ホームズは死体に近づくと、膝をついて熱心に調べた。「外傷は本当にないのですか?」彼は、辺り一面に広がる無数の血の塊を指差して聞いた。
「間違いない!」と二人の警部が叫んだ。
「となると、もちろん、この血は第二の人物のものであり、殺人が行われたのであれば、おそらく殺人者のものである。34年にユトレヒトで起きたバン・ヤンセンの死を連想させる。その事件を憶えているかね、グレグソン?」
「覚えてません。」
「ちゃんと読むべきだよ。この世の中に新しいものは何もない。すべて以前から行われていたことだ。」
その時、彼の軽快な指はあちこちに飛び、触ったり、押したり、ボタンを外したり、調べたり、その目は先に述べたような遠くを見るような表情をしていた。そのため、検査は非常に迅速に行われ、その細かさは想像を絶するものであった。最後に、彼は死んだ男の唇の匂いを嗅ぎ、エナメル革のブーツの底をちらっと見た。
「彼は全く動かしていないのですね?」と彼は尋ねた。
「検査のために必要な以上のことはしていません。」
「もう霊安室に連れて行っていいよ」と彼は言った。「これ以上、学ぶことはない。」
グレグソンは担架と4人の部下を用意していた。彼の呼びかけで彼らは部屋に入り、見知らぬ男は持ち上げられて運び出された。彼を抱き上げると、指輪がチリンチリンと音を立てて床を転がり落ちた。レストレードはそれを拾い上げ、不思議そうな目で見つめた。
「ここには女性がいたんだ」と彼は叫んだ。「女性の結婚指輪だ。」
彼はそれを手のひらにのせて話した。私たちは皆、彼の周りに集まって、それを見つめた。その金色の輪は、かつて花嫁の指を飾っていたものであることは疑いようがなかった。
「これは問題を複雑にしている」とグレグソンは言った。「天の知るところ、以前から十分に複雑だった。」
「本当に簡略化されていないのか?」ホームズが疑問を投げかけた。「これを見つめても何もわからないよ。彼のポケットから何か見つかりましたか?」
「ここに全部ありますよ」グレッグソンは階段の下の段に置かれた品々を指差した。「ロンドンのバロー社の金時計、製品番号97163。金のアルバート・チェーン、非常に重く頑丈。金の指輪、メーソン装置付き。金のピンバッジ、目にルビーがはまったブルドッグの頭がついている。ロシアの革製カードケース、クリーブランド市エノク・J・ドレバーの名刺が入っており、リネンシャツの E. J. D. と一致。財布はないが7ポンド13セントの小銭ある。ボッカチオの『デカメロン』のポケット版、見返しにジョセフ・スタンガーソンの署名入り。手紙2通、E. J. ドレバーとジョセフ・スタンガーソンに宛てたもの。」
「どこの住所で?」
「ストランドにあるアメリカ両替所留めで、いずれもギオン蒸気船会社のもの。リバプールからの出航の日程を指しています。この不幸な男がニューヨークに戻ろうとしていたことは明らかです。」
「このスタンガンという男について何か問い合わせたことは?」
「すぐにやりましたよ」とグレグソンは言った。「すべての新聞に広告を出させましたし、部下の一人はアメリカ両替所に行きましたが、まだ帰ってきていません」。
「クリーブランドには送りましたか?」
「今朝、電報を打ちました。」
「問い合わせの言葉はどうしましたか?」
「私たちはただ、状況を詳しく説明し、そして、『何か情報があれば、ぜひ教えてください』と言いました。」
「重要だと思われる点について、具体的な説明を求めなかったのですか?」
「スタンガンについて尋ねました。」
「他にないのか?この事件全体を左右するような事情はないのですか?また電報を打たないのか?」
「言うべきことはすべて言いました」とグレグソンは怒ったような声で言った。
シャーロック・ホームズがくすくす笑って何か言おうとしたとき、私たちが広間でこの会話をしている間、玄関にいたレストレードが、尊大で自己満足的な態度で手をこすりながら再び登場した。
「グレグソン、」と彼は言った。「私は今、最も重要な発見をした。壁を注意深く調べなければ、見過ごされていたかもしれない発見だ。」
その時、小さな男は目を輝かせ、同僚に勝てた喜びをかみしめていた。
「こっちへ来てください、」と彼は言った。その部屋の雰囲気は、その惨めな住人がいなくなってから、空気が澄んでいるように感じられた。「さあ、そこに立ってみてください!」
彼はブーツでマッチを擦り、壁にかざした。
「見てください!」と勝ち誇ったように彼は言った。
紙が部分的に剥がれ落ちていることは前述した。この部屋の隅では、大きな紙片が剥がれ落ちて、黄色い四角い粗い漆喰の跡が残っていた。この裸の空間に、血のように赤い文字で一つの文字が書き込まれていた。
RACHE.
「どうです、これ?」警部は、まるで興行師のような顔で叫んだ。「これは部屋の一番暗い隅にあったので見落とされ、誰もそこを見ようとは思わなかったのです。犯人は自分の血でそれを書いたのだ。見てください、この壁を伝って流れ落ちる血の跡を!これで、自殺という考えはなくなった。なぜあの角が選ばれたのか?教えてあげましょう。暖炉の上の蝋燭を見てください。当時は灯りがついていました。もし灯りがついていたなら、この角は壁の一番暗いところではなく、一番明るいところになるはずです。」
「そして、それを見つけた今、どんな意味があるのか?」と、グレグゾンは憂鬱そうな声で尋ねた。
「どういう意味があるかって?なぜかというと、これを書いた人物は女性の名前 Rachel を入れるつもりだったが、書き終える前に邪魔が入ったということだ。よく覚えておいてください。この事件が解明されるとき、レイチェルという女性が関係していることがわかるでしょう。笑うのは結構ですが、シャーロック・ホームズさん。あなたはとても頭が良くて賢いかもしれませんが、結局のところ、古い猟犬が一番なんです。」
「本当に申し訳ございませんでした!」と私の友が言った。その時、彼は爆笑してこの小男の機嫌を損ねた。「このことを最初に発見したのは、確かにあなたの功績です。そして、あなたが言うように、これは昨夜のミステリーのもう一人の参加者が書いたものであることを示す痕跡です。私はまだこの部屋を調べる時間がありませんでしたが、あなたの許可を得てこれから調べます。」
ポケットから巻き尺と大きな丸い虫眼鏡を取り出しながら、彼はこう言った。この二つの道具を持って、音もなく部屋を歩き回り、時には立ち止まり、時には膝をつき、時には顔を伏せて寝転んだ。彼は自分の仕事に没頭し、私たちの存在を忘れているようだった。彼はずっと息を殺して独り言を言い続け、感嘆の声、うめき声、口笛、励ましや希望を示唆する小さな叫びを連発した。その姿を見ていると、純血でよく訓練されたフォックスハウンドが、見失った匂いを見つけるまで、熱心に鳴きながら茂みの中を行ったり来たりしている姿が無性に目に浮かんでくる。20分以上も調査を続け、私には全く見えない痕跡の間の距離を細心の注意を払って測り、時には巻き尺を壁に貼って、同様に理解不能な方法で調査を続けた。あるところでは、床に落ちている灰色のほこりを丁寧に集めて、封筒に詰めていた。最後に、彼は壁に書かれた文字を虫眼鏡で調べ、その一文字一文字を丹念に見ていった。これで満足したようで、巻き尺と虫眼鏡をポケットにしまった。
「天才とは、無限の苦悩に耐えうる能力である」と、彼は微笑みながら言った。「それは非常に悪い定義だが、探偵の仕事には当てはまる。」
グレグソンとレストレードは、素人の友の作戦を、かなりの好奇心と多少の軽蔑をもって眺めていた。シャーロック・ホームズの小さな行動は、すべて明確で実用的な目的に向けられているという、私が気づき始めていた事実を、彼らは明らかに理解していなかったのである。
「どうですか、先生?」と二人が聞いてきた。
「もし私があなたを助けるとしたら、それはあなたの信用を奪うことになるでしょう」と友人は言った。「あなたは今とてもうまくいっているので、誰かが邪魔をするのはかわいそうなことです。」彼の話す声には皮肉の世界が広がっていた。「もし、調査の結果を教えてくれるなら」と彼は続けた。「できる限りお手伝いさせていただきます。とりあえず、死体を発見した警官と話をしたいな。彼の名前と住所を教えてください。」
レストレードはメモ帳に目をやった。「ジョン・ランス」と彼は言った。「彼は今非番です。ケニントン公園通りのオードリー・コート46番地にいます。」
ホームズは、その住所をメモした。
「ドクター、一緒に来てください」と彼は言った。 「彼を探しに行こう。この事件で役に立つかもしれないことを一つ教えよう」彼は続けて二人の警部に向き直った。 「殺人が行われ、その犯人は男だった。身長は180センチ以上あり、働き盛りで、身長の割に足が小さく、つま先の粗い角張ったブーツを履き、トリシノポリの葉巻を吸っていた。彼は被害者を連れて四輪の辻馬車でここに来たが、その辻馬車は、3つの古い蹄鉄と前脚に1つ新しい蹄鉄を履いた馬に引かれていた。おそらく、犯人は赤らんだ顔をしていたのだろう。そして、右手の指の爪がやたらと長かった。これらはわずかな証拠に過ぎないが、あなた方のお役に立つかもしれない。」
レストレードとグレグソンは懐疑的な笑みを浮かべながら、互いにチラリと見合った。
「この男が殺されたのなら、どうやって殺されたのでしょうか?」と前者は尋ねた。
「毒だ」とシャーロック・ホームズは素っ気なく言い、さっさと立ち去った。「それと、もう1つ、レストレード」彼はドアの所で振り返り、付け加えた。 「『Rache』はドイツ語で『復讐』だ。だからレイチェル嬢を探すのに時間をかけないこと。」
別れ際に彼はそう言って、二人のライバルが口をあけているのを尻目に立ち去った。
4. ジョン・ランスが語ったこと
ローリストン・ガーデンズ3番館を出発したのは1時だった。シャーロック・ホームズは私を最寄りの電信局に案内し、そこから長文の電報を打った。そして、タクシーを呼んで、運転手にレストレードがくれた住所まで連れて行くように命じた。
「直接の証拠に勝るものはない」と彼は言った。「実のところ、この件に関して私の心は完全に決まっているのだが、それでも学ぶべきことはすべて学んだ方がいいだろう。」
「君には驚かされるよ、ホームズ」と私は言った。「確かに君は自分が言ったことに確信がないようだ。」
「間違いは許されない」と彼は答えた。「私が現地に到着して最初に見たのは、辻馬車が縁石の近くに車輪で2つの轍を作っていたことです。昨夜まで一週間雨が降っていなかったから、あの深い轍は夜中にできたのだろう。馬の蹄鉄の跡もあり、そのうちの一つは他の三つの蹄鉄よりはるかにはっきりとした切れ込みがあり、それが新しい蹄鉄であることを示している。辻馬車は雨が降り始めてからそこにいて、朝にはいなかった--そのことはグレグソンの言葉だ--から、夜の間にそこにいたに違いない。したがって、その辻馬車があの二人を家に運んだということになる。」
「それは簡単なことだ」と私は言った。「でも、もう一人の男の身長はどうなんだ?」
「なぜかというと、十中八九、人間の身長は歩幅でわかるんだ。数字で説明してもしょうがないが、簡単な計算だ。私はこの男の歩幅を、外側の粘土の上でも、内側の埃の上でも測った。そして、その計算を確認する方法があった。人は壁に字を書くとき、本能的に自分の目の高さくらいに書くものだ。今、その文字は地面から180センチメートル強のところにあった。子供の遊びみたいなものだ。」
「彼の年齢は?」私は尋ねた。
「それは、わずかな努力もせずに一歩で130センチメートルも歩けるような人は、不健康な人間か老人ではないだろう。その幅は、彼が歩いて渡った庭の水たまりの幅から明らかだ。エナメル革のブーツの人間は水たまりを回り込み、爪先の角張ったブーツの人間は水たまりを飛び越えたのだ。何の不思議もない。私は、あの記事で提唱した観察と推理の教訓のいくつかを、普通の生活に適用しているだけだ。他に何か不可解なことはあるかい?」
「指の爪とトリシノポリの葉巻は」と私は控えめに提案した。
「壁に書いた文字は、男の人差し指を血に浸して書いたものだ。その際、漆喰に少し傷がついているのが、私の虫眼鏡で観察できた。もし、男の爪を切っていたら、そうはならなかっただろう。私は床に散らばった灰を拾い集めた。それは色が濃く、フレーク状で、トリシノポリだけが作るような灰だった。私は葉巻の灰を特別に研究している。実際、このテーマで研究書を書いたこともある。私は、葉巻でもタバコでも、どんな銘柄の灰でも一目で見分けられると自負している。熟練探偵がグレグソンやレストレードのようなタイプと違うのは、まさにそのような細部にあるだ。」
「赤らんだ顔は?」と、私は尋ねた。
「ああ、それはもっと大胆な推理だった。でも、私が正しかったことは間違いない。今の状況でそんなこと聞かないでくれ。」
私は自分の眉間に手をやった。「頭の中がグルグルしている」と私は言った。「考えれば考えるほど謎が深まる。この二人の男は--男が二人いたとして--どうやって空家にやってきたのか?彼らを乗せた辻馬車の運転手はどうしたのだろう?一人の男がもう一人に毒を飲ませるなんてことができるのか?血はどこから出たのか?強盗は関係ないのだから、犯人の目的は何だったのか?女性の指輪はどうしてそこにあったのか?そして何より、なぜ二人目の男が旅立つ前にドイツ語で「RACHE」と書き残したのか?正直言って、これらの事実をすべて調和させる方法は見出せないよ。」
友は納得したように微笑んだ。
「君は状況の難しさを簡潔かつうまくまとめている。」と彼は言った。「まだ不明瞭な点も多いが、私は主要な事実についてはかなり決心している。レストレードの発見については、社会主義者や秘密結社を連想させ、警察を間違った方向に向かわせるための単なる盲点だ。ドイツ人の犯行ではない。A は、お気づきのように、ドイツの流儀に多少倣って書かれたものだ。本物のドイツ人は必ずラテン文字で書くから、これはドイツ人が書いたのではなく、自分の役をやりすぎた不器用な模倣犯が書いたと見て間違い無いだろう。これは単に、間違った方向に調査をそらすための策略だったのだ。これ以上この事件について話すつもりはないよ、ドクター。奇術師はトリックを説明したところで信用されないし、私のやり方を見せ過ぎれば、結局私はごく普通の人間だという結論に達するだろうからね。」
「そんなことは絶対にしない」と、私は答えた。「君は、探偵術をこの世で最も正確な科学に近づけたのだ。」
私の言葉と、それを口にした真剣な態度に、友は嬉しそうに顔を赤らめた。彼は、自分の芸術の点では、どんな女の子でも自分の美しさについてお世辞を言われたのと同じくらい敏感であることは、すでに観察したとおりだ。
「もうひとつ言っておくよ。」と彼は言った。「エナメル革と爪先の角張ったブーツは同じ辻馬車でやってきて、二人はできるだけ仲良く、腕を組んで小道を歩いた。というか、エナメル革が立っている間、爪先の角張ったブーツは歩いていた。私は塵の中からそのすべてを読み取ることができた。そして、彼が歩くにつれ、ますます興奮していくことも読み取ることができた。それは彼の歩幅が長くなったことからもわかる。彼はずっとしゃべり続けていて、間違いなく自分を激高させていた。そして、悲劇は起こった。今、私が知っていることはすべて話した。あとは単なる推測と憶測にすぎない。しかし、これから始めるには十分な基礎がある。急がねばならない。今日の午後、ハレのコンサートに行ってノーマン・ネルーダを聴きたいんだ。」
この会話は、辻馬車が薄暗い通りや寂しい脇道を延々と走っているときに交わされたものだった。その中で最も薄暗く寂しい通りで、運転手は突然立ち止まった。「あそこがオードリー・コートです」彼はそう言って、枯れた色のレンガの列にある狭い切れ目を指差した。「ここで待っています。」
オードリー・コートは、決して魅力的な地域ではなかった。狭い通路を進むと、旗が敷き詰められ、汚れた住居が立ち並ぶ四つ角に出た。汚れた子供たちの集団や、変色したリネンの列の間を縫って進むと、46番地に着いた。その部屋のドアには、ランスという名前が刻まれた小さな真鍮の伝票が飾られていた。問い合わせると、巡査は就寝中で、私たちは小さな応接間に通され、彼の到着を待つことになった。
彼は眠っているところを邪魔されて、少し苛立った様子で、すぐに姿を現した。「署で報告書を作りました」と彼は言った。
ホームズはポケットから半ソブリン金貨を取り出し、物思いにふけった。「私たちは、君自身の口からすべてを聞きたいと思ったのです。」と彼は言った。
「私にできることなら、何でも喜んでお話しますよ」巡査は小さな金色の円盤に目をやりながら答えた。
「ただ、起こったことをあなたなりに全部聞かせてください。」
ランスは馬毛のソファに腰を下ろし、眉根を寄せて、自分の物語に何一つ漏れがないようにしようと決心した。
「最初からお話ししますよ」と彼は言った。「夜の10時から朝の6時までが私の勤務時間です。11時に "ホワイトハート" で喧嘩がありました。しかし、それ以外はすべて静かなものでした。1時に雨が降り始め、私はオランダ・グローブの担当者であるハリー・マーチャー巡査に会い、ヘンリエッタ通りの角で一緒に立ち話をしました。そのうちに......たぶん2時かちょっと過ぎに......ブリクストン通りに異常がないか、ちょっと見てみようと思いました。そこはひどく汚く、寂しい場所でした。辻馬車が1台か2台通り過ぎただけで、誰とも会いませんでした。私は、ジンホット4本があればどんなに便利だろうと内心思いながら歩いていると、突然、あの家の窓からキラキラとした灯りが目に飛び込んできたのです。ローリストン・ガーデンズの2つの家が空き家になっているのは、最後の住人が腸チフスで死んだにもかかわらず、所有者が排水管の手入れをしないためだということは知っていました。そのため、窓から見える灯りを見て、私はびっくりしてしまいました。そして、何かあったのかと疑いました。玄関に行くと......」
「君は立ち止まって、庭の門まで戻ってきたんだね」と、友が口を挟んだ。「何のためにそんなことを?」
ランスは激しく飛び跳ね、最大限の驚きをもって、シャーロック・ホームズを見つめた。
「その通りです」と彼は言った。 「なぜそれを知っているのか、それは天のみぞ知る、ですね。 そう、ドアの前まで来ると、とても静かで、とても寂しかったので、誰か一緒にいてくれた方がいいと思ったのです。 こっちの世界では何も恐れていません。でも、もしかしたらチフスで死んだのは、排水溝を点検していた彼かもしれないと思ったんです。 そう思って、門まで戻ってマーチャーのランタンが見えないか見てみましたが、彼の姿も他の人の姿もありませんでした。」
「通りには誰もいなかったのか?」
「生きているものはいませんし、犬もいません。それから気を取り直して玄関まで戻り、ドアを押し開きました。中は静まり返っていたので、私は明かりの点いている部屋に入りました。暖炉の上に赤いろうそくが光っていて、その光で見たのは......」
「ええ、あなたが見たものは全て知っています。部屋を何度も歩き回り、遺体のそばにひざまずき、それから廊下を通り抜けてキッチンのドアを開けようとし、それから......"
ジョン・ランスは怯えた顔で、目に疑惑を浮かべながら、立ちあがった。「どこかに隠れて見ていたんですか?」と彼は叫んだ。「あなたは必要以上に多くを知っているようだ。」
ホームズは笑いながら、テーブルの向こうの巡査に名刺を投げつけた。「殺人罪で私を逮捕するのはやめてくれ」と彼は言った。「私は追う側の猟犬の一人であり、追われる側の狼ではありません。グレグソン氏かレストレード氏がその答えを出すだろう。続けてください。次に何をしたんだ?」
ランスは、不思議そうな表情を崩さずに、席に戻った。「私は門に戻り、笛を鳴らしました。それでマーチャーともう2人の巡査がその場にやってきました。」
「その時、通りには誰もいなかったのか?」
「ええ、役に立つと思われる人物を除いてはいました。」
「どういう意味だ?」
巡査は顔を大きくして笑った。 「私はこれまで多くの酔っ払いを見てきました」と彼は言った。 「しかし、あの男のようにひどく酔っぱらった者はいません。 私が出てきたとき、彼は門のところにいて、手すりに寄りかかって、コロンバインの新しい牙の旗とかいうのを大声で歌っていました。 立っていることもできず、ましてやよろけることもできませんでした。」
「どんな男だったんですか?」とシャーロック・ホームズは尋ねた。
この脱線にジョン・ランスはいささか苛立ったようだ。「彼は尋常でない酔っぱらいでした。」と彼は言った。「私たちがこんなに取り乱さなければ、彼は豚箱にいたことでしょう。」
「彼の顔や服装に気づかなかったのか?」とホームズが焦ったように切り出した。
「私は、それに気付いたと思います。なぜなら、私とマーチャーの二人で彼を支えなければならなかったので。彼は長身で、顔は赤く、下半身は丸く覆われていて......」
「それでいい」とホームズは叫んだ。「彼はどうなった?」
「私たちは彼の面倒を見なくても十分にやることがあります」と巡査は憤慨した声で言った。「彼は無事に家に帰れたと思います。」
「服装はどうでしたか?」
「茶色のオーバーコートです。」
「その手には鞭が握られていただろうか?」
「鞭...いいえ。」
「彼はそれを残したに違いない」と私の友はつぶやいた。「その後、辻馬車を見たり、辻馬車の音を聞いたりしなかったですか?」
「いいえ。」
「あなたの半ソブリン金貨だ」と言って私の仲間は立ち上がり、帽子を取った。「残念だが、ランス、君は決して出世はできないだろう。その頭脳は装飾品としてだけでなく、使用されるべきものだ。昨夜は巡査部長の縞模様を手に入れることができたかもしれない。君が手にした男こそ謎の手がかりを持ち、我々が探している男だ。今さら議論の余地はない。私はそうだと言っているのです。一緒に行こう、ドクター。」
私たちは一緒に辻馬車に乗り込み、情報提供者は信じられない様子だったが、明らかに不愉快そうだった。
「愚か者だ」宿に戻る車の中で、ホームズが苦々しげに言った。「この上ない幸運に恵まれていながら、それを生かさないとはね。」
「私はまだ暗中模索の状態だ。確かにこの男の人相は、このミステリーの第2当事者の君の考えと一致する。しかし、なぜ彼は家を出てから戻ってきたのだろう?これは犯罪者のやり方ではない。」
「指輪、君、指輪だ。指輪を取りに来たんだ。他に捕らえる方法がなければ、いつでも指輪を餌に釣り糸を垂らすことができる。私が捕まえてみせるよ、ドクター......2対1の割合で私が彼を捕まえるよ。この件に関してはすべて君に感謝しなければならない。君がいなければここまでこなかったかもしれないし、私が今まで出会った中で最も素晴らしい研究、つまり緋色の研究を見逃したかもしれないしね?少しアートの専門用語を使ってみたらどうだろうか?殺人という緋色の糸が、人生という無色の糸かせを貫いているのだ。それを解きほぐし、分離し、隅々まで明らかにすることが我々の務めだ。そして今は昼食、そしてその後はノーマン・ネルーダの演奏会だ。彼女のヴァイオリンのアタックと運弓法は見事だ。ショパンのあの小曲を見事に弾きこなすとは。トラ・ラ・ラ・リラ・リラ・ライ。」
辻馬車の座席の背もたれに寄りかかりながら、このアマチュア猟犬はヒバリのように鳴き続け、私は人間の心の多面性について瞑想していた。
5. 広告を見てやってきた訪問者
午前中の激務は、私の弱った体には負担が大きく、午後には疲れ果ててしまった。ホームズが演奏会に出かけた後、私はソファに横たわり、2時間ほど眠ろうと努めた。しかし、それは無駄な試みだった。私の心は、起こったことすべてに興奮しすぎて、奇妙な空想や推測が押し寄せてきた。目を閉じるたびに、目の前に殺された男の歪んだヒヒのような表情が浮かんだ。その顔が私に与える印象は非常に不吉なもので、その顔の持ち主をこの世から追い出した人物に感謝の念を抱く以外、何も感じられなくなった。人間の顔から最も悪質なタイプの悪徳が生まれるとしたら、それは間違いなくクリーブランド市のエノク・J・ドレバーの顔である。それでも、正義は貫かなければならないし、被害者の悪行は法律の元では容赦されないのだ。
そのことを考えれば考えるほど、この男が毒を盛られたという、私の友の仮説は異常なものに見えてきた。私は、彼がドレバーの唇の匂いを嗅いだことを思い出し、その考えを生んだ何かを察知したのだと疑わなくなった。もし毒殺でなければ、死因は何だろう、傷もなければ絞殺の跡もない。しかし、一方では、床の上にこれほど厚く落ちている血は誰のものなのか?争った形跡もなく、被害者は相手を傷つけるような武器も持っていなかった。これらの疑問が解決されない限り、ホームズにとっても私にとっても、眠ることは容易なことではないと私は感じた。その静かで自信に満ちた態度は、彼がすでにすべての事実を説明する理論を作り上げていることを確信させたが、それが何であるかは私には一瞬たりとも推測することができなかった。
彼が帰るのがとても遅かったので、コンサートがずっと彼を引き留めることはできなかったと私は分かった。彼が現れる前に、夕食がテーブルの上に置かれていた。
「壮大だった」と席に着くと、彼は言った。「ダーウィンが音楽について何と言ったか覚えているか?ダーウィンは、音楽を生み出し、それを評価する力は、言葉の力が備わるずっと以前から人類の間に存在していたと主張している。だから、私たちは音楽から微妙な影響を受けているのかもしれない。私たちの魂には、世界が幼年期であったあの霧のような数世紀の記憶が漠然と残っているのだ。」
「それは、かなり大雑把な考えだね」私はそう言った。
「自然を解釈するためには、自分の考えも自然と同じくらい広くなければならない」と彼は答えた。「どうしたんだ?まったく君らしくない。今回のブリクストン通りの事件で動揺しているね。」
「実を言うと、そうなんだ」と私は言った。「アフガニスタンでの経験から、私はもっと無感覚になっているはずだ。マイワンドで仲間が切り刻まれるのを見たが、怖気づくことはなかった。」
「わかるよ。この謎は想像力を刺激するもので、想像力のないところに恐怖はない。君は夕刊を見たかい?」
「いいや。」
「この事件については、かなり良い説明がなされている。男が引き上げられたとき、女の結婚指輪が床に落ちていたことは書かれていない。それもそのはず。」
「どうしてだい?」
「この広告を見てくれ」と彼は答えた。「今朝、事件の直後に各新聞社に送ってもらったものだ。」
彼は新聞を私に投げ渡した。私は示された場所をちらっと見た。それは、「発見」欄の最初のお知らせだった。「今朝、ブリクストン・ロードで」とある。「ホワイトハート酒場とホランド・グローヴの間の道路で、プレーンゴールドの結婚指輪が見つかりました。今晩8時から9時の間にベーカー街221Bのワトスン医師に申し込んで下さい。」
「君の名前を使うのは失礼だが」と彼は言った。「もし私が自分の名前を使ったら、このバカどもの何人かはそれに気づいて、この件に口を出したくなるだろう。」
「それは全然構わない」と私は答えた。「しかし、もし誰かが申し込んできたとしても、私は指輪を持っていない。」
「そうそう、これだ」と彼は言って、指輪を一つ私に渡してきた。「これならうまくいくだろう。ほとんど模造品だ。」
「そして、この広告に誰が答えてくれると期待しているんだい?」
「もちろん、茶色のコートを着た男で、つま先が四角い靴を履いた赤ら顔の私たちの友人だ。自分で来ないなら、共犯者を送るだろう。」
「彼はこれを危険だと思わないのだろうか?」
「そんなことはない。私の見解が正しいなら、そう信じるだけの根拠はある、この男は指輪を失うくらいなら、どんな危険も冒すだろう。私の考えでは、彼はドレバーの死体の上に身をかがめたときに指輪を落としたと思う。そして、そのときには気づかなかった。家を出たあと、落としたことに気づいて急いで戻ったが、ろうそくの火をつけたままにしておいた自分の愚かさのせいで、警察がすでに持っているのを見つけた。彼は門の前で酔ったふりをし、疑惑を晴らさなければならなかった。さて、その男の立場になって考えてみよう。よく考えてみると、家を出た後、道路で指輪をなくした可能性があると思い当たったに違いない。その時、彼はどうするか。夕刊を熱心に探して、その中に指輪があることを期待する。もちろん、彼の目には、この記事が映るはずだ。彼は大喜びするだろう。どうして罠と恐れることがあろうか。彼の目には、指輪の発見が殺人と結びつく理由は何もない。彼は来るだろう。来るよ。一時間以内に彼に会うことになる。」
「そして、どうするのか?」と私は尋ねた。
「ああ、それなら私に任せてくれ。武器はあるのか?」
「古い軍事時代のリボルバーと数発のカートリッジがある。」
「掃除して装填したほうがいい。彼は自暴自棄になるだろうし、そして私は彼を不意打ちするつもりだが、万全を期しておくに越したことはない。」
私は寝室に行き、彼の助言に従った。私がピストルを持って戻ると、テーブルは片付けられ、ホームズは大好きなバイオリンの音色に夢中になっていた。
「陰謀は深まるばかりだ」と私が入ると、彼は言った。「私のアメリカへの電報に返事が来たところだ。この事件に対する私の見解は正しいものだった。」
「それは?」私は熱心に尋ねた。
「私のバイオリンも弦を張り替えたらもっと良くなるだろう」と彼は言った。「拳銃はポケットに入れておいてくれ。あいつが来たら普通に話しかけてくれ。あとは私に任せてくれたまえ。あまり強く見て彼を怖がらせてはいけない。」
「今、8時だ」と私は腕時計に目をやった。
「ああ。彼はおそらく数分でここに来るだろう。ドアを少し開けておいてくれ。それで十分だ。では、鍵を内側につけてくれ。ありがとう!これは昨日屋台で見つけた奇妙な古い本だ。「諸民族間の法規」- 1642年にローランドのリエージュでラテン語で出版された。この小さな茶色の背表紙の本が印刷されたとき、チャールズ国王の頭はまだ肩の上にしっかりと乗っていた。」
「出版者は誰だい?」
「フィリップ・ド・クロイ......誰だったかな?見返しには、非常に色あせたインクで、「グリオルミ・ホワイト蔵書」と書かれている。ウィリアム・ホワイトって誰なんだろう。17世紀の実利的な弁護士だろうか。彼の文章には、法律的なひねりが加えられている。ここに我々の男が来る、と思う。」
その時、鋭くベルが鳴った。シャーロック・ホームズはそっと立ち上がり、椅子をドアの方向へ動かした。使用人が廊下を通り過ぎる音と、彼女がドアを開けるときの鋭い掛け金の音が聞こえた。
「ワトソン先生はここに住んでいらっしゃいますか?」と、はっきりした、しかしちょっときつい声が聞かれた。使用人の返事は聞こえなかったが、ドアが閉まり、誰かが階段を昇り始めた。その足音は不確かで、じゃがれたものだった。それを聞いていた私の仲間の顔には驚きの表情が浮かんでいた。その足音は通路をゆっくりと進み、ドアを弱々しく叩く音がした。
「どうぞ」と私は叫んだ。
私の呼びかけに、私たちが期待していた暴漢ではなく、非常に年老いたしわくちゃの女性が足早にアパートに入ってきたのだ。彼女は突然の光に目がくらんだようで、お辞儀をした後、血走った目でこちらを瞬きながら、緊張して震える指でポケットをまさぐって立っていた。私はちらりと仲間を見た。その時、彼の顔があまりにも悲しげな表情をしていたので、私は自分の表情を保つのが精一杯だった。
老婆は夕刊を取り出し、私たちの広告を指差した。「紳士方々、お待たせいたしました」と彼女は言い、またお辞儀をした。「ブリクストン・ロードにあった金の結婚指輪。これは私の娘サリーのもので、今年12月に結婚したばかりです。彼女の夫はユニオン船で客室係をしており、もし彼が家に来て彼女が指輪をしていないのを見つけたらどう言うだろうと、私には想像もつかないほどです。ただでさえ短気なのに、お酒を飲んだらなおさらです。よろしければ、彼女は昨夜サーカスに行きまして......」
「これは彼女の指輪ですか?」と私は尋ねた。
「主よ、感謝します!」老婆は叫んだ。「サリーは今晩は喜びます。その指輪です。」
「ご住所はどちらでしょうか?」私は鉛筆を手に取り、問いかけた。
「ハウンドディッチのダンカン通り13番地です。ここから疲れる道のりです。」
「ブリクストン通りは、サーカスとハウンドディッチの間にはない」とシャーロック・ホームズは鋭く指摘した。
老婆は顔を丸くして、赤く縁取られた小さな目から、彼を鋭く見つめた。「紳士からは私の住所を聞かれました」と彼女は言った。「サリーはペッカムのメイフィールド・プレイス3番地に下宿しています。」
「あなたのお名前は......?」
「私の名はソーヤーです。娘の姓はデニス。彼女はトム・デニスと結婚しました。彼は海上にいる限りは、賢く清潔な若者です。そして、会社で最も尊敬されている客室係です。でも陸に上がると、女や酒屋が多くて......」
「ソーヤーさん、あなたの指輪です」私は仲間の合図に従って口を挟んだ。「娘さんのものであることは明らかで、正当な持ち主にお返しできることをうれしく思います。」
老婆は、祝福と感謝の言葉を何度もつぶやきながら、指輪をポケットにしまい、足早に階段を下りていった。シャーロック・ホームズは彼女がいなくなった瞬間に立ち上がり、自分の部屋へ駆け込んだ。数秒後に戻ってきた彼は、アルスターコートとクラバットネクタイに包まれていた。「彼女は共犯者に違いない、私を彼のところに案内してくれるだろう。待っててくれたまえ。」広間のドアが来客の背後でバタンと閉まると、ホームズは階段を下りていった。窓から見ると、彼女が向こう側を弱々しく歩いているのが見え、追っ手は少し離れたところで彼女を追いかけていた。「彼の理論が全部間違っているのだろう」と私は思った。「さもなくば彼は今、謎の核心へと導かれるいるのだろう。」彼は私に待つように言う必要はなかった。私は、彼の冒険の結果を聞くまで眠ることは不可能だと感じた。
彼が出発したのは9時近くだった。私は、彼がいつまでいるのか見当もつかなかったが、じっとパイプをふかしながら、アンリ・ミュルジェの「ボヘムの生涯」のページを読み飛ばした。10時が過ぎると、メイドがベッドに向かう足音が聞こえてきた。11時になると、女主人の堂々とした足取りが私の部屋の前を通り過ぎ、同じ目的地に向かった。12時近くになって、彼の鍵の鋭い音が聞こえてきた。その時、私は彼の顔を見て、彼がうまくいっていないことを知った。楽しさと悔しさが拮抗しているように見えたが、突然、前者が優勢になり、愉快な笑いに包まれた。
「スコットランドヤードには絶対に知られたくない」と彼は叫び、椅子に腰を下ろした。「私は彼らを散々困らせたので、彼らは私に最後まで聞かせなかっただろう。笑っていられるのは、長い目で見れば、彼らと互角になれるとわかっているからだ。」
「では、どうだったんだい?」と私は尋ねた。
「ああ、自分に対しての話でもいいんだけどね。その生き物は少し行ったところで、足を引きずり始め、足が痛いというあらゆる兆候を見せ始めた。やがて彼女は立ち止まり、通りかかった四輪馬車を呼び止めた。私は何とか彼女の近くにいて、住所を聞こうとしたが、それほど心配する必要はなかった。彼女は通りの反対側にも聞こえるような大きな声で、『ハウンドディッチのダンカン通り13番地まで』と叫んだ。これは本物に見えると思った私は、彼女が無事に中に入ったのを確認すると、馬車の後ろに腰を下ろした。これは探偵が得意とすべき芸当である。さて、私たちは走り出したが、問題の通りに着くまで決して手綱を緩めることはなかった。私は玄関に着く前に飛び降り、のんびりと通りを歩いた。四輪馬車が停まったのが見えた。運転手が飛び降り、ドアを開けて期待に胸を膨らませているのが見えた。しかし、何も出てこなかった。私が彼のところに行くと、彼は空っぽのタクシーの中で必死に手探りし、今まで聞いた中で最も素晴らしい種類の悪態の言葉を口にしていた。乗客の姿はなく、彼が運賃を受け取るまでしばらく時間がかかりそうだ。13番地に問い合わせたところ、その家はケズウィックという立派な新聞配達人のもので、ソーヤーやデニスという名前の人は聞いたことがないとのことだった。」
「まさか......」と私は驚いて叫んだ。「あのよろよろした弱々しい老婆が、運転中に、君にも運転手にも見られずに四輪馬車から降りられたと言うのか?」
「老婆!」シャーロック・ホームズは鋭くこう言った。「私たちが、老婆に騙されていたんだ。老婆は、若い男で、しかも活動的で、無類の役者であったに違いない。服装も独特だった。彼は尾行されるのを察知して、このような手段で私をまいたに違いない。つまり、我々が追っている男は、私が想像していたほど孤独ではなく、彼のために危険を冒す覚悟のある友人がいるということだ。さて、先生、お疲れのようですね。私の忠告を聞き入れ、もう寝てください。」
私は確かに非常に疲れていたので、彼の命令に従った。私はホームズを燃え盛る火の前に座らせたまま、夜の帳が降りるまでずっと、彼のヴァイオリンの低く憂鬱な泣き声を聞いていた。彼はまだ自分が解き明かすことにした奇妙な問題について考え込んでいるようだった。
6. トビアス・グレグソンが見せた実力
翌日の新聞は、「ブリクストンの謎」と呼ばれる事件で持ちきりだった。各紙ともこの事件についての長い記事を載せており、それに加えてリーダー的な存在になっているものもあった。その中には、私にとって新しい情報もあった。私は今でも、この事件に関連した多くの切り抜きや抜粋をスクラップブックに保存している。ここではそのいくつかを要約して紹介する。
デイリー・テレグラフ紙は、「犯罪の歴史の中で、これほど奇妙な特徴を持つ悲劇はめったにない」と評した。被害者のドイツ語の名前、他の動機が全くないこと、壁に書かれた不吉な文字、これら全てが政治亡命者や革命家による犯行であることを物語っている。社会主義者たちはアメリカに多くの支部を持っており、死者は間違いなく彼らの不文律に違反し、彼らに追跡されたのだ。ヴェームゲリヒト、アクア・トファーナ、カルボナーリ、ブリンヴィリエ侯爵夫人、ダーウィン理論、マルサスの原理、ラットクリフ・ハイウェイ殺人事件などを軽妙に引用した後、記事は政府を諫め、イギリスにおける外国人の監視を強化することを提唱して締めくくられている。
スタンダード紙は、この種の無法な暴挙は、通常、自由主義政権の下で起こるという事実を論評している。大衆の心が不安定になり、その結果、あらゆる権威が弱体化することから生じるのだ。死者はアメリカ人の紳士で、数週間前からメトロポリスに滞在していた。彼はカンバーウェルのトーキー・テラスにあるシャルパンティエ夫人の下宿に滞在していた。彼は個人秘書のジョセフ・スタンガーソンと一緒に旅行していた。2人は4日火曜日に女主人に別れを告げ、リバプールの特急に乗るを言ってユーストン駅に出発した。その後、ホームで一緒にいるところを目撃されている。ドレバーの死体がユーストンから何マイルも離れたブリクストン通りの空き家で発見されるまで、それ以上のことは何も知られていない。ドレバーがどうやってそこに来たか、どうやって運命が決まったか、それはまだ謎に包まれている。スタンガーソンの行方は全く分からない。スコットランドヤードのレストレード氏とグレグソン氏がこの事件に携わっているとのことで、この有名な警部がすぐにこの事件を解明してくれるものと期待している。
デイリー・ニュース紙は、この犯罪が政治的なものであることは間違いないだろうと述べている。大陸政府を活気づけた専制主義と自由主義への憎しみは、自分達が受けたすべての出来事の記憶によって酸欠になっていなければ、優れた市民になっていたであろう多くの人々をわが国の海岸に追いやる効果があったのである。このような人々の間には、厳しい名誉の掟があり、それを破った場合は死をもって罰せられた。秘書のスタンガソンを探し出し、故人の習慣を確認するためにあらゆる努力をしなければならない。彼が下宿していた家の住所が判明したことで、大きな一歩を踏み出した。この結果は、スコットランドヤードのグレグソン氏の鋭敏さと行動力によるものであった。
シャーロック・ホームズと私は、朝食のときにこの通知を一緒に読み返したが、彼はかなり楽しんでいるようだった。
「何が起ころうとレストレードとグレグソンは必ず得点すると言っただろ。」
「それは結果次第だ。」
「ああ、幸いなことに、それは全く問題ではない。もし男が捕まれば、それは彼らの努力のおかげであり、もし逃げれば、それは彼らの努力にもかかわらず、である。表が出れば私の勝ち、裏が出れば君の負けだ。彼らが何をしようと、彼らには信奉者がいるものだ。『愚か者はいつも、自分を称賛してくれるより愚かな人間を見つけるものだ。』」
「いったいあれは何なんだ?」と私は叫んだ。その時、廊下や階段でたくさんの足音がして、女主人の嫌悪の声も聞こえてきた。
「刑事警察のベーカー街部門だ」 と仲間が重々しく言った。そして、彼が話すと、私が今まで見た中で最も汚く、最もボロボロの浮浪児が6人、部屋に飛び込んできたのである。
「気をつけ!」とホームズが鋭い調子で叫ぶと、6人の薄汚い小悪党たちは、まるでいかがわしい彫像のように一列に並んだ。「君たち、今後、ウィギンズだけを報告によこし、他の者は通りで待機すること。見つけたかい、ウィギンズ?」
「いいえ、見つけておりません」と、若者の一人が言った。
「まさか、そうなるとは思わなかったよ。見つかるまで続けなければならないよ。ほら、給料だよ。」と彼は言って、一人一人に1シリングずつ手渡した。
「さあ、行ってらっしゃい、次回はもっといい報告をもってきてくれたまえ。」
彼が手を振ると、彼らはネズミのように階下へ逃げ、次の瞬間、彼らの甲高い声が通りから聞こえてきた。
「あの小さな乞食たちの一人からは、十数人の警察官よりも多くの仕事を得ることができる」とホームズは発言した。「役人風の人物を見ただけで、人々は口をつぐんでしまう。しかし、あの若者たちはどこにでも行き、何でも聞いている。彼らもまた針のように鋭く、彼らが求めるのは組織だけなのだ。」
「彼らを雇っているのはブリクストンの件か?」と私は尋ねた。
「そう、確かめたいことがあるのだ。これは単に時間の問題だ。おや!これから猛烈なニュースが飛び込んでくるぞ!グレグソンが道を下ってくるぞ。顔のすべてに幸福の印がある。私たちのところへ来るんだ、きっと。ほら、立ち止まった。そこだ!」
鐘が激しく鳴り響いた。数秒後、白髪混じりの探偵が3歩ずつ階段を上ってきて、私たちの居間に飛び込んできた。
「親愛なる友よ」と彼はホームズの無反応の手を握りしめて叫んだ。「おめでとう!私は全てを明らかにしたのです。」
私の友の表情には、不安の色が浮かんでいるように見えた。
「正しい道だ!なぜかというと、私たちはその男を監禁しているのです。」
「それで、彼の名前は?」
「アーサー・シャルパンティエ、女王陛下の海軍中尉です。」とグレッグソンは太った手をこすりながら、胸を張って偉そうに叫んだ。
シャーロック・ホームズはほっとしたようにため息をつき、笑顔でリラックスした。
「さあ座って、この葉巻を1本試してみてください。」と彼は言った。「我々はあなたがどのように成し遂げられたのか気になるところです。ウイスキーの水割りはいかがですか?」
「結構ですね、いただきます」と警部は答えた。「この1、2日、とてつもない苦労をして、疲れ果ててしまったんです。肉体的な運動というより、精神的な負担が大きかったですがね。シャーロック・ホームズさん、私たちは共に頭脳労働者なのですから、その点はご理解いただけると思います。」
「とても光栄なことです」とホームズは重々しく言った。「この喜ばしい結果に至った経緯を聞かせてください。」
警部は肘掛け椅子に座り、満足げに葉巻をふかした。すると突然、彼は面白さのあまり自分の太ももを叩いた。
「面白いのは、」と彼は叫んだ。「あの馬鹿レストレードは自分を賢いと思っていますが、全く間違った方向に進んでしまったことです。彼はスタンガソンという秘書を追っているが、スタンガソンは生まれて間もない赤ん坊ほど犯罪とは無縁です。今頃はもう捕まっているに違いありません。」
その発想はグレグソンの心をくすぐり、彼は息が詰まるほど笑った。
「どうやって手がかりを掴んだのですか?」
「ええ、全部お話しします。もちろん、ワトソン先生、これはここだけの話でお願いします。最初の難問はこのアメリカ人の素性を突き止めることでした。ある人は広告に答えが出るまで待ったり、ある人は自ら名乗り出るまで情報を得ようとしました。これはトビアス・グレグソンのやり方ではありません。死体のそばにあった帽子を覚えてらっしゃいますか?」
「ええ」とホームズは言った。「カンバーウェル通り129番地のジョン・アンダーウッド&サンズのものだ。」
グレグソンはかなり落ち込んでいるように見えた。
「そんなことに気づいていたなんて」と彼は言った。「行ったことはおありですか?」
「いや、ない。」
「ハッ!」とグレグソンはほっとしたように叫んだ。「どんなに小さく見えるチャンスでも逃してはいけません。」
「偉大な心にとっては、何も小さいことはない」とホームズはしみじみと語った。
「それで、アンダーウッドのところに行き、この大きさの帽子を売ったことがあるかどうか聞いてみました。彼は帳簿に目を通すと、すぐに思い当たりました。トーキーテラスのシャルペンティエ下宿舎のドレバー氏に送ったそうです。こうして私はドレバー氏の住所を突き止めました。」
「賢い、実に賢い!」とシャーロック・ホームズはつぶやいた。
「私は次にシャルパンティエ夫人を訪ねました」と警部は続けた。「彼女は非常に青ざめ、苦しんでいるのがわかりました。彼女の娘さんも部屋にいて、とても立派な娘さんでした。目の周りを真っ赤にして、私が話しかけると唇を震わせました。そのことに私が気づかぬわけがありません。私はネズミの臭いを感じ始めました。シャーロック・ホームズさん、正しい手がかりにたどり着いた時の感覚をご存知でしょう?神経が高鳴るような感じです。『クリーブランドのエノク・J・ドレバー氏の謎の死を知っていますか?』と私は尋ねました。
母親はうなだれました。一言も発せられない様子でした。娘は泣き出しました。私は、この人たちは何か知っているのだと、これまで以上に感じました。
『ドレバー氏は何時に家を出て汽車に乗りましたか?』と私は尋ねました。
『8時に』と、彼女は動揺を抑えるために喉をゴクリと鳴らしながら言いました。『彼の秘書のスタンガソン氏は、9時15分と11時の2本の列車があると言っていました。彼は9時15分の列車に乗りました。』
『そして、それが彼を見た最後だったのでしょうか?』
そう私が質問すると、夫人の顔に恐ろしいほどの変化が現れました。彼女の顔は完全に青ざめました。彼女が『はい』という一言を発するまでに、何秒かかりました。そして、その声は、ハスキーで不自然なトーンでした。
しばらく沈黙が続いた後、娘が落ち着いた澄んだ声で話しました。
『お母さん、偽りは決して良い結果をもたらさないのです』と彼女は言いました。『この紳士には正直に言いましょう。私たちはドレバーさんにまたお会いしました。』
『神よ、娘をお許しください!』シャルパンティエ夫人は叫び、両手を上げて椅子に座りなおした。『あなたは弟を殺してしまう。』
『アーサー兄さんだって私たちが真実を話すことを望んでいるのです』と、少女は固く答えました。
『今、全部話した方が賢明ですよ』と私は言いました。『中途半端な秘密は、何もしないより悪いことです。それに、私たちがどれだけ知っているか、あなた方は知らないでしょう。』
『どうなっても知らないよ、アリス!」と彼女の母親は叫び、そして、私の方を向いて『すべてをお話し致します。私が息子のために動揺しているのは息子がこの恐ろしい事件に関与しているのではないかという危惧からではありません。息子は全くの無実です。しかし、警部さんの目や他の人の目には、息子が関与しているように映るかもしれないのが怖いのです。しかし、それは絶対にありえないことです。彼の高潔な人格、職業、家柄のすべてがそれを禁じているのです。』
『一番いい方法は、事実をはっきりさせることです』と私は答えました。 『ご子息が無実であれば、何も問題はないでしょう。』
『たぶん、アリス、あなたは私たちを一緒に残して去ったほうがいいと思うよ。』と夫人が言うと、娘は引き下がっていきました。『さて、警部さん』と彼女は続けました。『すべてをあなたに話すつもりはなかったのですが、かわいそうに娘が暴露してしまったので、他に方法はありません。一度話すと決めたからには、どんなことも省略せずにすべてお話し致します。』
『それが一番賢明な方法です』と私は言いました。
『ドレバーさんは3週間近くも私たちと一緒に過ごしています。彼と彼の秘書のスタンガソンさんは大陸を旅行していました。トランクにはコペンハーゲンのラベルが貼られており、そこが彼らの最後の滞在地であることがわかりました。スタンガソンさんは物静かで控えめな男でしたが、残念ながら彼の雇い主はそれとはかけ離れていました。ドレバーさんは習慣が粗く、やり方も粗野でした。到着したその夜から酒癖が悪くなり、昼の12時を過ぎるとほとんどしらふとは言えなくなりました。メイドに対するドレバーさんの態度は、うんざりするほど自由で馴れ馴れしいものでした。最悪なのは、娘のアリスに対してもすぐに同じ態度を取り、幸いにも彼女は無邪気なので理解できないような言い方を何度もしてきたことです。ある時は、彼女を腕に抱きかかえるという暴挙に出たため、彼の個人秘書から男らしくない行為だと非難されたこともありました。』
『でも、どうしてこんなことを我慢したんですか』と私は聞きました。『あなたが望めば好きなときに下宿を追い出せるのでしょう。』
シャルパンティエ夫人は、私の的確な質問に顔を赤らめました。『ドレバーさんが来たその日に、私が断っていたらと思うと、残念でなりません。』と夫人は言いました。『でも、誘惑が強かったんです。1人1日1ポンド、1週間で14ポンドの報酬で、しかも今は閑散期です。私は未亡人で、海軍の息子のために多くの犠牲を払いました。私はお金を失うことを恨みました。最善を尽くして行動しました。しかし、この前のことはひどすぎましたので、それを理由に退去を通知しました。それが彼が行く理由でした。』
『それで?』
『彼が馬車で去るのを見たとき、私の心は軽くなりました。息子はちょうど休暇中でしたが、このことは何も教えていませんでした。気性が荒く、妹を熱烈に愛しているからです。出ていった二人の背後でドアを閉めたとき、私の心の荷が降りたようでした。しかし、1時間もしないうちにベルが鳴り、ドレバーさんが戻ってきたことを知りました。彼はかなり興奮しており、明らかに酒に酔っているようでした。私が娘と座っている部屋に無理やり入ってきて、汽車に乗り遅れたと支離滅裂なことを言い出しました。そして、アリスに向かい、私の目の前で、一緒に行こうと提案したのです。「君はもう大人だ」と彼は言いまいた。「君を止める法律は何もない。お金なら十分にあるし、余裕もある。この老女のことは気にしないで、今すぐ私と一緒に来い。お姫様のような暮らしができるぞ。」アリスは怖くて縮こまりましたが、彼は手首を掴んでドアの方に引き寄せようとしました。私は悲鳴をあげました。その時、息子のアーサーが部屋に入ってきました。それから何が起こったのか、私にはわかりません。罵りの言葉や乱闘の音が聞こえました。私は恐怖のあまり、顔を上げることができませんでした。顔を上げると、アーサーが棒を持って笑いながら玄関に立っていました。「あの立派な男が、また私たちを困らせることはないだろう」とアーサーは言いました。「あいつを追いかけて、あいつがどうするか見てやろう。」そう言ってアーサーは帽子を取り、通りを歩き出しました。次の朝、ドレバーさんの謎の死を聞きました。』」
「この言葉は、シャルパンティエ夫人の口から、何度もあえぎながら、間髪入れずに発せられました。時折、あまりに低い声で話すので、ほとんど言葉を聞き取ることができませんでした。しかし、私は間違いがないように、彼女の言ったことをすべて速記しました。」
「かなり刺激的だ。」 とシャーロック・ホームズはあくびをしながら言った。「次に何が起こったのですか?」
「シャルパンティエ夫人がちょっと止まった時」警部は続けた。「私は、この事件の全貌が、ある一点に集約されていることに気づきました。私は、いつも女性には効果的だと思う方法で夫人の目を見つめながら、『息子さんは何時に帰ってきたのですか?』と尋ねました。
『知りません』と夫人は答えました。
『知らないのですか?』
『はい、息子は玄関の鍵を持っていて、自分で入ってきたのです。』
『あなたが寝た後で?』
『はい。』
『何時に寝られましたか?』
『11時ごろです。』
『では、息子さんは少なくとも2時間は家を空けていたのですね?』
『はい。』
『4時間から5時間の可能性も?』
『はい。』
『その間、息子さんは何をしていたのですか?』
『知りません』と夫人は唇まで真っ白になりながら答えました。」
「もちろん、その後は何もすることはありませんでした。私はシャルパンティエ中尉の居場所を突き止め、二人の警官を連れて行き、彼を逮捕しました。私が彼の肩に触れ、静かに来るように警告すると、彼はお偉方のように大胆に答えました。『あの悪党ドレバーの死に関与したことで私を逮捕するのだろう』と彼は言いまいた。私たちはそのことについて何も言っていなかったので、彼がそのことを口にしたのは実に疑わしいことでした。」
「確かに」とホームは言った。
「母親がドレバーについて説明していたときに息子が持っていたという重い棒を彼はその時も持っていました。それは頑丈なオークの棍棒でした。」
「それで、君の推理は?」
「私の推理では、彼はドレバーを追ってブリクストン通りまで行った。その時、二人の間に新たな口論が起こり、ドレバーは棒で腹の下を殴られ、外傷もなく死んでしまった。その夜は雨が降っていて誰もいなかったので、シャルパンティエは犠牲者の遺体を誰もいない家の中に引きずり込んだ。ろうそく、血痕、壁の文字、指輪、これらはすべて警察に間違った痕跡を認識させるためのトリックなのでしょう。」
「よくやった!」とホームズは激励の声で言った。「本当にグレグソン、うまくやってるじゃないか。私たちはまだ君から学ぶことがある。」
「自分では、かなりうまくいったと思っています」と警部は誇らしげに答えた。「この青年はドレバーの後を追ってしばらくしてから、ドレバーに気づかれて、ドレバーから逃げるためにタクシーに乗ったという供述をしています。その帰りに古い船員仲間に会い、一緒に長い間散歩をした。その古い船員仲間はどこに住んでいるのかと聞かれても、満足な返事ができない。私は、この事件の全体像が驚くほどよくまとまっていると思います。レストレードのことを考えると楽しくなる。間違った手がかりを追って出発してしまった。彼はあまり期待できないかもしれませんが......なんということだ、あの男がここにいる!」
私たちが話している間に階段を上がり、今部屋に入ってきたのは、確かにレストレードだった。しかし、彼の態度や服装の特徴である安心感や陽気さはなかった。彼の顔は乱れて困っており、服装は乱れて不潔であった。彼は明らかにシャーロック・ホームズに相談するつもりで来たようで、同僚を見るなり、困惑して気後れしているように見えた。彼は部屋の中央に立ち、帽子を神経質にもてあそび、どうしたらいいのかわからない様子だった。「これは異常な事件です」と彼は最後に言った--「最も理解し難い出来事です。」
「ああ、そうですか、レストレード氏!」 とグレグソンは勝ち誇ったように言った。「その結論に達すると思ってたよ。秘書のジョセフ・スタンガソン氏は見つかったか?」
「秘書のジョセフ・スタンガーソン氏は」とレストレードは重々しく語った。「今朝6時頃ハリデイ・ホテルで殺されました。」
7. 暗闇の中の光
レストレードが与えてくれた情報は、あまりに重大で、あまりに予想外だったので、私たちは3人ともかなり呆気にとられた。グレグソンは椅子から飛び出し、残りのウイスキーと水をひっくり返した。私は黙ってシャーロック・ホームズを見つめた。彼は唇を押さえ、眉を目の上に寄せていた。
「スタンガソンもか!」とホームズは呟いた。「筋書きが濃くなった。」
「以前も十分濃かったです」とレストレードは不満げに言い、椅子に座った。「私は戦争評議会のようなものに入ってしまったようです。」
「そっ、その情報は確かか?」とグレグソンは口ごもった。
「今、スタンガーソンの部屋から来たところだ」とレストレードは言った。「私が死体の第一発見者です。」
「私たちは、この事件に関するグレグソンの見解を聞いていたところです」とホームズは言った。「あなたが見たことやったことを私たちに教えてもらえませんか?」
「異存はありません」レストレードはそう答えて席についた。「ドレバーの死にスタンガソンが関係していると考えていたことを告白します。この新しい進展は、私が完全に間違っていたことを教えてくれました。一つの考えでいっぱいだったので、私は秘書がどうなったかを調べに行きました。3日の夜8時半ごろ、ユーストン駅で二人が一緒にいるところが目撃されています。夜中の2時にドレバーがブリクストン通りで殺されているのが発見されました。8時半から犯行までの間、スタンガソンが何をしていたのか、その後どうなったのかが問題でした。私はリバプールに電報を打ち、スタンガソンの特徴を伝え、アメリカの船を監視するよう警告しました。それから私はユーストン近辺のホテルや宿屋に電話をかけまくりました。ドレバーとスタンガーソンが別れたとすれば、スタンガーソンがその辺の宿に一晩泊まって、翌朝また駅をぶらぶらするのが自然な流れだと私は主張しました。」
「彼らは事前に待ち合わせ場所を決めておいただろう」とホームズが言った。
「それが証明されました。昨日の夕方からずっと、全く無駄な問い合わせをしていました。今朝はとても早くから行動し、8時にリトル・ジョージ・ストリートのハリデイーズ・プライベート・ホテルに到着しました。スタンガーソン氏がいるかどうか尋ねると即座に肯定的な答えが返ってきました。
『あなたがスタンガーソンさんが期待していた紳士に間違いない』とホテルの人たちは言いました。『スタンガーソンさんは2日間も紳士を待っていたんですよ。』
『彼は今どこにいるのですか?』と私は尋ねました。
『スタンガーソンさんは2階のベッドでお休み中です。9時に起こしてほしいとおっしゃっておられました。』
『すぐにでも彼に会いにいきます』と私は言いました。」
「私が突然現れたら、彼は緊張して無防備な言葉を発してしまうかもしれないと思ったのです。ブーツ(ホテルなどで靴磨きや雑用をする人)がボランティアで部屋を案内してくれました。その部屋は2階にあり、小さな廊下がそこに続いていました。ブーツは私にドアを指さし、ブーツが再び階段を降りようとしたとき、私は20年の経験にもかかわらず、気分が悪くなるようなものを目にしました。ドアの下から赤い血の塊が流れ出ていて、通路を横切って反対側の幅木に沿って小さな水たまりを作っていました。私が叫ぶと、ブーツが戻ってきました。それを見たとき、ブーツはほとんど気を失っていました。扉は内側から鍵がかかっていましたが、私たちは肩を組んで扉にぶつかり、中に入りました。部屋の窓は開いていて、窓の横に、寝間着姿の男の死体がうずくまったように横たわっていました。手足は硬直し、冷たくなっていました。ブーツをひっくり返したら、ジョセフ・スタンガーソンという名でこの部屋に泊まっていた紳士だとすぐに分かりました。死因は左脇腹の深い刺し傷で、心臓を貫通していたのでしょう。さて、ここからがこの事件の奇妙なところです。殺された男の上には何があったと思われますか?」
私は、シャーロック・ホームズが答える前から、身体がゾクゾクし、これから起こる恐怖の予感を感じていた。
「血文字で書かれた RACHE という文字」とホームズは言った。
「その通りです」とレストレードは畏敬の念を込めた声で言い、私たちはしばらくの間黙っていた。
この無名の暗殺者の所業には、あまりにも整然としながらも、理解しがたいものがあり、それが彼の犯罪に新鮮な残忍さを与えていた。そのことを考えると、戦場でさえ十分に安定していた私の神経がピリピリと痛んだ。
「その男は目撃されています」とレストレードは続けた。「酪農場に行く途中の牛乳配達人が、たまたまホテルの裏の厩舎から続く小道を歩いていたんです。いつもはそこに横に置いてある梯子が2階の窓に立てかけられていて、2階の窓が大きく開いているのに気づいたのです。梯子を降りたのは、一人の男でした。あまりに静かに、そして堂々と降りてくるので、少年はこのホテルで働いている大工か建具職人かと思ったそうです。少年はその人を特に気に留めず、仕事にはまだ早いなと心の中で思っただけでした。その男は背が高く、赤っぽい顔をしていて、茶色っぽい長いコートを着ていたという印象だったそうです。犯人は殺害後しばらくこの部屋にいたようです。洗面器には手を洗った血のついた水があり、シーツにはナイフを故意に拭いた跡があったからです。」
犯人の人相を聞いて、私はホームズをちらりと見た。というのも、ホームズの意見とあまりに一致していたからだ。しかし、その顔には歓喜や満足の色は微塵もなかった。
「その部屋に犯人の手がかりとなるようなものはなかったのですか?」とホームズは尋ねた。
「何もありませんでした。スタンガーソンはドレバーの財布をポケットに入れていました。しかし、これはいつものことだったようで、支払いはすべてスタンガーソンが行っていました。財布には80数ポンド入っていましたが、何も盗まれていませんでした。このような異常な犯罪の動機が何であれ、強盗でないことは確かです。殺された男のポケットには書類もメモもありませんでした。ただ、1カ月ほど前にクリーブランドから届いた1通の電報があり、そこには『J・Hはヨーロッパにいる』という言葉が書かれていました。このメッセージには差出人が添えられていませんでした。」
「他には何もなかったんですか?」とホームズが聞いた。
「特に重要なものはありませんでした。 ベッドの上には読みかけの小説が置いてあり、そばの椅子にはパイプが置いてありました。 テーブルの上には水の入ったグラスがあり、窓辺には小さな経木の外用薬箱に2、3錠の丸薬が入っていました。」
シャーロック・ホームズは喜びの声を上げて椅子から飛び降りた。
「最後の1本がつながった」と、ホームズは喜びを爆発させた。「私の事件は解決した。」
二人の警部は、驚いてホームズを見つめた。
「私は今、このもつれた事件を解決するすべての糸を手にしている」と私の仲間は自信満々に言った。「もちろん、細かい部分は埋めなければならないが、ドレバーが駅でスタンガーソンと別れてから、スタンガーソンの死体を発見するまでの主要な事実はすべて、自分の目で見たかのように確かである。私の知識の証拠をあげよう。その丸薬を手に入れることができますか?」
「ここに持っています」とレストレードは言い、白い小箱を取り出した。「私は、財布と電報と一緒に、警察署の安全な場所に置くつもりで、これらを受け取りました。私がこの丸薬を手にしたのはほんの偶然であり、私はこの丸薬を重要視していないと言わざるを得ません。」
「それをこちらに下さい」とホームズが言った。「さて、先生」私に向かって「これは普通の丸薬ですか?」とホームズは言った。
この丸薬は確かに普通の丸薬ではなかった。真珠のような灰色で、小さくて丸く、光に透かすとほとんど透明だった。「この軽さと透明度からして、水に溶けるのだろう」と私は言った。
「まさにその通りだ」とホームズは答えた。「では、あのかわいそうないたずらっ子のテリアを連れてきてくれませんか?ずっと調子が悪くて、昨日大家さんが苦痛から解放してやれと君に言ってたんだ。」
私は一階に降り、犬を抱いて階段を上った。息苦しそうで、目がギラギラしていることから、もうそろそろ限界であることがわかる。確かに、その雪のように白い口元は、犬の寿命がすでに来ていることを告げていた。私は犬を絨毯の上のクッションの上に寝かせた。
「この丸薬を二つに切ります」と、ホームズはペンナイフを取り出し、言葉通りの動作をした。「半分は今後のために箱の中に戻します。もう半分はこのワイングラスに入れ、そこにティースプーン1杯の水を入れておく。先生の言う通り、簡単に水に溶けることがおわかりいただけると思います。」
「これは非常に興味深いことだ」と笑われていると疑った人のような傷ついた口調でレストレードは言った。「しかし、それがジョセフ・スタンガーソン氏の死とどう関係があるのか、私には分かりません。」
「忍耐だ、友よ、忍耐!やがてそれがすべてであることに気づくだろう。私は今、混合物を食べやすくするために少し牛乳を追加するものとします。そして、これを犬に見せると、すぐに飲み干すことがわかる。」
ホームズはワイングラスの中身を受け皿に移し、テリアの前に置くと、すぐにそれを舐めて乾かしてしまった。シャーロック・ホームズの真剣な態度に納得した私たちは、全員黙って座り、この動物をじっと観察し、何か驚くべき効果があるのではないかと期待した。しかし、そのようなことは起こらなかった。犬はクッションの上に伸びたまま、苦しそうに呼吸をしていたが、どうやら喫茶店にいるのと同じように居心地は良くも悪くもなっていないようだった。
ホームズは時計を取り出し、1分、1分と時間が経っても結果が出ないので、最大限の悔しさと落胆の表情を浮かべていた。彼は唇をかんだり、机を指でたたいたりして、焦りの色を濃くした。あまりの強い感情に、私は心から同情した。一方、二人の刑事は嘲笑を浮かべ、ホームズが遭遇したこの検査結果に、決して不快感を抱いていないようだった。
「偶然の一致であるはずがない」と彼は叫び、ついに椅子から立ち上がり、部屋を激しく歩き回った。「単なる偶然の一致であるはずがない。ドレバーの事件で疑った薬が、実際にスタンガーソンの死後に見つかっている。それなのに不活性だ。どういうことなんだ?まさか、私の一連の推論が誤っているはずはない。ありえない!それなのに、この悲惨な犬は何一つ悪くならない。ああ、これだ!見つけたぞ!」ホームズは歓喜の声を上げながら箱に駆け寄り、もう一つの丸薬を二つに切って溶かし、ミルクを加えてテリアに差し出した。この不幸な生き物の舌がそれで潤うやいなや、四肢を痙攣させ、まるで雷に打たれたかのように硬直し、生命力を失った。
シャーロック・ホームズは長く息を吸い、額の汗を拭った。「もっと信頼すべきなんだ」とホームズは言った。「ある事実が、長い推理の積み重ねに反しているように見えるとき、それは必ず他の解釈が可能であることを、私はこの時までに知っておくべきだったのだ。その箱の中の2つの錠剤のうち、1つは猛毒で、もう1つは全く無害だった。そのことは、箱を見る前からわかっていたはずだ。」
この発言には驚かされ、ホームズが正気であるとは到底思えなかった。しかし、ホームズの推測が正しかったことを証明するために、死んだ犬がいたのだ。私は、自分の心の中の霧がだんだん晴れてきて、ぼんやりとした真実が見えてきたような気がした。
「君たちには奇妙に思えるだろうが」とホームズは続けた。「それは、君たちが調査の始めに、提示されたたった一つの本当の手がかりの重要性を把握することができなかったからです。私は幸運にもそのことを理解し、その後起こったことはすべて、私の最初の推測を裏付けるものであり、実際、論理的な流れでした。それゆえ、君たちを当惑させ、事件をより曖昧にしたことは、私を啓発し、私の結論を強化するのに役立ったのです。奇妙さと謎を混同するのは間違いです。最もありふれた犯罪こそ、最も不可解であることが多いのだ。なぜなら、ありふれているから、推論できるような新しい、あるいは特別な特徴を示さないからだ。この殺人事件も、もし被害者の死体が道路に横たわっているのが発見されただけで、それを注目させるような突飛でセンセーショナルな付属物が何もなければ、解明するのは限りなく困難だったでしょう。これらの奇妙な詳細は、事件を難しくするどころか、むしろそうでなくする効果があるのです。」
この演説をかなり焦りながら聞いていたグレグソン氏は、もう自分を抑えきれなくなった。「いいですかシャーロック・ホームズさん」とグレグソンは言った。「私たちは、あなたが賢い人であり、あなた自身の仕事のやり方を持っていることに同意する心づもりがあります。しかし、我々は今、単なる理論や説教以上のものを求めています。そのためには、犯人をつかまえなければなりません。私は自分の主張を通しましたが、どうやら間違っていたようです。シャルペンティエ青年がこの2番目の事件に関わることはあり得なかった。レストレードは秘書のスタンガソンを追ったが、どうやらスタンガソンも間違っていたようです。あなたはあちこちにヒントを投げかけて私たちよりも多くのことを知っているようですが、そろそろあなたがこの事件についてどれだけ知っているか、私たちには率直にお聞きする権利があると思うんです。犯人の名前を教えてください。」
「グレグソンの言うとおりだと思います、ホームズさん」とレストレードは言った。「我々2人は共に試み、そして共に失敗した。私が部屋に来てから、あなたは必要な証拠はすべて揃っていると、何度もおっしゃっていましたね。まさか、これ以上保留にすることはないでしょう。」
「暗殺者の逮捕が遅れれば、新たな残虐行為を行う時間を与えるかもしれない。」と私は述べた。
こうして私たち全員に迫られたホームズは、解せない様相を呈していた。彼は、物思いにふけるときの癖で、頭を胸に沈め、眉をひそめて、部屋を行ったり来たりし続けた。
「もう、殺人事件は起きないだろう」と、ホームズは突然立ち上がり、私たちと向き合いながらようやく口を開いた。「その考慮すべき事項は、問題外にしていただいて結構です。あなたたちは私に暗殺者の名前を知っているかどうか尋ねました。私は知っています。しかし、暗殺者の名前を知っているというだけでは、暗殺者を捕まえる苦労に比べれば、小さなことです。暗殺者逮捕はすぐにでも実行したい。私は自分の手配で何とかしたいと願っています。しかし、これは繊細な取り扱いを必要とするものです。なぜなら、私たちは抜け目のない命知らずな男を相手にしており、その男は、私が証明する機会があったように、彼と同じくらい賢い別の人物によって支えられているのです。この男が誰にも手がかりを掴まれていないと思っている限りは、この男を確保するチャンスはあります。しかし、少しでも疑いを持ったら、彼は名前を変えて、この大都市の400万人の住民の中に一瞬にして消えてしまうでしょう。お二人の感情を害するつもりはありませんが、私はこの男たちが正式な軍隊に勝るとも劣らない存在だと考えており、だからこそ皆さんの協力を仰いでいないのです。もし失敗すれば、もちろんこの不手際による非難はすべて受けることになりますが、それは覚悟の上です。今のところ、自分の作戦を危険にさらすことなく、あなたがたに連絡できるようになったら、すぐにそうすることを約束する心づもりです。」
グレグソンとレストレードは、この保証にも、警部警察を卑下するような言及にも、到底納得がいかないようだった。グレグソンは亜麻色の髪の根元まで紅潮させ、レストレードは好奇心と憤怒に満ちたギラギラした目をしていた。しかし、二人とも話す暇もなく、ドアを叩く音がして、浮浪児の代表者であるウィギンズ少年が、事件にとっては意味のなく芳しくない自己紹介をした。
「ホームズさん、辻馬車を階下に呼んであります。」とウィギンズは前髪を触りながら言った。
「いい子だ」とホームズは穏やかに言った。「この型のものをスコットランドヤードに紹介してはどうだろうか?」とホームズは引き出しから鉄の手錠を取り出しながら続けた。「バネがいかに美しく働くか見て欲しい。一瞬で締まるんだ。」
「手錠を装着する人さえ見つかれば、古い型でも十分です。」とレストレードは言った。
「とても良い、とても良い」とホームズは微笑んだ。「辻馬車の運転手も、私の荷物を運ぶのを手伝ってくれるかもしれない。ウィギンズ、彼に上がるように言ってくれ。」
私は、ホームズがまるでこれから旅に出るかのように話していることに驚いた。というのも、ホームズはそのことについて何も言っていなかったからだ。 部屋には小さなポルトマントがあり、ホームズはこれを取り出してストラップをつけはじめた。 辻馬車の運転手が部屋に入ってきたとき、ホームズは忙しくそれに取り組んでいた。
「このバックルを外してくれ、御者」とホームズは言い、ひざまづきながら、一度も顔を上げずに作業を続けた。
その男は、やや不機嫌そうに、反抗的な態度で前に出てきて、両手を下ろして手助けをした。その瞬間、カチッという鋭い音と金属の音がして、シャーロック・ホームズは再び立ちあがった。
「皆さん」とホームズは目を輝かせて叫んだ。「エノク・ドレバーとジョセフ・スタンガソンを殺したジェファーソン・ホープ氏を紹介します。」
すべてが一瞬の出来事で、実感する暇もないほど早かった。ホームズの勝ち誇った表情と声の調子、御者の呆然とした野蛮な顔、まるで魔法のように手首にかかったきらめく手錠を睨みつける顔など、その瞬間のことは鮮明に覚えている。一瞬、あるいは二度、私たちは彫像の一団になったかもしれない。そして、声にならない怒りの咆哮とともに、拘束された人物はホームズの手から体を引き離し、窓から身を投げ出した。しかし、彼が窓を通り抜ける前に、グレグソン、レストレード、そしてホームズが、まるで多くの猟犬のように彼に襲いかかった。彼は部屋の中に引きずり戻され、激しい争いが始まった。彼はとても力強く、とても獰猛だったので、私たち4人は何度も振り落とされた。彼は癲癇の発作を起こした人のような痙攣の力をもっているように見えた。ガラスを通り抜けた彼の顔と手はひどく傷ついていたが、出血があっても彼の抵抗力を弱めることはなかった。レストレードが彼の首の布の中に手を入れ、半分首を絞めるまで、彼の抵抗が無駄であることを悟らせることはできなかった。それでも、手だけでなく足も挟み込むまでは安心できなかった。それが終わると、私たちは息も絶え絶え、息を切らしながら立ち上がった。
「彼の辻馬車がある」とシャーロック・ホームズが言った。「スコットランドヤードに行くのに役立つでしょう。そして今、皆さん、」ホームズは快活な笑みを浮かべながら続けた。「私たちの小さなミステリーは終わりを告げました。皆さんは今、私にどんな質問を投げかけても大歓迎ですし、回答を拒否される心配もありません。」
8. アルカリ性の大平原で
IN the central portion of the great North American Continent there lies an arid and repulsive desert, which for many a long year served as a barrier against the advance of civilisation. From the Sierra Nevada to Nebraska, and from the Yellowstone River in the north to the Colorado upon the south, is a region of desolation and silence. Nor is Nature always in one mood throughout this grim district. It comprises snow-capped and lofty mountains, and dark and gloomy valleys. There are swift-flowing rivers which dash through jagged cañons; and there are enormous plains, which in winter are white with snow, and in summer are grey with the saline alkali dust. They all preserve, however, the common characteristics of barrenness, inhospitality, and misery.
There are no inhabitants of this land of despair. A band of Pawnees or of Blackfeet may occasionally traverse it in order to reach other hunting-grounds, but the hardiest of the braves are glad to lose sight of those awesome plains, and to find themselves once more upon their prairies. The coyote skulks among the scrub, the buzzard flaps heavily through the air, and the clumsy grizzly bear lumbers through the dark ravines, and picks up such sustenance as it can amongst the rocks. These are the sole dwellers in the wilderness.
In the whole world there can be no more dreary view than that from the northern slope of the Sierra Blanco. As far as the eye can reach stretches the great flat plain-land, all dusted over with patches of alkali, and intersected by clumps of the dwarfish chaparral bushes. On the extreme verge of the horizon lie a long chain of mountain peaks, with their rugged summits flecked with snow. In this great stretch of country there is no sign of life, nor of anything appertaining to life. There is no bird in the steel-blue heaven, no movement upon the dull, grey earth--above all, there is absolute silence. Listen as one may, there is no shadow of a sound in all that mighty wilderness; nothing but silence--complete and heart-subduing silence.
It has been said there is nothing appertaining to life upon the broad plain. That is hardly true. Looking down from the Sierra Blanco, one sees a pathway traced out across the desert, which winds away and is lost in the extreme distance. It is rutted with wheels and trodden down by the feet of many adventurers. Here and there there are scattered white objects which glisten in the sun, and stand out against the dull deposit of alkali. Approach, and examine them! They are bones: some large and coarse, others smaller and more delicate. The former have belonged to oxen, and the latter to men. For fifteen hundred miles one may trace this ghastly caravan route by these scattered remains of those who had fallen by the wayside.
Looking down on this very scene, there stood upon the fourth of May, eighteen hundred and forty-seven, a solitary traveller. His appearance was such that he might have been the very genius or demon of the region. An observer would have found it difficult to say whether he was nearer to forty or to sixty. His face was lean and haggard, and the brown parchment-like skin was drawn tightly over the projecting bones; his long, brown hair and beard were all flecked and dashed with white; his eyes were sunken in his head, and burned with an unnatural lustre; while the hand which grasped his rifle was hardly more fleshy than that of a skeleton. As he stood, he leaned upon his weapon for support, and yet his tall figure and the massive framework of his bones suggested a wiry and vigorous constitution. His gaunt face, however, and his clothes, which hung so baggily over his shrivelled limbs, proclaimed what it was that gave him that senile and decrepit appearance. The man was dying--dying from hunger and from thirst.
He had toiled painfully down the ravine, and on to this little elevation, in the vain hope of seeing some signs of water. Now the great salt plain stretched before his eyes, and the distant belt of savage mountains, without a sign anywhere of plant or tree, which might indicate the presence of moisture. In all that broad landscape there was no gleam of hope. North, and east, and west he looked with wild questioning eyes, and then he realised that his wanderings had come to an end, and that there, on that barren crag, he was about to die. “Why not here, as well as in a feather bed, twenty years hence,” he muttered, as he seated himself in the shelter of a boulder.
Before sitting down, he had deposited upon the ground his useless rifle, and also a large bundle tied up in a grey shawl, which he had carried slung over his right shoulder. It appeared to be somewhat too heavy for his strength, for in lowering it, it came down on the ground with some little violence. Instantly there broke from the grey parcel a little moaning cry, and from it there protruded a small, scared face, with very bright brown eyes, and two little speckled, dimpled fists.
“You’ve hurt me!” said a childish voice reproachfully.
“Have I though,” the man answered penitently, “I didn’t go for to do it.” As he spoke he unwrapped the grey shawl and extricated a pretty little girl of about five years of age, whose dainty shoes and smart pink frock with its little linen apron all bespoke a mother’s care. The child was pale and wan, but her healthy arms and legs showed that she had suffered less than her companion.
“How is it now?” he answered anxiously, for she was still rubbing the towsy golden curls which covered the back of her head.
“Kiss it and make it well,” she said, with perfect gravity, shoving [19] the injured part up to him. “That’s what mother used to do. Where’s mother?”
“Mother’s gone. I guess you’ll see her before long.”
“Gone, eh!” said the little girl. “Funny, she didn’t say good-bye; she ‘most always did if she was just goin’ over to Auntie’s for tea, and now she’s been away three days. Say, it’s awful dry, ain’t it? Ain’t there no water, nor nothing to eat?”
“No, there ain’t nothing, dearie. You’ll just need to be patient awhile, and then you’ll be all right. Put your head up agin me like that, and then you’ll feel bullier. It ain’t easy to talk when your lips is like leather, but I guess I’d best let you know how the cards lie. What’s that you’ve got?”
“Pretty things! fine things!” cried the little girl enthusiastically, holding up two glittering fragments of mica. “When we goes back to home I’ll give them to brother Bob.”
“You’ll see prettier things than them soon,” said the man confidently. “You just wait a bit. I was going to tell you though--you remember when we left the river?”
“Oh, yes.”
“Well, we reckoned we’d strike another river soon, d’ye see. But there was somethin’ wrong; compasses, or map, or somethin’, and it didn’t turn up. Water ran out. Just except a little drop for the likes of you and--and----”
“And you couldn’t wash yourself,” interrupted his companion gravely, staring up at his grimy visage.
“No, nor drink. And Mr. Bender, he was the fust to go, and then Indian Pete, and then Mrs. McGregor, and then Johnny Hones, and then, dearie, your mother.”
“Then mother’s a deader too,” cried the little girl dropping her face in her pinafore and sobbing bitterly.
“Yes, they all went except you and me. Then I thought there was some chance of water in this direction, so I heaved you over my shoulder and we tramped it together. It don’t seem as though we’ve improved matters. There’s an almighty small chance for us now!”
“Do you mean that we are going to die too?” asked the child, checking her sobs, and raising her tear-stained face.
“I guess that’s about the size of it.”
“Why didn’t you say so before?” she said, laughing gleefully. “You gave me such a fright. Why, of course, now as long as we die we’ll be with mother again.”
“Yes, you will, dearie.”
“And you too. I’ll tell her how awful good you’ve been. I’ll bet she meets us at the door of Heaven with a big pitcher of water, and a lot of buckwheat cakes, hot, and toasted on both sides, like Bob and me was fond of. How long will it be first?”
“I don’t know--not very long.” The man’s eyes were fixed upon the northern horizon. In the blue vault of the heaven there had appeared three little specks which increased in size every moment, so rapidly did they approach. They speedily resolved themselves into three large brown birds, which circled over the heads of the two wanderers, and then settled upon some rocks which overlooked them. They were buzzards, the vultures of the west, whose coming is the forerunner of death.
“Cocks and hens,” cried the little girl gleefully, pointing at their ill-omened forms, and clapping her hands to make them rise. “Say, did God make this country?”
“In course He did,” said her companion, rather startled by this unexpected question.
“He made the country down in Illinois, and He made the Missouri,” the little girl continued. “I guess somebody else made the country in these parts. It’s not nearly so well done. They forgot the water and the trees.”
“What would ye think of offering up prayer?” the man asked diffidently.
“It ain’t night yet,” she answered.
“It don’t matter. It ain’t quite regular, but He won’t mind that, you bet. You say over them ones that you used to say every night in the waggon when we was on the Plains.”
“Why don’t you say some yourself?” the child asked, with wondering eyes.
“I disremember them,” he answered. “I hain’t said none since I was half the height o’ that gun. I guess it’s never too late. You say them out, and I’ll stand by and come in on the choruses.”
“Then you’ll need to kneel down, and me too,” she said, laying the shawl out for that purpose. “You’ve got to put your hands up like this. It makes you feel kind o’ good.”
It was a strange sight had there been anything but the buzzards to see it. Side by side on the narrow shawl knelt the two wanderers, the little prattling child and the reckless, hardened adventurer. Her chubby face, and his haggard, angular visage were both turned up to the cloudless heaven in heartfelt entreaty to that dread being with whom they were face to face, while the two voices--the one thin and clear, the other deep and harsh--united in the entreaty for mercy and forgiveness. The prayer finished, they resumed their seat in the shadow of the boulder until the child fell asleep, nestling upon the broad breast of her protector. He watched over her slumber for some time, but Nature proved to be too strong for him. For three days and three nights he had allowed himself neither rest nor repose. Slowly the eyelids drooped over the tired eyes, and the head sunk lower and lower upon the breast, until the man’s grizzled beard was mixed with the gold tresses of his companion, and both slept the same deep and dreamless slumber.
Had the wanderer remained awake for another half hour a strange sight would have met his eyes. Far away on the extreme verge of the alkali plain there rose up a little spray of dust, very slight at first, and hardly to be distinguished from the mists of the distance, but gradually growing higher and broader until it formed a solid, well-defined cloud. This cloud continued to increase in size until it became evident that it could only be raised by a great multitude of moving creatures. In more fertile spots the observer would have come to the conclusion that one of those great herds of bisons which graze upon the prairie land was approaching him. This was obviously impossible in these arid wilds. As the whirl of dust drew nearer to the solitary bluff upon which the two castaways were reposing, the canvas-covered tilts of waggons and the figures of armed horsemen began to show up through the haze, and the apparition revealed itself as being a great caravan upon its journey for the West. But what a caravan! When the head of it had reached the base of the mountains, the rear was not yet visible on the horizon. Right across the enormous plain stretched the straggling array, waggons and carts, men on horseback, and men on foot. Innumerable women who staggered along under burdens, and children who toddled beside the waggons or peeped out from under the white coverings. This was evidently no ordinary party of immigrants, but rather some nomad people who had been compelled from stress of circumstances to seek themselves a new country. There rose through the clear air a confused clattering and rumbling from this great mass of humanity, with the creaking of wheels and the neighing of horses. Loud as it was, it was not sufficient to rouse the two tired wayfarers above them.
At the head of the column there rode a score or more of grave ironfaced men, clad in sombre homespun garments and armed with rifles. On reaching the base of the bluff they halted, and held a short council among themselves.
“The wells are to the right, my brothers,” said one, a hard-lipped, clean-shaven man with grizzly hair.
“To the right of the Sierra Blanco--so we shall reach the Rio Grande,” said another.
“Fear not for water,” cried a third. “He who could draw it from the rocks will not now abandon His own chosen people.”
“Amen! Amen!” responded the whole party.
They were about to resume their journey when one of the youngest and keenest-eyed uttered an exclamation and pointed up at the rugged crag above them. From its summit there fluttered a little wisp of pink, showing up hard and bright against the grey rocks behind. At the sight there was a general reining up of horses and unslinging of guns, while fresh horsemen came galloping up to reinforce the vanguard. The word ‘Redskins’ was on every lip.
“There can’t be any number of Injuns here,” said the elderly man who appeared to be in command. “We have passed the Pawnees, and there are no other tribes until we cross the great mountains.”
“Shall I go forward and see, Brother Stangerson,” asked one of the band.
“And I,” “and I,” cried a dozen voices.
“Leave your horses below and we will await you here,” the Elder answered. In a moment the young fellows had dismounted, fastened their horses, and were ascending the precipitous slope which led up to the object which had excited their curiosity. They advanced rapidly and noiselessly, with the confidence and dexterity of practised scouts. The watchers from the plain below could see them flit from rock to rock until their figures stood out against the skyline. The young man who had first given the alarm was leading them. Suddenly his followers saw him throw up his hands, as though overcome with astonishment, and on joining him they were affected in the same way by the sight which met their eyes.
On the little plateau which crowned the barren hill there stood a single giant boulder, and against this boulder there lay a tall man, long-bearded and hard-featured, but of an excessive thinness. His placid face and regular breathing showed that he was fast asleep. Beside him lay a little child, with her round white arms encircling his brown sinewy neck, and her golden haired head resting upon the breast of his velveteen tunic. Her rosy lips were parted, showing the regular line of snow-white teeth within, and a playful smile played over her infantile features. Her plump little white legs terminating in white socks and neat shoes with shining buckles, offered a strange contrast to the long shrivelled members of her companion. On the ledge of rock above this strange couple there stood three solemn buzzards, who, at the sight of the new comers uttered raucous screams of disappointment and flapped sullenly away.
The cries of the foul birds awoke the two sleepers who stared about [20] them in bewilderment. The man staggered to his feet and looked down upon the plain which had been so desolate when sleep had overtaken him, and which was now traversed by this enormous body of men and of beasts. His face assumed an expression of incredulity as he gazed, and he passed his boney hand over his eyes. “This is what they call delirium, I guess,” he muttered. The child stood beside him, holding on to the skirt of his coat, and said nothing but looked all round her with the wondering questioning gaze of childhood.
The rescuing party were speedily able to convince the two castaways that their appearance was no delusion. One of them seized the little girl, and hoisted her upon his shoulder, while two others supported her gaunt companion, and assisted him towards the waggons.
“My name is John Ferrier,” the wanderer explained; “me and that little un are all that’s left o’ twenty-one people. The rest is all dead o’ thirst and hunger away down in the south.”
“Is she your child?” asked someone.
“I guess she is now,” the other cried, defiantly; “she’s mine ‘cause I saved her. No man will take her from me. She’s Lucy Ferrier from this day on. Who are you, though?” he continued, glancing with curiosity at his stalwart, sunburned rescuers; “there seems to be a powerful lot of ye.”
“Nigh upon ten thousand,” said one of the young men; “we are the persecuted children of God--the chosen of the Angel Merona.”
“I never heard tell on him,” said the wanderer. “He appears to have chosen a fair crowd of ye.”
“Do not jest at that which is sacred,” said the other sternly. “We are of those who believe in those sacred writings, drawn in Egyptian letters on plates of beaten gold, which were handed unto the holy Joseph Smith at Palmyra. We have come from Nauvoo, in the State of Illinois, where we had founded our temple. We have come to seek a refuge from the violent man and from the godless, even though it be the heart of the desert.”
The name of Nauvoo evidently recalled recollections to John Ferrier. “I see,” he said, “you are the Mormons.”
“We are the Mormons,” answered his companions with one voice.
“And where are you going?”
“We do not know. The hand of God is leading us under the person of our Prophet. You must come before him. He shall say what is to be done with you.”
They had reached the base of the hill by this time, and were surrounded by crowds of the pilgrims--pale-faced meek-looking women, strong laughing children, and anxious earnest-eyed men. Many were the cries of astonishment and of commiseration which arose from them when they perceived the youth of one of the strangers and the destitution of the other. Their escort did not halt, however, but pushed on, followed by a great crowd of Mormons, until they reached a waggon, which was conspicuous for its great size and for the gaudiness and smartness of its appearance. Six horses were yoked to it, whereas the others were furnished with two, or, at most, four a-piece. Beside the driver there sat a man who could not have been more than thirty years of age, but whose massive head and resolute expression marked him as a leader. He was reading a brown-backed volume, but as the crowd approached he laid it aside, and listened attentively to an account of the episode. Then he turned to the two castaways.
“If we take you with us,” he said, in solemn words, “it can only be as believers in our own creed. We shall have no wolves in our fold. Better far that your bones should bleach in this wilderness than that you should prove to be that little speck of decay which in time corrupts the whole fruit. Will you come with us on these terms?”
“Guess I’ll come with you on any terms,” said Ferrier, with such emphasis that the grave Elders could not restrain a smile. The leader alone retained his stern, impressive expression.
“Take him, Brother Stangerson,” he said, “give him food and drink, and the child likewise. Let it be your task also to teach him our holy creed. We have delayed long enough. Forward! On, on to Zion!”
“On, on to Zion!” cried the crowd of Mormons, and the words rippled down the long caravan, passing from mouth to mouth until they died away in a dull murmur in the far distance. With a cracking of whips and a creaking of wheels the great waggons got into motion, and soon the whole caravan was winding along once more. The Elder to whose care the two waifs had been committed, led them to his waggon, where a meal was already awaiting them.
“You shall remain here,” he said. “In a few days you will have recovered from your fatigues. In the meantime, remember that now and for ever you are of our religion. Brigham Young has said it, and he has spoken with the voice of Joseph Smith, which is the voice of God.”
9. ユタの花
THIS is not the place to commemorate the trials and privations endured by the immigrant Mormons before they came to their final haven. From the shores of the Mississippi to the western slopes of the Rocky Mountains they had struggled on with a constancy almost unparalleled in history. The savage man, and the savage beast, hunger, thirst, fatigue, and disease--every impediment which Nature could place in the way, had all been overcome with Anglo-Saxon tenacity. Yet the long journey and the accumulated terrors had shaken the hearts of the stoutest among them. There was not one who did not sink upon his knees in heartfelt prayer when they saw the broad valley of Utah bathed in the sunlight beneath them, and learned from the lips of their leader that this was the promised land, and that these virgin acres were to be theirs for evermore.
Young speedily proved himself to be a skilful administrator as well as a resolute chief. Maps were drawn and charts prepared, in which the future city was sketched out. All around farms were apportioned and allotted in proportion to the standing of each individual. The tradesman was put to his trade and the artisan to his calling. In the town streets and squares sprang up, as if by magic. In the country there was draining and hedging, planting and clearing, until the next summer saw the whole country golden with the wheat crop. Everything prospered in the strange settlement. Above all, the great temple which they had erected in the centre of the city grew ever taller and larger. From the first blush of dawn until the closing of the twilight, the clatter of the hammer and the rasp of the saw was never absent from the monument which the immigrants erected to Him who had led them safe through many dangers.
The two castaways, John Ferrier and the little girl who had shared his fortunes and had been adopted as his daughter, accompanied the Mormons to the end of their great pilgrimage. Little Lucy Ferrier was borne along pleasantly enough in Elder Stangerson’s waggon, a retreat which she shared with the Mormon’s three wives and with his son, a headstrong forward boy of twelve. Having rallied, with the elasticity of childhood, from the shock caused by her mother’s death, she soon became a pet with the women, and reconciled herself to this new life in her moving canvas-covered home. In the meantime Ferrier having recovered from his privations, distinguished himself as a useful guide and an indefatigable hunter. So rapidly did he gain the esteem of his new companions, that when they reached the end of their wanderings, it was unanimously agreed that he should be provided with as large and as fertile a tract of land as any of the settlers, with the exception of Young himself, and of Stangerson, Kemball, Johnston, and Drebber, who were the four principal Elders.
On the farm thus acquired John Ferrier built himself a substantial log-house, which received so many additions in succeeding years that it grew into a roomy villa. He was a man of a practical turn of mind, keen in his dealings and skilful with his hands. His iron constitution enabled him to work morning and evening at improving and tilling his lands. Hence it came about that his farm and all that belonged to him prospered exceedingly. In three years he was better off than his neighbours, in six he was well-to-do, in nine he was rich, and in twelve there were not half a dozen men in the whole of Salt Lake City who could compare with him. From the great inland sea to the distant Wahsatch Mountains there was no name better known than that of John Ferrier.
There was one way and only one in which he offended the susceptibilities of his co-religionists. No argument or persuasion could ever induce him to set up a female establishment after the manner of his companions. He never gave reasons for this persistent refusal, but contented himself by resolutely and inflexibly adhering to his determination. There were some who accused him of lukewarmness in his adopted religion, and others who put it down to greed of wealth and reluctance to incur expense. Others, again, spoke of some early love affair, and of a fair-haired girl who had pined away on the shores of the Atlantic. Whatever the reason, Ferrier remained strictly celibate. In every other respect he conformed to the religion of the young settlement, and gained the name of being an orthodox and straight-walking man.
Lucy Ferrier grew up within the log-house, and assisted her adopted father in all his undertakings. The keen air of the mountains and the balsamic odour of the pine trees took the place of nurse and mother to the young girl. As year succeeded to year she grew taller and stronger, her cheek more rudy, and her step more elastic. Many a wayfarer upon the high road which ran by Ferrier’s farm felt long-forgotten thoughts revive in their mind as they watched her lithe girlish figure tripping through the wheatfields, or met her mounted upon her father’s mustang, and managing it with all the ease and grace of a true child of the West. So the bud blossomed into a flower, and the year which saw her father the richest of the farmers left her as fair a specimen of American girlhood as could be found in the whole Pacific slope.
It was not the father, however, who first discovered that the child had developed into the woman. It seldom is in such cases. That mysterious change is too subtle and too gradual to be measured by dates. Least of all does the maiden herself know it until the tone of a voice or the touch of a hand sets her heart thrilling within her, and she learns, with a mixture of pride and of fear, that a new and a larger nature has awoken within her. There are few who cannot recall that day and remember the one little incident which heralded the dawn of a new life. In the case of Lucy Ferrier the occasion was serious enough in itself, apart from its future influence on her destiny and that of many besides.
It was a warm June morning, and the Latter Day Saints were as busy as the bees whose hive they have chosen for their emblem. In the fields and in the streets rose the same hum of human industry. Down the dusty high roads defiled long streams of heavily-laden mules, all heading to the west, for the gold fever had broken out in California, and the Overland Route lay through the City of the Elect. There, too, were droves of sheep and bullocks coming in from the outlying pasture lands, and trains of tired immigrants, men and horses equally weary of their interminable journey. Through all this motley assemblage, threading her way with the skill of an accomplished rider, there galloped Lucy Ferrier, her fair face flushed with the exercise and her long chestnut hair floating out behind her. She had a commission from her father in the City, and was dashing in as she had done many a time before, with all the fearlessness of youth, thinking only of her task and how it was to be performed. The travel-stained adventurers gazed after her in astonishment, and even the unemotional Indians, journeying in with their pelties, relaxed their accustomed stoicism as they marvelled at the beauty of the pale-faced maiden.
She had reached the outskirts of the city when she found the road blocked by a great drove of cattle, driven by a half-dozen wild-looking herdsmen from the plains. In her impatience she endeavoured to pass this obstacle by pushing her horse into what appeared to be a gap. Scarcely had she got fairly into it, however, before the beasts closed in behind her, and she found herself completely imbedded in the moving stream of fierce-eyed, long-horned bullocks. Accustomed as she was to deal with cattle, she was not alarmed at her situation, but took advantage of every opportunity to urge her horse on in the hopes of pushing her way through the cavalcade. Unfortunately the horns of one of the creatures, either by accident or design, came in violent contact with the flank of the mustang, and excited it to madness. In an instant it reared up upon its hind legs with a snort of rage, and pranced and tossed in a way that would have unseated any but a most skilful rider. The situation was full of peril. Every plunge of the excited horse brought it against the horns again, and goaded it to fresh madness. It was all that the girl could do to keep herself in the saddle, yet a slip would mean a terrible death under the hoofs of the unwieldy and terrified animals. Unaccustomed to sudden emergencies, her head began to swim, and her grip upon the bridle to relax. Choked by the rising cloud of dust and by the steam from the struggling creatures, she might have abandoned her efforts in despair, but for a kindly voice at her elbow which assured her of assistance. At the same moment a sinewy brown hand caught the frightened horse by the curb, and forcing a way through the drove, soon brought her to the outskirts.
“You’re not hurt, I hope, miss,” said her preserver, respectfully.
She looked up at his dark, fierce face, and laughed saucily. “I’m awful frightened,” she said, naively; “whoever would have thought that Poncho would have been so scared by a lot of cows?”
“Thank God you kept your seat,” the other said earnestly. He was a tall, savage-looking young fellow, mounted on a powerful roan horse, and clad in the rough dress of a hunter, with a long rifle slung over his shoulders. “I guess you are the daughter of John Ferrier,” he remarked, “I saw you ride down from his house. When you see him, ask him if he remembers the Jefferson Hopes of St. Louis. If he’s the same Ferrier, my father and he were pretty thick.”
“Hadn’t you better come and ask yourself?” she asked, demurely.
The young fellow seemed pleased at the suggestion, and his dark eyes sparkled with pleasure. “I’ll do so,” he said, “we’ve been in the mountains for two months, and are not over and above in visiting condition. He must take us as he finds us.”
“He has a good deal to thank you for, and so have I,” she answered, “he’s awful fond of me. If those cows had jumped on me he’d have never got over it.”
“Neither would I,” said her companion.
“You! Well, I don’t see that it would make much matter to you, anyhow. You ain’t even a friend of ours.”
The young hunter’s dark face grew so gloomy over this remark that Lucy Ferrier laughed aloud.
“There, I didn’t mean that,” she said; “of course, you are a friend now. You must come and see us. Now I must push along, or father won’t trust me with his business any more. Good-bye!”
“Good-bye,” he answered, raising his broad sombrero, and bending over her little hand. She wheeled her mustang round, gave it a cut with her riding-whip, and darted away down the broad road in a rolling cloud of dust.
Young Jefferson Hope rode on with his companions, gloomy and taciturn. He and they had been among the Nevada Mountains prospecting for silver, and were returning to Salt Lake City in the hope of raising capital enough to work some lodes which they had discovered. He had been as keen as any of them upon the business until this sudden incident had drawn his thoughts into another channel. The sight of the fair young girl, as frank and wholesome as the Sierra breezes, had stirred his volcanic, untamed heart to its very depths. When she had vanished from his sight, he realized that a crisis had come in his life, and that neither silver speculations nor any other questions could ever be of such importance to him as this new and all-absorbing one. The love which had sprung up in his heart was not the sudden, changeable fancy of a boy, but rather the wild, fierce passion of a man of strong will and imperious temper. He had been accustomed to succeed in all that he undertook. He swore in his heart that he would not fail in this if human effort and human perseverance could render him successful.
He called on John Ferrier that night, and many times again, until his face was a familiar one at the farm-house. John, cooped up in the valley, and absorbed in his work, had had little chance of learning the news of the outside world during the last twelve years. All this Jefferson Hope was able to tell him, and in a style which interested Lucy as well as her father. He had been a pioneer in California, and could narrate many a strange tale of fortunes made and fortunes lost in those wild, halcyon days. He had been a scout too, and a trapper, a silver explorer, and a ranchman. Wherever stirring adventures were to be had, Jefferson Hope had been there in search of them. He soon became a favourite with the old farmer, who spoke eloquently of his virtues. On such occasions, Lucy was silent, but her blushing cheek and her bright, happy eyes, showed only too clearly that her young heart was no longer her own. Her honest father may not have observed these symptoms, but they were assuredly not thrown away upon the man who had won her affections.
It was a summer evening when he came galloping down the road and pulled up at the gate. She was at the doorway, and came down to meet him. He threw the bridle over the fence and strode up the pathway.
“I am off, Lucy,” he said, taking her two hands in his, and gazing tenderly down into her face; “I won’t ask you to come with me now, but will you be ready to come when I am here again?”
“And when will that be?” she asked, blushing and laughing.
“A couple of months at the outside. I will come and claim you then, my darling. There’s no one who can stand between us.”
“And how about father?” she asked.
“He has given his consent, provided we get these mines working all right. I have no fear on that head.”
“Oh, well; of course, if you and father have arranged it all, there’s no more to be said,” she whispered, with her cheek against his broad breast.
“Thank God!” he said, hoarsely, stooping and kissing her. “It is settled, then. The longer I stay, the harder it will be to go. They are waiting for me at the cañon. Good-bye, my own darling--good-bye. In two months you shall see me.”
He tore himself from her as he spoke, and, flinging himself upon his horse, galloped furiously away, never even looking round, as though afraid that his resolution might fail him if he took one glance at what he was leaving. She stood at the gate, gazing after him until he vanished from her sight. Then she walked back into the house, the happiest girl in all Utah.
10. ジョン・フェリエ、預言者と語る
THREE weeks had passed since Jefferson Hope and his comrades had departed from Salt Lake City. John Ferrier’s heart was sore within him when he thought of the young man’s return, and of the impending loss of his adopted child. Yet her bright and happy face reconciled him to the arrangement more than any argument could have done. He had always determined, deep down in his resolute heart, that nothing would ever induce him to allow his daughter to wed a Mormon. Such a marriage he regarded as no marriage at all, but as a shame and a disgrace. Whatever he might think of the Mormon doctrines, upon that one point he was inflexible. He had to seal his mouth on the subject, however, for to express an unorthodox opinion was a dangerous matter in those days in the Land of the Saints.
Yes, a dangerous matter--so dangerous that even the most saintly dared only whisper their religious opinions with bated breath, lest something which fell from their lips might be misconstrued, and bring down a swift retribution upon them. The victims of persecution had now turned persecutors on their own account, and persecutors of the most terrible description. Not the Inquisition of Seville, nor the German Vehm-gericht, nor the Secret Societies of Italy, were ever able to put a more formidable machinery in motion than that which cast a cloud over the State of Utah.
Its invisibility, and the mystery which was attached to it, made this organization doubly terrible. It appeared to be omniscient and omnipotent, and yet was neither seen nor heard. The man who held out against the Church vanished away, and none knew whither he had gone or what had befallen him. His wife and his children awaited him at home, but no father ever returned to tell them how he had fared at the hands of his secret judges. A rash word or a hasty act was followed by annihilation, and yet none knew what the nature might be of this terrible power which was suspended over them. No wonder that men went about in fear and trembling, and that even in the heart of the wilderness they dared not whisper the doubts which oppressed them.
At first this vague and terrible power was exercised only upon the recalcitrants who, having embraced the Mormon faith, wished afterwards to pervert or to abandon it. Soon, however, it took a wider range. The supply of adult women was running short, and polygamy without a female population on which to draw was a barren doctrine indeed. Strange rumours began to be bandied about--rumours of murdered immigrants and rifled camps in regions where Indians had never been seen. Fresh women appeared in the harems of the Elders--women who pined and wept, and bore upon their faces the traces of an unextinguishable horror. Belated wanderers upon the mountains spoke of gangs of armed men, masked, stealthy, and noiseless, who flitted by them in the darkness. These tales and rumours took substance and shape, and were corroborated and re-corroborated, until they resolved themselves into a definite name. To this day, in the lonely ranches of the West, the name of the Danite Band, or the Avenging Angels, is a sinister and an ill-omened one.
Fuller knowledge of the organization which produced such terrible results served to increase rather than to lessen the horror which it inspired in the minds of men. None knew who belonged to this ruthless society. The names of the participators in the deeds of blood and violence done under the name of religion were kept profoundly secret. The very friend to whom you communicated your misgivings as to the Prophet and his mission, might be one of those who would come forth at night with fire and sword to exact a terrible reparation. Hence every man feared his neighbour, and none spoke of the things which were nearest his heart.
One fine morning, John Ferrier was about to set out to his wheatfields, when he heard the click of the latch, and, looking through the window, saw a stout, sandy-haired, middle-aged man coming up the pathway. His heart leapt to his mouth, for this was none other than the great Brigham Young himself. Full of trepidation--for he knew that such a visit boded him little good--Ferrier ran to the door to greet the Mormon chief. The latter, however, received his salutations coldly, and followed him with a stern face into the sitting-room.
“Brother Ferrier,” he said, taking a seat, and eyeing the farmer keenly from under his light-coloured eyelashes, “the true believers have been good friends to you. We picked you up when you were starving in the desert, we shared our food with you, led you safe to the Chosen Valley, gave you a goodly share of land, and allowed you to wax rich under our protection. Is not this so?”
“It is so,” answered John Ferrier.
“In return for all this we asked but one condition: that was, that you should embrace the true faith, and conform in every way to its usages. This you promised to do, and this, if common report says truly, you have neglected.”
“And how have I neglected it?” asked Ferrier, throwing out his hands in expostulation. “Have I not given to the common fund? Have I not attended at the Temple? Have I not----?”
“Where are your wives?” asked Young, looking round him. “Call them in, that I may greet them.”
“It is true that I have not married,” Ferrier answered. “But women were few, and there were many who had better claims than I. I was not a lonely man: I had my daughter to attend to my wants.”
“It is of that daughter that I would speak to you,” said the leader of the Mormons. “She has grown to be the flower of Utah, and has found favour in the eyes of many who are high in the land.”
John Ferrier groaned internally.
“There are stories of her which I would fain disbelieve--stories that she is sealed to some Gentile. This must be the gossip of idle tongues. What is the thirteenth rule in the code of the sainted Joseph Smith? ‘Let every maiden of the true faith marry one of the elect; for if she wed a Gentile, she commits a grievous sin.’ This being so, it is impossible that you, who profess the holy creed, should suffer your daughter to violate it.”
John Ferrier made no answer, but he played nervously with his riding-whip.
“Upon this one point your whole faith shall be tested--so it has been decided in the Sacred Council of Four. The girl is young, and we would not have her wed grey hairs, neither would we deprive her of all choice. We Elders have many heifers, [29] but our children must also be provided. Stangerson has a son, and Drebber has a son, and either of them would gladly welcome your daughter to their house. Let her choose between them. They are young and rich, and of the true faith. What say you to that?”
Ferrier remained silent for some little time with his brows knitted.
“You will give us time,” he said at last. “My daughter is very young--she is scarce of an age to marry.”
“She shall have a month to choose,” said Young, rising from his seat. “At the end of that time she shall give her answer.”
He was passing through the door, when he turned, with flushed face and flashing eyes. “It were better for you, John Ferrier,” he thundered, “that you and she were now lying blanched skeletons upon the Sierra Blanco, than that you should put your weak wills against the orders of the Holy Four!”
With a threatening gesture of his hand, he turned from the door, and Ferrier heard his heavy step scrunching along the shingly path.
He was still sitting with his elbows upon his knees, considering how he should broach the matter to his daughter when a soft hand was laid upon his, and looking up, he saw her standing beside him. One glance at her pale, frightened face showed him that she had heard what had passed.
“I could not help it,” she said, in answer to his look. “His voice rang through the house. Oh, father, father, what shall we do?”
“Don’t you scare yourself,” he answered, drawing her to him, and passing his broad, rough hand caressingly over her chestnut hair. “We’ll fix it up somehow or another. You don’t find your fancy kind o’ lessening for this chap, do you?”
A sob and a squeeze of his hand was her only answer.
“No; of course not. I shouldn’t care to hear you say you did. He’s a likely lad, and he’s a Christian, which is more than these folk here, in spite o’ all their praying and preaching. There’s a party starting for Nevada to-morrow, and I’ll manage to send him a message letting him know the hole we are in. If I know anything o’ that young man, he’ll be back here with a speed that would whip electro-telegraphs.”
Lucy laughed through her tears at her father’s description.
“When he comes, he will advise us for the best. But it is for you that I am frightened, dear. One hears--one hears such dreadful stories about those who oppose the Prophet: something terrible always happens to them.”
“But we haven’t opposed him yet,” her father answered. “It will be time to look out for squalls when we do. We have a clear month before us; at the end of that, I guess we had best shin out of Utah.”
“Leave Utah!”
“That’s about the size of it.”
“But the farm?”
“We will raise as much as we can in money, and let the rest go. To tell the truth, Lucy, it isn’t the first time I have thought of doing it. I don’t care about knuckling under to any man, as these folk do to their darned prophet. I’m a free-born American, and it’s all new to me. Guess I’m too old to learn. If he comes browsing about this farm, he might chance to run up against a charge of buckshot travelling in the opposite direction.”
“But they won’t let us leave,” his daughter objected.
“Wait till Jefferson comes, and we’ll soon manage that. In the meantime, don’t you fret yourself, my dearie, and don’t get your eyes swelled up, else he’ll be walking into me when he sees you. There’s nothing to be afeared about, and there’s no danger at all.”
John Ferrier uttered these consoling remarks in a very confident tone, but she could not help observing that he paid unusual care to the fastening of the doors that night, and that he carefully cleaned and loaded the rusty old shotgun which hung upon the wall of his bedroom.
11. 人生を賭けたフライト
ON the morning which followed his interview with the Mormon Prophet, John Ferrier went in to Salt Lake City, and having found his acquaintance, who was bound for the Nevada Mountains, he entrusted him with his message to Jefferson Hope. In it he told the young man of the imminent danger which threatened them, and how necessary it was that he should return. Having done thus he felt easier in his mind, and returned home with a lighter heart.
As he approached his farm, he was surprised to see a horse hitched to each of the posts of the gate. Still more surprised was he on entering to find two young men in possession of his sitting-room. One, with a long pale face, was leaning back in the rocking-chair, with his feet cocked up upon the stove. The other, a bull-necked youth with coarse bloated features, was standing in front of the window with his hands in his pocket, whistling a popular hymn. Both of them nodded to Ferrier as he entered, and the one in the rocking-chair commenced the conversation.
“Maybe you don’t know us,” he said. “This here is the son of Elder Drebber, and I’m Joseph Stangerson, who travelled with you in the desert when the Lord stretched out His hand and gathered you into the true fold.”
“As He will all the nations in His own good time,” said the other in a nasal voice; “He grindeth slowly but exceeding small.”
John Ferrier bowed coldly. He had guessed who his visitors were.
“We have come,” continued Stangerson, “at the advice of our fathers to solicit the hand of your daughter for whichever of us may seem good to you and to her. As I have but four wives and Brother Drebber here has seven, it appears to me that my claim is the stronger one.”
“Nay, nay, Brother Stangerson,” cried the other; “the question is not how many wives we have, but how many we can keep. My father has now given over his mills to me, and I am the richer man.”
“But my prospects are better,” said the other, warmly. “When the Lord removes my father, I shall have his tanning yard and his leather factory. Then I am your elder, and am higher in the Church.”
“It will be for the maiden to decide,” rejoined young Drebber, smirking at his own reflection in the glass. “We will leave it all to her decision.”
During this dialogue, John Ferrier had stood fuming in the doorway, hardly able to keep his riding-whip from the backs of his two visitors.
“Look here,” he said at last, striding up to them, “when my daughter summons you, you can come, but until then I don’t want to see your faces again.”
The two young Mormons stared at him in amazement. In their eyes this competition between them for the maiden’s hand was the highest of honours both to her and her father.
“There are two ways out of the room,” cried Ferrier; “there is the door, and there is the window. Which do you care to use?”
His brown face looked so savage, and his gaunt hands so threatening, that his visitors sprang to their feet and beat a hurried retreat. The old farmer followed them to the door.
“Let me know when you have settled which it is to be,” he said, sardonically.
“You shall smart for this!” Stangerson cried, white with rage. “You have defied the Prophet and the Council of Four. You shall rue it to the end of your days.”
“The hand of the Lord shall be heavy upon you,” cried young Drebber; “He will arise and smite you!”
“Then I’ll start the smiting,” exclaimed Ferrier furiously, and would have rushed upstairs for his gun had not Lucy seized him by the arm and restrained him. Before he could escape from her, the clatter of horses’ hoofs told him that they were beyond his reach.
“The young canting rascals!” he exclaimed, wiping the perspiration from his forehead; “I would sooner see you in your grave, my girl, than the wife of either of them.”
“And so should I, father,” she answered, with spirit; “but Jefferson will soon be here.”
“Yes. It will not be long before he comes. The sooner the better, for we do not know what their next move may be.”
It was, indeed, high time that someone capable of giving advice and help should come to the aid of the sturdy old farmer and his adopted daughter. In the whole history of the settlement there had never been such a case of rank disobedience to the authority of the Elders. If minor errors were punished so sternly, what would be the fate of this arch rebel. Ferrier knew that his wealth and position would be of no avail to him. Others as well known and as rich as himself had been spirited away before now, and their goods given over to the Church. He was a brave man, but he trembled at the vague, shadowy terrors which hung over him. Any known danger he could face with a firm lip, but this suspense was unnerving. He concealed his fears from his daughter, however, and affected to make light of the whole matter, though she, with the keen eye of love, saw plainly that he was ill at ease.
He expected that he would receive some message or remonstrance from Young as to his conduct, and he was not mistaken, though it came in an unlooked-for manner. Upon rising next morning he found, to his surprise, a small square of paper pinned on to the coverlet of his bed just over his chest. On it was printed, in bold straggling letters:--
“Twenty-nine days are given you for amendment, and then----”
The dash was more fear-inspiring than any threat could have been. How this warning came into his room puzzled John Ferrier sorely, for his servants slept in an outhouse, and the doors and windows had all been secured. He crumpled the paper up and said nothing to his daughter, but the incident struck a chill into his heart. The twenty-nine days were evidently the balance of the month which Young had promised. What strength or courage could avail against an enemy armed with such mysterious powers? The hand which fastened that pin might have struck him to the heart, and he could never have known who had slain him.
Still more shaken was he next morning. They had sat down to their breakfast when Lucy with a cry of surprise pointed upwards. In the centre of the ceiling was scrawled, with a burned stick apparently, the number 28. To his daughter it was unintelligible, and he did not enlighten her. That night he sat up with his gun and kept watch and ward. He saw and he heard nothing, and yet in the morning a great 27 had been painted upon the outside of his door.
Thus day followed day; and as sure as morning came he found that his unseen enemies had kept their register, and had marked up in some conspicuous position how many days were still left to him out of the month of grace. Sometimes the fatal numbers appeared upon the walls, sometimes upon the floors, occasionally they were on small placards stuck upon the garden gate or the railings. With all his vigilance John Ferrier could not discover whence these daily warnings proceeded. A horror which was almost superstitious came upon him at the sight of them. He became haggard and restless, and his eyes had the troubled look of some hunted creature. He had but one hope in life now, and that was for the arrival of the young hunter from Nevada.
Twenty had changed to fifteen and fifteen to ten, but there was no news of the absentee. One by one the numbers dwindled down, and still there came no sign of him. Whenever a horseman clattered down the road, or a driver shouted at his team, the old farmer hurried to the gate thinking that help had arrived at last. At last, when he saw five give way to four and that again to three, he lost heart, and abandoned all hope of escape. Single-handed, and with his limited knowledge of the mountains which surrounded the settlement, he knew that he was powerless. The more-frequented roads were strictly watched and guarded, and none could pass along them without an order from the Council. Turn which way he would, there appeared to be no avoiding the blow which hung over him. Yet the old man never wavered in his resolution to part with life itself before he consented to what he regarded as his daughter’s dishonour.
He was sitting alone one evening pondering deeply over his troubles, and searching vainly for some way out of them. That morning had shown the figure 2 upon the wall of his house, and the next day would be the last of the allotted time. What was to happen then? All manner of vague and terrible fancies filled his imagination. And his daughter--what was to become of her after he was gone? Was there no escape from the invisible network which was drawn all round them. He sank his head upon the table and sobbed at the thought of his own impotence.
What was that? In the silence he heard a gentle scratching sound--low, but very distinct in the quiet of the night. It came from the door of the house. Ferrier crept into the hall and listened intently. There was a pause for a few moments, and then the low insidious sound was repeated. Someone was evidently tapping very gently upon one of the panels of the door. Was it some midnight assassin who had come to carry out the murderous orders of the secret tribunal? Or was it some agent who was marking up that the last day of grace had arrived. John Ferrier felt that instant death would be better than the suspense which shook his nerves and chilled his heart. Springing forward he drew the bolt and threw the door open.
Outside all was calm and quiet. The night was fine, and the stars were twinkling brightly overhead. The little front garden lay before the farmer’s eyes bounded by the fence and gate, but neither there nor on the road was any human being to be seen. With a sigh of relief, Ferrier looked to right and to left, until happening to glance straight down at his own feet he saw to his astonishment a man lying flat upon his face upon the ground, with arms and legs all asprawl.
So unnerved was he at the sight that he leaned up against the wall with his hand to his throat to stifle his inclination to call out. His first thought was that the prostrate figure was that of some wounded or dying man, but as he watched it he saw it writhe along the ground and into the hall with the rapidity and noiselessness of a serpent. Once within the house the man sprang to his feet, closed the door, and revealed to the astonished farmer the fierce face and resolute expression of Jefferson Hope.
“Good God!” gasped John Ferrier. “How you scared me! Whatever made you come in like that.”
“Give me food,” the other said, hoarsely. “I have had no time for bite or sup for eight-and-forty hours.” He flung himself upon the [21] cold meat and bread which were still lying upon the table from his host’s supper, and devoured it voraciously. “Does Lucy bear up well?” he asked, when he had satisfied his hunger.
“Yes. She does not know the danger,” her father answered.
“That is well. The house is watched on every side. That is why I crawled my way up to it. They may be darned sharp, but they’re not quite sharp enough to catch a Washoe hunter.”
John Ferrier felt a different man now that he realized that he had a devoted ally. He seized the young man’s leathery hand and wrung it cordially. “You’re a man to be proud of,” he said. “There are not many who would come to share our danger and our troubles.”
“You’ve hit it there, pard,” the young hunter answered. “I have a respect for you, but if you were alone in this business I’d think twice before I put my head into such a hornet’s nest. It’s Lucy that brings me here, and before harm comes on her I guess there will be one less o’ the Hope family in Utah.”
“What are we to do?”
“To-morrow is your last day, and unless you act to-night you are lost. I have a mule and two horses waiting in the Eagle Ravine. How much money have you?”
“Two thousand dollars in gold, and five in notes.”
“That will do. I have as much more to add to it. We must push for Carson City through the mountains. You had best wake Lucy. It is as well that the servants do not sleep in the house.”
While Ferrier was absent, preparing his daughter for the approaching journey, Jefferson Hope packed all the eatables that he could find into a small parcel, and filled a stoneware jar with water, for he knew by experience that the mountain wells were few and far between. He had hardly completed his arrangements before the farmer returned with his daughter all dressed and ready for a start. The greeting between the lovers was warm, but brief, for minutes were precious, and there was much to be done.
“We must make our start at once,” said Jefferson Hope, speaking in a low but resolute voice, like one who realizes the greatness of the peril, but has steeled his heart to meet it. “The front and back entrances are watched, but with caution we may get away through the side window and across the fields. Once on the road we are only two miles from the Ravine where the horses are waiting. By daybreak we should be half-way through the mountains.”
“What if we are stopped,” asked Ferrier.
Hope slapped the revolver butt which protruded from the front of his tunic. “If they are too many for us we shall take two or three of them with us,” he said with a sinister smile.
The lights inside the house had all been extinguished, and from the darkened window Ferrier peered over the fields which had been his own, and which he was now about to abandon for ever. He had long nerved himself to the sacrifice, however, and the thought of the honour and happiness of his daughter outweighed any regret at his ruined fortunes. All looked so peaceful and happy, the rustling trees and the broad silent stretch of grain-land, that it was difficult to realize that the spirit of murder lurked through it all. Yet the white face and set expression of the young hunter showed that in his approach to the house he had seen enough to satisfy him upon that head.
Ferrier carried the bag of gold and notes, Jefferson Hope had the scanty provisions and water, while Lucy had a small bundle containing a few of her more valued possessions. Opening the window very slowly and carefully, they waited until a dark cloud had somewhat obscured the night, and then one by one passed through into the little garden. With bated breath and crouching figures they stumbled across it, and gained the shelter of the hedge, which they skirted until they came to the gap which opened into the cornfields. They had just reached this point when the young man seized his two companions and dragged them down into the shadow, where they lay silent and trembling.
It was as well that his prairie training had given Jefferson Hope the ears of a lynx. He and his friends had hardly crouched down before the melancholy hooting of a mountain owl was heard within a few yards of them, which was immediately answered by another hoot at a small distance. At the same moment a vague shadowy figure emerged from the gap for which they had been making, and uttered the plaintive signal cry again, on which a second man appeared out of the obscurity.
“To-morrow at midnight,” said the first who appeared to be in authority. “When the Whip-poor-Will calls three times.”
“It is well,” returned the other. “Shall I tell Brother Drebber?”
“Pass it on to him, and from him to the others. Nine to seven!”
“Seven to five!” repeated the other, and the two figures flitted away in different directions. Their concluding words had evidently been some form of sign and countersign. The instant that their footsteps had died away in the distance, Jefferson Hope sprang to his feet, and helping his companions through the gap, led the way across the fields at the top of his speed, supporting and half-carrying the girl when her strength appeared to fail her.
“Hurry on! hurry on!” he gasped from time to time. “We are through the line of sentinels. Everything depends on speed. Hurry on!”
Once on the high road they made rapid progress. Only once did they meet anyone, and then they managed to slip into a field, and so avoid recognition. Before reaching the town the hunter branched away into a rugged and narrow footpath which led to the mountains. Two dark jagged peaks loomed above them through the darkness, and the defile which led between them was the Eagle Cañon in which the horses were awaiting them. With unerring instinct Jefferson Hope picked his way among the great boulders and along the bed of a dried-up watercourse, until he came to the retired corner, screened with rocks, where the faithful animals had been picketed. The girl was placed upon the mule, and old Ferrier upon one of the horses, with his money-bag, while Jefferson Hope led the other along the precipitous and dangerous path.
It was a bewildering route for anyone who was not accustomed to face Nature in her wildest moods. On the one side a great crag towered up a thousand feet or more, black, stern, and menacing, with long basaltic columns upon its rugged surface like the ribs of some petrified monster. On the other hand a wild chaos of boulders and debris made all advance impossible. Between the two ran the irregular track, so narrow in places that they had to travel in Indian file, and so rough that only practised riders could have traversed it at all. Yet in spite of all dangers and difficulties, the hearts of the fugitives were light within them, for every step increased the distance between them and the terrible despotism from which they were flying.
They soon had a proof, however, that they were still within the jurisdiction of the Saints. They had reached the very wildest and most desolate portion of the pass when the girl gave a startled cry, and pointed upwards. On a rock which overlooked the track, showing out dark and plain against the sky, there stood a solitary sentinel. He saw them as soon as they perceived him, and his military challenge of “Who goes there?” rang through the silent ravine.
“Travellers for Nevada,” said Jefferson Hope, with his hand upon the rifle which hung by his saddle.
They could see the lonely watcher fingering his gun, and peering down at them as if dissatisfied at their reply.
“By whose permission?” he asked.
“The Holy Four,” answered Ferrier. His Mormon experiences had taught him that that was the highest authority to which he could refer.
“Nine from seven,” cried the sentinel.
“Seven from five,” returned Jefferson Hope promptly, remembering the countersign which he had heard in the garden.
“Pass, and the Lord go with you,” said the voice from above. Beyond his post the path broadened out, and the horses were able to break into a trot. Looking back, they could see the solitary watcher leaning upon his gun, and knew that they had passed the outlying post of the chosen people, and that freedom lay before them.
12. 復讐の天使
ALL night their course lay through intricate defiles and over irregular and rock-strewn paths. More than once they lost their way, but Hope’s intimate knowledge of the mountains enabled them to regain the track once more. When morning broke, a scene of marvellous though savage beauty lay before them. In every direction the great snow-capped peaks hemmed them in, peeping over each other’s shoulders to the far horizon. So steep were the rocky banks on either side of them, that the larch and the pine seemed to be suspended over their heads, and to need only a gust of wind to come hurtling down upon them. Nor was the fear entirely an illusion, for the barren valley was thickly strewn with trees and boulders which had fallen in a similar manner. Even as they passed, a great rock came thundering down with a hoarse rattle which woke the echoes in the silent gorges, and startled the weary horses into a gallop.
As the sun rose slowly above the eastern horizon, the caps of the great mountains lit up one after the other, like lamps at a festival, until they were all ruddy and glowing. The magnificent spectacle cheered the hearts of the three fugitives and gave them fresh energy. At a wild torrent which swept out of a ravine they called a halt and watered their horses, while they partook of a hasty breakfast. Lucy and her father would fain have rested longer, but Jefferson Hope was inexorable. “They will be upon our track by this time,” he said. “Everything depends upon our speed. Once safe in Carson we may rest for the remainder of our lives.”
During the whole of that day they struggled on through the defiles, and by evening they calculated that they were more than thirty miles from their enemies. At night-time they chose the base of a beetling crag, where the rocks offered some protection from the chill wind, and there huddled together for warmth, they enjoyed a few hours’ sleep. Before daybreak, however, they were up and on their way once more. They had seen no signs of any pursuers, and Jefferson Hope began to think that they were fairly out of the reach of the terrible organization whose enmity they had incurred. He little knew how far that iron grasp could reach, or how soon it was to close upon them and crush them.
About the middle of the second day of their flight their scanty store of provisions began to run out. This gave the hunter little uneasiness, however, for there was game to be had among the mountains, and he had frequently before had to depend upon his rifle for the needs of life. Choosing a sheltered nook, he piled together a few dried branches and made a blazing fire, at which his companions might warm themselves, for they were now nearly five thousand feet above the sea level, and the air was bitter and keen. Having tethered the horses, and bade Lucy adieu, he threw his gun over his shoulder, and set out in search of whatever chance might throw in his way. Looking back he saw the old man and the young girl crouching over the blazing fire, while the three animals stood motionless in the back-ground. Then the intervening rocks hid them from his view.
He walked for a couple of miles through one ravine after another without success, though from the marks upon the bark of the trees, and other indications, he judged that there were numerous bears in the vicinity. At last, after two or three hours’ fruitless search, he was thinking of turning back in despair, when casting his eyes upwards he saw a sight which sent a thrill of pleasure through his heart. On the edge of a jutting pinnacle, three or four hundred feet above him, there stood a creature somewhat resembling a sheep in appearance, but armed with a pair of gigantic horns. The big-horn--for so it is called--was acting, probably, as a guardian over a flock which were invisible to the hunter; but fortunately it was heading in the opposite direction, and had not perceived him. Lying on his face, he rested his rifle upon a rock, and took a long and steady aim before drawing the trigger. The animal sprang into the air, tottered for a moment upon the edge of the precipice, and then came crashing down into the valley beneath.
The creature was too unwieldy to lift, so the hunter contented himself with cutting away one haunch and part of the flank. With this trophy over his shoulder, he hastened to retrace his steps, for the evening was already drawing in. He had hardly started, however, before he realized the difficulty which faced him. In his eagerness he had wandered far past the ravines which were known to him, and it was no easy matter to pick out the path which he had taken. The valley in which he found himself divided and sub-divided into many gorges, which were so like each other that it was impossible to distinguish one from the other. He followed one for a mile or more until he came to a mountain torrent which he was sure that he had never seen before. Convinced that he had taken the wrong turn, he tried another, but with the same result. Night was coming on rapidly, and it was almost dark before he at last found himself in a defile which was familiar to him. Even then it was no easy matter to keep to the right track, for the moon had not yet risen, and the high cliffs on either side made the obscurity more profound. Weighed down with his burden, and weary from his exertions, he stumbled along, keeping up his heart by the reflection that every step brought him nearer to Lucy, and that he carried with him enough to ensure them food for the remainder of their journey.
He had now come to the mouth of the very defile in which he had left them. Even in the darkness he could recognize the outline of the cliffs which bounded it. They must, he reflected, be awaiting him anxiously, for he had been absent nearly five hours. In the gladness of his heart he put his hands to his mouth and made the glen re-echo to a loud halloo as a signal that he was coming. He paused and listened for an answer. None came save his own cry, which clattered up the dreary silent ravines, and was borne back to his ears in countless repetitions. Again he shouted, even louder than before, and again no whisper came back from the friends whom he had left such a short time ago. A vague, nameless dread came over him, and he hurried onwards frantically, dropping the precious food in his agitation.
When he turned the corner, he came full in sight of the spot where the fire had been lit. There was still a glowing pile of wood ashes there, but it had evidently not been tended since his departure. The same dead silence still reigned all round. With his fears all changed to convictions, he hurried on. There was no living creature near the remains of the fire: animals, man, maiden, all were gone. It was only too clear that some sudden and terrible disaster had occurred during his absence--a disaster which had embraced them all, and yet had left no traces behind it.
Bewildered and stunned by this blow, Jefferson Hope felt his head spin round, and had to lean upon his rifle to save himself from falling. He was essentially a man of action, however, and speedily recovered from his temporary impotence. Seizing a half-consumed piece of wood from the smouldering fire, he blew it into a flame, and proceeded with its help to examine the little camp. The ground was all stamped down by the feet of horses, showing that a large party of mounted men had overtaken the fugitives, and the direction of their tracks proved that they had afterwards turned back to Salt Lake City. Had they carried back both of his companions with them? Jefferson Hope had almost persuaded himself that they must have done so, when his eye fell upon an object which made every nerve of his body tingle within him. A little way on one side of the camp was a low-lying heap of reddish soil, which had assuredly not been there before. There was no mistaking it for anything but a newly-dug grave. As the young hunter approached it, he perceived that a stick had been planted on it, with a sheet of paper stuck in the cleft fork of it. The inscription upon the paper was brief, but to the point:
JOHN FERRIER,
FORMERLY OF SALT LAKE CITY, [22]
Died August 4th, 1860.
The sturdy old man, whom he had left so short a time before, was gone, then, and this was all his epitaph. Jefferson Hope looked wildly round to see if there was a second grave, but there was no sign of one. Lucy had been carried back by their terrible pursuers to fulfil her original destiny, by becoming one of the harem of the Elder’s son. As the young fellow realized the certainty of her fate, and his own powerlessness to prevent it, he wished that he, too, was lying with the old farmer in his last silent resting-place.
Again, however, his active spirit shook off the lethargy which springs from despair. If there was nothing else left to him, he could at least devote his life to revenge. With indomitable patience and perseverance, Jefferson Hope possessed also a power of sustained vindictiveness, which he may have learned from the Indians amongst whom he had lived. As he stood by the desolate fire, he felt that the only one thing which could assuage his grief would be thorough and complete retribution, brought by his own hand upon his enemies. His strong will and untiring energy should, he determined, be devoted to that one end. With a grim, white face, he retraced his steps to where he had dropped the food, and having stirred up the smouldering fire, he cooked enough to last him for a few days. This he made up into a bundle, and, tired as he was, he set himself to walk back through the mountains upon the track of the avenging angels.
For five days he toiled footsore and weary through the defiles which he had already traversed on horseback. At night he flung himself down among the rocks, and snatched a few hours of sleep; but before daybreak he was always well on his way. On the sixth day, he reached the Eagle Cañon, from which they had commenced their ill-fated flight. Thence he could look down upon the home of the saints. Worn and exhausted, he leaned upon his rifle and shook his gaunt hand fiercely at the silent widespread city beneath him. As he looked at it, he observed that there were flags in some of the principal streets, and other signs of festivity. He was still speculating as to what this might mean when he heard the clatter of horse’s hoofs, and saw a mounted man riding towards him. As he approached, he recognized him as a Mormon named Cowper, to whom he had rendered services at different times. He therefore accosted him when he got up to him, with the object of finding out what Lucy Ferrier’s fate had been.
“I am Jefferson Hope,” he said. “You remember me.”
The Mormon looked at him with undisguised astonishment--indeed, it was difficult to recognize in this tattered, unkempt wanderer, with ghastly white face and fierce, wild eyes, the spruce young hunter of former days. Having, however, at last, satisfied himself as to his identity, the man’s surprise changed to consternation.
“You are mad to come here,” he cried. “It is as much as my own life is worth to be seen talking with you. There is a warrant against you from the Holy Four for assisting the Ferriers away.”
“I don’t fear them, or their warrant,” Hope said, earnestly. “You must know something of this matter, Cowper. I conjure you by everything you hold dear to answer a few questions. We have always been friends. For God’s sake, don’t refuse to answer me.”
“What is it?” the Mormon asked uneasily. “Be quick. The very rocks have ears and the trees eyes.”
“What has become of Lucy Ferrier?”
“She was married yesterday to young Drebber. Hold up, man, hold up, you have no life left in you.”
“Don’t mind me,” said Hope faintly. He was white to the very lips, and had sunk down on the stone against which he had been leaning. “Married, you say?”
“Married yesterday--that’s what those flags are for on the Endowment House. There was some words between young Drebber and young Stangerson as to which was to have her. They’d both been in the party that followed them, and Stangerson had shot her father, which seemed to give him the best claim; but when they argued it out in council, Drebber’s party was the stronger, so the Prophet gave her over to him. No one won’t have her very long though, for I saw death in her face yesterday. She is more like a ghost than a woman. Are you off, then?”
“Yes, I am off,” said Jefferson Hope, who had risen from his seat. His face might have been chiselled out of marble, so hard and set was its expression, while its eyes glowed with a baleful light.
“Where are you going?”
“Never mind,” he answered; and, slinging his weapon over his shoulder, strode off down the gorge and so away into the heart of the mountains to the haunts of the wild beasts. Amongst them all there was none so fierce and so dangerous as himself.
The prediction of the Mormon was only too well fulfilled. Whether it was the terrible death of her father or the effects of the hateful marriage into which she had been forced, poor Lucy never held up her head again, but pined away and died within a month. Her sottish husband, who had married her principally for the sake of John Ferrier’s property, did not affect any great grief at his bereavement; but his other wives mourned over her, and sat up with her the night before the burial, as is the Mormon custom. They were grouped round the bier in the early hours of the morning, when, to their inexpressible fear and astonishment, the door was flung open, and a savage-looking, weather-beaten man in tattered garments strode into the room. Without a glance or a word to the cowering women, he walked up to the white silent figure which had once contained the pure soul of Lucy Ferrier. Stooping over her, he pressed his lips reverently to her cold forehead, and then, snatching up her hand, he took the wedding-ring from her finger. “She shall not be buried in that,” he cried with a fierce snarl, and before an alarm could be raised sprang down the stairs and was gone. So strange and so brief was the episode, that the watchers might have found it hard to believe it themselves or persuade other people of it, had it not been for the undeniable fact that the circlet of gold which marked her as having been a bride had disappeared.
For some months Jefferson Hope lingered among the mountains, leading a strange wild life, and nursing in his heart the fierce desire for vengeance which possessed him. Tales were told in the City of the weird figure which was seen prowling about the suburbs, and which haunted the lonely mountain gorges. Once a bullet whistled through Stangerson’s window and flattened itself upon the wall within a foot of him. On another occasion, as Drebber passed under a cliff a great boulder crashed down on him, and he only escaped a terrible death by throwing himself upon his face. The two young Mormons were not long in discovering the reason of these attempts upon their lives, and led repeated expeditions into the mountains in the hope of capturing or killing their enemy, but always without success. Then they adopted the precaution of never going out alone or after nightfall, and of having their houses guarded. After a time they were able to relax these measures, for nothing was either heard or seen of their opponent, and they hoped that time had cooled his vindictiveness.
Far from doing so, it had, if anything, augmented it. The hunter’s mind was of a hard, unyielding nature, and the predominant idea of revenge had taken such complete possession of it that there was no room for any other emotion. He was, however, above all things practical. He soon realized that even his iron constitution could not stand the incessant strain which he was putting upon it. Exposure and want of wholesome food were wearing him out. If he died like a dog among the mountains, what was to become of his revenge then? And yet such a death was sure to overtake him if he persisted. He felt that that was to play his enemy’s game, so he reluctantly returned to the old Nevada mines, there to recruit his health and to amass money enough to allow him to pursue his object without privation.
His intention had been to be absent a year at the most, but a combination of unforeseen circumstances prevented his leaving the mines for nearly five. At the end of that time, however, his memory of his wrongs and his craving for revenge were quite as keen as on that memorable night when he had stood by John Ferrier’s grave. Disguised, and under an assumed name, he returned to Salt Lake City, careless what became of his own life, as long as he obtained what he knew to be justice. There he found evil tidings awaiting him. There had been a schism among the Chosen People a few months before, some of the younger members of the Church having rebelled against the authority of the Elders, and the result had been the secession of a certain number of the malcontents, who had left Utah and become Gentiles. Among these had been Drebber and Stangerson; and no one knew whither they had gone. Rumour reported that Drebber had managed to convert a large part of his property into money, and that he had departed a wealthy man, while his companion, Stangerson, was comparatively poor. There was no clue at all, however, as to their whereabouts.
Many a man, however vindictive, would have abandoned all thought of revenge in the face of such a difficulty, but Jefferson Hope never faltered for a moment. With the small competence he possessed, eked out by such employment as he could pick up, he travelled from town to town through the United States in quest of his enemies. Year passed into year, his black hair turned grizzled, but still he wandered on, a human bloodhound, with his mind wholly set upon the one object upon which he had devoted his life. At last his perseverance was rewarded. It was but a glance of a face in a window, but that one glance told him that Cleveland in Ohio possessed the men whom he was in pursuit of. He returned to his miserable lodgings with his plan of vengeance all arranged. It chanced, however, that Drebber, looking from his window, had recognized the vagrant in the street, and had read murder in his eyes. He hurried before a justice of the peace, accompanied by Stangerson, who had become his private secretary, and represented to him that they were in danger of their lives from the jealousy and hatred of an old rival. That evening Jefferson Hope was taken into custody, and not being able to find sureties, was detained for some weeks. When at last he was liberated, it was only to find that Drebber’s house was deserted, and that he and his secretary had departed for Europe.
Again the avenger had been foiled, and again his concentrated hatred urged him to continue the pursuit. Funds were wanting, however, and for some time he had to return to work, saving every dollar for his approaching journey. At last, having collected enough to keep life in him, he departed for Europe, and tracked his enemies from city to city, working his way in any menial capacity, but never overtaking the fugitives. When he reached St. Petersburg they had departed for Paris; and when he followed them there he learned that they had just set off for Copenhagen. At the Danish capital he was again a few days late, for they had journeyed on to London, where he at last succeeded in running them to earth. As to what occurred there, we cannot do better than quote the old hunter’s own account, as duly recorded in Dr. Watson’s Journal, to which we are already under such obligations.
13. ジョン・ワトソン医学博士の回想録の続き
OUR prisoner’s furious resistance did not apparently indicate any ferocity in his disposition towards ourselves, for on finding himself powerless, he smiled in an affable manner, and expressed his hopes that he had not hurt any of us in the scuffle. “I guess you’re going to take me to the police-station,” he remarked to Sherlock Holmes. “My cab’s at the door. If you’ll loose my legs I’ll walk down to it. I’m not so light to lift as I used to be.”
Gregson and Lestrade exchanged glances as if they thought this proposition rather a bold one; but Holmes at once took the prisoner at his word, and loosened the towel which we had bound round his ancles. [23] He rose and stretched his legs, as though to assure himself that they were free once more. I remember that I thought to myself, as I eyed him, that I had seldom seen a more powerfully built man; and his dark sunburned face bore an expression of determination and energy which was as formidable as his personal strength.
“If there’s a vacant place for a chief of the police, I reckon you are the man for it,” he said, gazing with undisguised admiration at my fellow-lodger. “The way you kept on my trail was a caution.”
“You had better come with me,” said Holmes to the two detectives.
“I can drive you,” said Lestrade.
“Good! and Gregson can come inside with me. You too, Doctor, you have taken an interest in the case and may as well stick to us.”
I assented gladly, and we all descended together. Our prisoner made no attempt at escape, but stepped calmly into the cab which had been his, and we followed him. Lestrade mounted the box, whipped up the horse, and brought us in a very short time to our destination. We were ushered into a small chamber where a police Inspector noted down our prisoner’s name and the names of the men with whose murder he had been charged. The official was a white-faced unemotional man, who went through his duties in a dull mechanical way. “The prisoner will be put before the magistrates in the course of the week,” he said; “in the mean time, Mr. Jefferson Hope, have you anything that you wish to say? I must warn you that your words will be taken down, and may be used against you.”
“I’ve got a good deal to say,” our prisoner said slowly. “I want to tell you gentlemen all about it.”
“Hadn’t you better reserve that for your trial?” asked the Inspector.
“I may never be tried,” he answered. “You needn’t look startled. It isn’t suicide I am thinking of. Are you a Doctor?” He turned his fierce dark eyes upon me as he asked this last question.
“Yes; I am,” I answered.
“Then put your hand here,” he said, with a smile, motioning with his manacled wrists towards his chest.
I did so; and became at once conscious of an extraordinary throbbing and commotion which was going on inside. The walls of his chest seemed to thrill and quiver as a frail building would do inside when some powerful engine was at work. In the silence of the room I could hear a dull humming and buzzing noise which proceeded from the same source.
“Why,” I cried, “you have an aortic aneurism!”
“That’s what they call it,” he said, placidly. “I went to a Doctor last week about it, and he told me that it is bound to burst before many days passed. It has been getting worse for years. I got it from over-exposure and under-feeding among the Salt Lake Mountains. I’ve done my work now, and I don’t care how soon I go, but I should like to leave some account of the business behind me. I don’t want to be remembered as a common cut-throat.”
The Inspector and the two detectives had a hurried discussion as to the advisability of allowing him to tell his story.
“Do you consider, Doctor, that there is immediate danger?” the former asked, [24]
“Most certainly there is,” I answered.
“In that case it is clearly our duty, in the interests of justice, to take his statement,” said the Inspector. “You are at liberty, sir, to give your account, which I again warn you will be taken down.”
“I’ll sit down, with your leave,” the prisoner said, suiting the action to the word. “This aneurism of mine makes me easily tired, and the tussle we had half an hour ago has not mended matters. I’m on the brink of the grave, and I am not likely to lie to you. Every word I say is the absolute truth, and how you use it is a matter of no consequence to me.”
With these words, Jefferson Hope leaned back in his chair and began the following remarkable statement. He spoke in a calm and methodical manner, as though the events which he narrated were commonplace enough. I can vouch for the accuracy of the subjoined account, for I have had access to Lestrade’s note-book, in which the prisoner’s words were taken down exactly as they were uttered.
“It don’t much matter to you why I hated these men,” he said; “it’s enough that they were guilty of the death of two human beings--a father and a daughter--and that they had, therefore, forfeited their own lives. After the lapse of time that has passed since their crime, it was impossible for me to secure a conviction against them in any court. I knew of their guilt though, and I determined that I should be judge, jury, and executioner all rolled into one. You’d have done the same, if you have any manhood in you, if you had been in my place.
“That girl that I spoke of was to have married me twenty years ago. She was forced into marrying that same Drebber, and broke her heart over it. I took the marriage ring from her dead finger, and I vowed that his dying eyes should rest upon that very ring, and that his last thoughts should be of the crime for which he was punished. I have carried it about with me, and have followed him and his accomplice over two continents until I caught them. They thought to tire me out, but they could not do it. If I die to-morrow, as is likely enough, I die knowing that my work in this world is done, and well done. They have perished, and by my hand. There is nothing left for me to hope for, or to desire.
“They were rich and I was poor, so that it was no easy matter for me to follow them. When I got to London my pocket was about empty, and I found that I must turn my hand to something for my living. Driving and riding are as natural to me as walking, so I applied at a cabowner’s office, and soon got employment. I was to bring a certain sum a week to the owner, and whatever was over that I might keep for myself. There was seldom much over, but I managed to scrape along somehow. The hardest job was to learn my way about, for I reckon that of all the mazes that ever were contrived, this city is the most confusing. I had a map beside me though, and when once I had spotted the principal hotels and stations, I got on pretty well.
“It was some time before I found out where my two gentlemen were living; but I inquired and inquired until at last I dropped across them. They were at a boarding-house at Camberwell, over on the other side of the river. When once I found them out I knew that I had them at my mercy. I had grown my beard, and there was no chance of their recognizing me. I would dog them and follow them until I saw my opportunity. I was determined that they should not escape me again.
“They were very near doing it for all that. Go where they would about London, I was always at their heels. Sometimes I followed them on my cab, and sometimes on foot, but the former was the best, for then they could not get away from me. It was only early in the morning or late at night that I could earn anything, so that I began to get behind hand with my employer. I did not mind that, however, as long as I could lay my hand upon the men I wanted.
“They were very cunning, though. They must have thought that there was some chance of their being followed, for they would never go out alone, and never after nightfall. During two weeks I drove behind them every day, and never once saw them separate. Drebber himself was drunk half the time, but Stangerson was not to be caught napping. I watched them late and early, but never saw the ghost of a chance; but I was not discouraged, for something told me that the hour had almost come. My only fear was that this thing in my chest might burst a little too soon and leave my work undone.
“At last, one evening I was driving up and down Torquay Terrace, as the street was called in which they boarded, when I saw a cab drive up to their door. Presently some luggage was brought out, and after a time Drebber and Stangerson followed it, and drove off. I whipped up my horse and kept within sight of them, feeling very ill at ease, for I feared that they were going to shift their quarters. At Euston Station they got out, and I left a boy to hold my horse, and followed them on to the platform. I heard them ask for the Liverpool train, and the guard answer that one had just gone and there would not be another for some hours. Stangerson seemed to be put out at that, but Drebber was rather pleased than otherwise. I got so close to them in the bustle that I could hear every word that passed between them. Drebber said that he had a little business of his own to do, and that if the other would wait for him he would soon rejoin him. His companion remonstrated with him, and reminded him that they had resolved to stick together. Drebber answered that the matter was a delicate one, and that he must go alone. I could not catch what Stangerson said to that, but the other burst out swearing, and reminded him that he was nothing more than his paid servant, and that he must not presume to dictate to him. On that the Secretary gave it up as a bad job, and simply bargained with him that if he missed the last train he should rejoin him at Halliday’s Private Hotel; to which Drebber answered that he would be back on the platform before eleven, and made his way out of the station.
“The moment for which I had waited so long had at last come. I had my enemies within my power. Together they could protect each other, but singly they were at my mercy. I did not act, however, with undue precipitation. My plans were already formed. There is no satisfaction in vengeance unless the offender has time to realize who it is that strikes him, and why retribution has come upon him. I had my plans arranged by which I should have the opportunity of making the man who had wronged me understand that his old sin had found him out. It chanced that some days before a gentleman who had been engaged in looking over some houses in the Brixton Road had dropped the key of one of them in my carriage. It was claimed that same evening, and returned; but in the interval I had taken a moulding of it, and had a duplicate constructed. By means of this I had access to at least one spot in this great city where I could rely upon being free from interruption. How to get Drebber to that house was the difficult problem which I had now to solve.
“He walked down the road and went into one or two liquor shops, staying for nearly half-an-hour in the last of them. When he came out he staggered in his walk, and was evidently pretty well on. There was a hansom just in front of me, and he hailed it. I followed it so close that the nose of my horse was within a yard of his driver the whole way. We rattled across Waterloo Bridge and through miles of streets, until, to my astonishment, we found ourselves back in the Terrace in which he had boarded. I could not imagine what his intention was in returning there; but I went on and pulled up my cab a hundred yards or so from the house. He entered it, and his hansom drove away. Give me a glass of water, if you please. My mouth gets dry with the talking.”
I handed him the glass, and he drank it down.
“That’s better,” he said. “Well, I waited for a quarter of an hour, or more, when suddenly there came a noise like people struggling inside the house. Next moment the door was flung open and two men appeared, one of whom was Drebber, and the other was a young chap whom I had never seen before. This fellow had Drebber by the collar, and when they came to the head of the steps he gave him a shove and a kick which sent him half across the road. ‘You hound,’ he cried, shaking his stick at him; ‘I’ll teach you to insult an honest girl!’ He was so hot that I think he would have thrashed Drebber with his cudgel, only that the cur staggered away down the road as fast as his legs would carry him. He ran as far as the corner, and then, seeing my cab, he hailed me and jumped in. ‘Drive me to Halliday’s Private Hotel,’ said he.
“When I had him fairly inside my cab, my heart jumped so with joy that I feared lest at this last moment my aneurism might go wrong. I drove along slowly, weighing in my own mind what it was best to do. I might take him right out into the country, and there in some deserted lane have my last interview with him. I had almost decided upon this, when he solved the problem for me. The craze for drink had seized him again, and he ordered me to pull up outside a gin palace. He went in, leaving word that I should wait for him. There he remained until closing time, and when he came out he was so far gone that I knew the game was in my own hands.
“Don’t imagine that I intended to kill him in cold blood. It would only have been rigid justice if I had done so, but I could not bring myself to do it. I had long determined that he should have a show for his life if he chose to take advantage of it. Among the many billets which I have filled in America during my wandering life, I was once janitor and sweeper out of the laboratory at York College. One day the professor was lecturing on poisions, [25] and he showed his students some alkaloid, as he called it, which he had extracted from some South American arrow poison, and which was so powerful that the least grain meant instant death. I spotted the bottle in which this preparation was kept, and when they were all gone, I helped myself to a little of it. I was a fairly good dispenser, so I worked this alkaloid into small, soluble pills, and each pill I put in a box with a similar pill made without the poison. I determined at the time that when I had my chance, my gentlemen should each have a draw out of one of these boxes, while I ate the pill that remained. It would be quite as deadly, and a good deal less noisy than firing across a handkerchief. From that day I had always my pill boxes about with me, and the time had now come when I was to use them.
“It was nearer one than twelve, and a wild, bleak night, blowing hard and raining in torrents. Dismal as it was outside, I was glad within--so glad that I could have shouted out from pure exultation. If any of you gentlemen have ever pined for a thing, and longed for it during twenty long years, and then suddenly found it within your reach, you would understand my feelings. I lit a cigar, and puffed at it to steady my nerves, but my hands were trembling, and my temples throbbing with excitement. As I drove, I could see old John Ferrier and sweet Lucy looking at me out of the darkness and smiling at me, just as plain as I see you all in this room. All the way they were ahead of me, one on each side of the horse until I pulled up at the house in the Brixton Road.
“There was not a soul to be seen, nor a sound to be heard, except the dripping of the rain. When I looked in at the window, I found Drebber all huddled together in a drunken sleep. I shook him by the arm, ‘It’s time to get out,’ I said.
“‘All right, cabby,’ said he.
“I suppose he thought we had come to the hotel that he had mentioned, for he got out without another word, and followed me down the garden. I had to walk beside him to keep him steady, for he was still a little top-heavy. When we came to the door, I opened it, and led him into the front room. I give you my word that all the way, the father and the daughter were walking in front of us.
“‘It’s infernally dark,’ said he, stamping about.
“‘We’ll soon have a light,’ I said, striking a match and putting it to a wax candle which I had brought with me. ‘Now, Enoch Drebber,’ I continued, turning to him, and holding the light to my own face, ‘who am I?’
“He gazed at me with bleared, drunken eyes for a moment, and then I saw a horror spring up in them, and convulse his whole features, which showed me that he knew me. He staggered back with a livid face, and I saw the perspiration break out upon his brow, while his teeth chattered in his head. At the sight, I leaned my back against the door and laughed loud and long. I had always known that vengeance would be sweet, but I had never hoped for the contentment of soul which now possessed me.
“‘You dog!’ I said; ‘I have hunted you from Salt Lake City to St. Petersburg, and you have always escaped me. Now, at last your wanderings have come to an end, for either you or I shall never see to-morrow’s sun rise.’ He shrunk still further away as I spoke, and I could see on his face that he thought I was mad. So I was for the time. The pulses in my temples beat like sledge-hammers, and I believe I would have had a fit of some sort if the blood had not gushed from my nose and relieved me.
“‘What do you think of Lucy Ferrier now?’ I cried, locking the door, and shaking the key in his face. ‘Punishment has been slow in coming, but it has overtaken you at last.’ I saw his coward lips tremble as I spoke. He would have begged for his life, but he knew well that it was useless.
“‘Would you murder me?’ he stammered.
“‘There is no murder,’ I answered. ‘Who talks of murdering a mad dog? What mercy had you upon my poor darling, when you dragged her from her slaughtered father, and bore her away to your accursed and shameless harem.’
“‘It was not I who killed her father,’ he cried.
“‘But it was you who broke her innocent heart,’ I shrieked, thrusting the box before him. ‘Let the high God judge between us. Choose and eat. There is death in one and life in the other. I shall take what you leave. Let us see if there is justice upon the earth, or if we are ruled by chance.’
“He cowered away with wild cries and prayers for mercy, but I drew my knife and held it to his throat until he had obeyed me. Then I swallowed the other, and we stood facing one another in silence for a minute or more, waiting to see which was to live and which was to die. Shall I ever forget the look which came over his face when the first warning pangs told him that the poison was in his system? I laughed as I saw it, and held Lucy’s marriage ring in front of his eyes. It was but for a moment, for the action of the alkaloid is rapid. A spasm of pain contorted his features; he threw his hands out in front of him, staggered, and then, with a hoarse cry, fell heavily upon the floor. I turned him over with my foot, and placed my hand upon his heart. There was no movement. He was dead!
“The blood had been streaming from my nose, but I had taken no notice of it. I don’t know what it was that put it into my head to write upon the wall with it. Perhaps it was some mischievous idea of setting the police upon a wrong track, for I felt light-hearted and cheerful. I remembered a German being found in New York with RACHE written up above him, and it was argued at the time in the newspapers that the secret societies must have done it. I guessed that what puzzled the New Yorkers would puzzle the Londoners, so I dipped my finger in my own blood and printed it on a convenient place on the wall. Then I walked down to my cab and found that there was nobody about, and that the night was still very wild. I had driven some distance when I put my hand into the pocket in which I usually kept Lucy’s ring, and found that it was not there. I was thunderstruck at this, for it was the only memento that I had of her. Thinking that I might have dropped it when I stooped over Drebber’s body, I drove back, and leaving my cab in a side street, I went boldly up to the house--for I was ready to dare anything rather than lose the ring. When I arrived there, I walked right into the arms of a police-officer who was coming out, and only managed to disarm his suspicions by pretending to be hopelessly drunk.
“That was how Enoch Drebber came to his end. All I had to do then was to do as much for Stangerson, and so pay off John Ferrier’s debt. I knew that he was staying at Halliday’s Private Hotel, and I hung about all day, but he never came out. [26] fancy that he suspected something when Drebber failed to put in an appearance. He was cunning, was Stangerson, and always on his guard. If he thought he could keep me off by staying indoors he was very much mistaken. I soon found out which was the window of his bedroom, and early next morning I took advantage of some ladders which were lying in the lane behind the hotel, and so made my way into his room in the grey of the dawn. I woke him up and told him that the hour had come when he was to answer for the life he had taken so long before. I described Drebber’s death to him, and I gave him the same choice of the poisoned pills. Instead of grasping at the chance of safety which that offered him, he sprang from his bed and flew at my throat. In self-defence I stabbed him to the heart. It would have been the same in any case, for Providence would never have allowed his guilty hand to pick out anything but the poison.
“I have little more to say, and it’s as well, for I am about done up. I went on cabbing it for a day or so, intending to keep at it until I could save enough to take me back to America. I was standing in the yard when a ragged youngster asked if there was a cabby there called Jefferson Hope, and said that his cab was wanted by a gentleman at 221B, Baker Street. I went round, suspecting no harm, and the next thing I knew, this young man here had the bracelets on my wrists, and as neatly snackled [27] as ever I saw in my life. That’s the whole of my story, gentlemen. You may consider me to be a murderer; but I hold that I am just as much an officer of justice as you are.”
So thrilling had the man’s narrative been, and his manner was so impressive that we had sat silent and absorbed. Even the professional detectives, blasé as they were in every detail of crime, appeared to be keenly interested in the man’s story. When he finished we sat for some minutes in a stillness which was only broken by the scratching of Lestrade’s pencil as he gave the finishing touches to his shorthand account.
“There is only one point on which I should like a little more information,” Sherlock Holmes said at last. “Who was your accomplice who came for the ring which I advertised?”
The prisoner winked at my friend jocosely. “I can tell my own secrets,” he said, “but I don’t get other people into trouble. I saw your advertisement, and I thought it might be a plant, or it might be the ring which I wanted. My friend volunteered to go and see. I think you’ll own he did it smartly.”
“Not a doubt of that,” said Holmes heartily.
“Now, gentlemen,” the Inspector remarked gravely, “the forms of the law must be complied with. On Thursday the prisoner will be brought before the magistrates, and your attendance will be required. Until then I will be responsible for him.” He rang the bell as he spoke, and Jefferson Hope was led off by a couple of warders, while my friend and I made our way out of the Station and took a cab back to Baker Street.
14. 結末
WE had all been warned to appear before the magistrates upon the Thursday; but when the Thursday came there was no occasion for our testimony. A higher Judge had taken the matter in hand, and Jefferson Hope had been summoned before a tribunal where strict justice would be meted out to him. On the very night after his capture the aneurism burst, and he was found in the morning stretched upon the floor of the cell, with a placid smile upon his face, as though he had been able in his dying moments to look back upon a useful life, and on work well done.
“Gregson and Lestrade will be wild about his death,” Holmes remarked, as we chatted it over next evening. “Where will their grand advertisement be now?”
“I don’t see that they had very much to do with his capture,” I answered.
“What you do in this world is a matter of no consequence,” returned my companion, bitterly. “The question is, what can you make people believe that you have done. Never mind,” he continued, more brightly, after a pause. “I would not have missed the investigation for anything. There has been no better case within my recollection. Simple as it was, there were several most instructive points about it.”
“Simple!” I ejaculated.
“Well, really, it can hardly be described as otherwise,” said Sherlock Holmes, smiling at my surprise. “The proof of its intrinsic simplicity is, that without any help save a few very ordinary deductions I was able to lay my hand upon the criminal within three days.”
“That is true,” said I.
“I have already explained to you that what is out of the common is usually a guide rather than a hindrance. In solving a problem of this sort, the grand thing is to be able to reason backwards. That is a very useful accomplishment, and a very easy one, but people do not practise it much. In the every-day affairs of life it is more useful to reason forwards, and so the other comes to be neglected. There are fifty who can reason synthetically for one who can reason analytically.”
“I confess,” said I, “that I do not quite follow you.”
“I hardly expected that you would. Let me see if I can make it clearer. Most people, if you describe a train of events to them, will tell you what the result would be. They can put those events together in their minds, and argue from them that something will come to pass. There are few people, however, who, if you told them a result, would be able to evolve from their own inner consciousness what the steps were which led up to that result. This power is what I mean when I talk of reasoning backwards, or analytically.”
“I understand,” said I.
“Now this was a case in which you were given the result and had to find everything else for yourself. Now let me endeavour to show you the different steps in my reasoning. To begin at the beginning. I approached the house, as you know, on foot, and with my mind entirely free from all impressions. I naturally began by examining the roadway, and there, as I have already explained to you, I saw clearly the marks of a cab, which, I ascertained by inquiry, must have been there during the night. I satisfied myself that it was a cab and not a private carriage by the narrow gauge of the wheels. The ordinary London growler is considerably less wide than a gentleman’s brougham.
“This was the first point gained. I then walked slowly down the garden path, which happened to be composed of a clay soil, peculiarly suitable for taking impressions. No doubt it appeared to you to be a mere trampled line of slush, but to my trained eyes every mark upon its surface had a meaning. There is no branch of detective science which is so important and so much neglected as the art of tracing footsteps. Happily, I have always laid great stress upon it, and much practice has made it second nature to me. I saw the heavy footmarks of the constables, but I saw also the track of the two men who had first passed through the garden. It was easy to tell that they had been before the others, because in places their marks had been entirely obliterated by the others coming upon the top of them. In this way my second link was formed, which told me that the nocturnal visitors were two in number, one remarkable for his height (as I calculated from the length of his stride), and the other fashionably dressed, to judge from the small and elegant impression left by his boots.
“On entering the house this last inference was confirmed. My well-booted man lay before me. The tall one, then, had done the murder, if murder there was. There was no wound upon the dead man’s person, but the agitated expression upon his face assured me that he had foreseen his fate before it came upon him. Men who die from heart disease, or any sudden natural cause, never by any chance exhibit agitation upon their features. Having sniffed the dead man’s lips I detected a slightly sour smell, and I came to the conclusion that he had had poison forced upon him. Again, I argued that it had been forced upon him from the hatred and fear expressed upon his face. By the method of exclusion, I had arrived at this result, for no other hypothesis would meet the facts. Do not imagine that it was a very unheard of idea. The forcible administration of poison is by no means a new thing in criminal annals. The cases of Dolsky in Odessa, and of Leturier in Montpellier, will occur at once to any toxicologist.
“And now came the great question as to the reason why. Robbery had not been the object of the murder, for nothing was taken. Was it politics, then, or was it a woman? That was the question which confronted me. I was inclined from the first to the latter supposition. Political assassins are only too glad to do their work and to fly. This murder had, on the contrary, been done most deliberately, and the perpetrator had left his tracks all over the room, showing that he had been there all the time. It must have been a private wrong, and not a political one, which called for such a methodical revenge. When the inscription was discovered upon the wall I was more inclined than ever to my opinion. The thing was too evidently a blind. When the ring was found, however, it settled the question. Clearly the murderer had used it to remind his victim of some dead or absent woman. It was at this point that I asked Gregson whether he had enquired in his telegram to Cleveland as to any particular point in Mr. Drebber’s former career. He answered, you remember, in the negative.
“I then proceeded to make a careful examination of the room, which confirmed me in my opinion as to the murderer’s height, and furnished me with the additional details as to the Trichinopoly cigar and the length of his nails. I had already come to the conclusion, since there were no signs of a struggle, that the blood which covered the floor had burst from the murderer’s nose in his excitement. I could perceive that the track of blood coincided with the track of his feet. It is seldom that any man, unless he is very full-blooded, breaks out in this way through emotion, so I hazarded the opinion that the criminal was probably a robust and ruddy-faced man. Events proved that I had judged correctly.
“Having left the house, I proceeded to do what Gregson had neglected. I telegraphed to the head of the police at Cleveland, limiting my enquiry to the circumstances connected with the marriage of Enoch Drebber. The answer was conclusive. It told me that Drebber had already applied for the protection of the law against an old rival in love, named Jefferson Hope, and that this same Hope was at present in Europe. I knew now that I held the clue to the mystery in my hand, and all that remained was to secure the murderer.
“I had already determined in my own mind that the man who had walked into the house with Drebber, was none other than the man who had driven the cab. The marks in the road showed me that the horse had wandered on in a way which would have been impossible had there been anyone in charge of it. Where, then, could the driver be, unless he were inside the house? Again, it is absurd to suppose that any sane man would carry out a deliberate crime under the very eyes, as it were, of a third person, who was sure to betray him. Lastly, supposing one man wished to dog another through London, what better means could he adopt than to turn cabdriver. All these considerations led me to the irresistible conclusion that Jefferson Hope was to be found among the jarveys of the Metropolis.
“If he had been one there was no reason to believe that he had ceased to be. On the contrary, from his point of view, any sudden change would be likely to draw attention to himself. He would, probably, for a time at least, continue to perform his duties. There was no reason to suppose that he was going under an assumed name. Why should he change his name in a country where no one knew his original one? I therefore organized my Street Arab detective corps, and sent them systematically to every cab proprietor in London until they ferreted out the man that I wanted. How well they succeeded, and how quickly I took advantage of it, are still fresh in your recollection. The murder of Stangerson was an incident which was entirely unexpected, but which could hardly in any case have been prevented. Through it, as you know, I came into possession of the pills, the existence of which I had already surmised. You see the whole thing is a chain of logical sequences without a break or flaw.”
“It is wonderful!” I cried. “Your merits should be publicly recognized. You should publish an account of the case. If you won’t, I will for you.”
“You may do what you like, Doctor,” he answered. “See here!” he continued, handing a paper over to me, “look at this!”
It was the Echo for the day, and the paragraph to which he pointed was devoted to the case in question.
“The public,” it said, “have lost a sensational treat through the sudden death of the man Hope, who was suspected of the murder of Mr. Enoch Drebber and of Mr. Joseph Stangerson. The details of the case will probably be never known now, though we are informed upon good authority that the crime was the result of an old standing and romantic feud, in which love and Mormonism bore a part. It seems that both the victims belonged, in their younger days, to the Latter Day Saints, and Hope, the deceased prisoner, hails also from Salt Lake City. If the case has had no other effect, it, at least, brings out in the most striking manner the efficiency of our detective police force, and will serve as a lesson to all foreigners that they will do wisely to settle their feuds at home, and not to carry them on to British soil. It is an open secret that the credit of this smart capture belongs entirely to the well-known Scotland Yard officials, Messrs. Lestrade and Gregson. The man was apprehended, it appears, in the rooms of a certain Mr. Sherlock Holmes, who has himself, as an amateur, shown some talent in the detective line, and who, with such instructors, may hope in time to attain to some degree of their skill. It is expected that a testimonial of some sort will be presented to the two officers as a fitting recognition of their services.”
“Didn’t I tell you so when we started?” cried Sherlock Holmes with a laugh. “That’s the result of all our Study in Scarlet: to get them a testimonial!”
“Never mind,” I answered, “I have all the facts in my journal, and the public shall know them. In the meantime you must make yourself contented by the consciousness of success, like the Roman miser--
“‘Populus me sibilat, at mihi plaudo
Ipse domi simul ac nummos contemplor in arca.’”